厚生労働省が令和5年2月28日、2022年の出生数について速報を発表しました。
早いスピードで少子化が進む中、
- 保育園・幼稚園・こども園の経営にはどのような影響があるのか?
- 政府の行う異次元の少子化対策とは、どのようなものか?
- 2022年の出生数を受けて保育園や幼稚園の経営者・理事長がとるべき対策は何か?
という3つのポイントについて解説しています。
ニュース紹介
厚生労働省が令和5年2月28日、人口動態統計速報(令和4年12月分)を公表しました。
速報ではありますが、12月分が公表されたことで、2022年1月から12月までの出生数が明確になりました。
出生、死亡、婚姻、離婚及び死産の各事象について、各種届出書等から人口動態調査票が市区町村で作成され、これを収集し集計したものです。
今回公表されたのは速報ですので、調査票の作成枚数を基に算出されています。
さて、公表された資料によると、統計を取り始めた1899年以降、出生数が初めて80万人を下回り過去最少を記録したとのことです。
2022年に生まれた子どもの数は外国人なども含めた速報値で79万9728人。
7年連続の減少であり、2021年と比べると、4万3169人(5.1%)減となりました。
2016年に初めて出生数100万人が割れ、そこから6年でさらに落ち込んでしまいました。
国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した予測では、日本人の子どもの出生数が80万人を下回るのは2030年となっていましたので、想定より8年ほど早いペースで少子化がすすんでいることになります。
国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した予測を初めて見たときには、こんなに少子化が進んでいくのかと、怖くなりましたが…。
少子化の波はそれよりも早く、押し寄せています。
すでに影響を感じている園が多いと思いますが、早めに対策を講じることが肝心です。
【プロの目】専門家が考える今回のニュースについて
前述したとおり、出生数が初めて80万人という過去最少を記録しました。
想定を上回るペースで少子化がすすんでいます。
保育園・幼稚園・こども園の経営にはどのような影響があるのか?
新型コロナウイルス禍で2020~2021年で婚姻数が減少していることが、今回の出生数減少に影響していると言われています。しかし、そもそも出産期を迎える女性の人口も減ってきているため、出生数の減少は今後も続くと考えられます。
子どもの数が減少するということは、それだけ保育園・幼稚園・こども園・小規模保育施設・企業主導型保育施設間での園児獲得競争は厳しくなるということです。
これまでも、出生数は下がっていたものの、女性の就業率は上がっていました。
そのため、保育園等に園児を預ける保護者の数も増え、結果的に待機児童の問題が大きく取り上げられ、保育施設が一気に新設されました。
しかし、待機児童が解消しつつある現状に加えて、出生数が過去最少になったということは、これまで以上に園児獲得が難しくなっていきます。
とても残酷な話ではありますが「一生懸命に保育を行っている」という園でも、これまでと同じことだけをしている園では、どんどん園児数が少なくなっていくという社会環境になっています。
政府が行う異次元の少子化対策とは、どのようなものか?
厚生労働省の発表を受け、岸田首相から「危機的な状況だと認識している」とコメントがありました。
そして、2023年の年頭には、「異次元の少子化対策」に挑戦すると述べ、1月には1回目の会議が開かれました。まだ具体的な政策は示されていないのですが、3本柱の一つに、「幼児教育や保育サービスの支援拡充」があります。
この異次元の少子化対策は、2023年3月末までに、たたき台をとりまとめることになっています。詳細が発表され次第、当ブログでもお伝えしていきます。
2022年の出生数を受けて保育園や幼稚園の経営者・理事長がとるべき対策は何か?
「異次元の少子化対策」について、幼稚園や保育施設にとって大きな動きがあるのは確かです。
国からの発信をいち早くキャッチし、柔軟に対応できる体制を整えておくことが必要です。
地域によっては、既に定員割れしている園も多くありますので、手遅れになるまえに行動に移すことが大切です。
また、政府が行う政策を上手に活用することも大事ですが、これまで行ってこなかったことにチャレンジするということも、とても大事になってきます。
新しいことを行っていくと、当然失敗も多くなりますが、経営面や資金面で余裕がある状況でなければ、失敗をすることもできなくなっていきます。
ここ最近、理事長先生や代表の方によくお伝えしているですが「外注できるものは外注をしてしまって、本当に大切なことを考える時間を確保する」という考え方はとても大事になってきます。
まだまだ理事長先生や園長先生が会計入力や給与計算を行っている園もありますが…。今後の園運営や保育の内容、職員のマネジメントといった大きな内容にしっかりと時間をかけることが重要になってきます。
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まとめ
この記事では、厚生労働省が発表した2022年の出生数ニュースについて解説しました。
厚生労働省が発表した調査のポイントは以下の通りです。
- 出生数:799,728人で過去最少 (対前年43,169人減少 △5.1%)
- 自然増減数:△782,305人で過去最大の減少 (同172,913人減)
- 婚姻件数:519,823組で3年ぶりの増加 (同5,581組増加 1.1%)
想定よりも8年ほど早いペースで少子化がすすんでおり、幼稚園・保育園経営に与える影響がとても大きくなっています。
政府が2023年3月にまとめる「異次元の少子化対策」として、「幼児教育や保育サービスの支援拡充」を含む政策のたたき台に要注目です。
少子化がすすむ中、園児獲得の競争が激しくなっています。今後どのように園を運営していくのか、経営者の采配が重要になってきます。