認定こども園という施設類型ができ、こども園の数は年々増えてきています。
本記事では、認定こども園への移行をお考えの経営者が知っておくべきポイントを、幼児教育・保育業界専門の経営コンサルタントの視点から、わかりやすく解説しています。
【2022年11月9日追記】認定こども園数の推移について、追加しました。
こども家庭庁が令和5年4月に創設されるに伴い、既存の保育園・幼稚園は、対応を迫られる状況になることが考えられます。
認定こども園にはどのようにすれば移行できるのか、まずは知っておくだけでも、より良い経営判断が出来るようになります。
認定こども園とは?
認定こども園とは、どのような施設でしょうか。
内閣府の「認定こども園概要」というページでは、以下のように説明されています。
(参考URL:内閣府 認定こども園概要)
- 教育・保育を一体的に行う施設で、いわば幼稚園と保育所の両方の良さを併せ持っている施設
- 就学前の子どもに幼児教育・保育を提供する(保護者が働いている、いないにかかわらず受け入れて、教育・保育を一体的に行う機能)
- 地域における子育て支援を行う
「幼稚園と保育所の両方の良さを併せ持っている」とありますが、保育園や幼稚園から認定こども園への移行を考えるにあたって、最も大きなポイントを以下にまとめます。
- 保育園の場合:幼稚園児を預かることが出来るようになる
- 幼稚園の場合:保育園児を預かることが出来るようになる
より詳しい、こども園という施設類型の解説は以下の記事にまとめています。
参考記事:【2024年最新版】こども園について経営者が知るべき3つのポイント
本記事では「安定して園運営を継続的に行っていくために」という前提で書いています。
・実際の教育や保育をどのように行うのか
・先生のシフトはどのように回すのか
といった点には触れず、制度面に焦点を当てて解説していきます。
認定こども園への移行状況【2022年11月9日追加】
認定こども園という制度が出来て、ある程度の時間が経ちましたが、認定こども園の数は増えているのでしょうか?
実際の数字を見るまでもなく、実感として、周囲の園でもこども園に移行している園が増えていると実感している理事長先生は多いかと思います。
それでは、実際の数字として、認定こども園はどのような割合で増えているのでしょうか。
令和4年10月4日に行われました第62回子ども・子育て会議では認定こども園という制度が始まってからの各年4月1日時点での認定こども園の推移が公開されています。
(参考URL:内閣府 子ども・子育て会議(第62回))
上記URL内の「資料4 認定こども園に関する現況」というPDF資料の2ページ目に認定こども園がどれだけ増えてきたかということがよくわかる資料があります。下記の画像です。
各施設類型の認定こども園の総数と前年度からの増加数を表にまとめると、以下のようになります。
H23 | H24 | H25 | H26 | H27 | H28 | |
総数 | 762 | 909 | 1,099 | 1,360 | 2,836 | 4,001 |
増加数 | 762 | 147 | 190 | 261 | 1,476 | 1,165 |
H29 | H30 | H31 | R2 | R3 | R4 | |
総数 | 5,081 | 6,160 | 7,208 | 8,016 | 8,585 | 9,209 |
増加数 | 1,080 | 1,079 | 1,048 | 808 | 569 | 624 |
直近の令和4年度でも、増えていることがわかります。
認定こども園への移行が、とても進んでいる都道府県もあれば、幼稚園・保育園のままで運営を続けている園が多い都道府県もあります。
幼児教育・保育業界専門の経営コンサルタントとして、様々な地域の理事長先生とお話をしていると、まだまだ認定こども園は増えていくと感じます。
認定こども園への移行の流れ
「認定こども園」についてはよくご存知の理事長先生でも、「具体的なこども園への移行のスケジュールとなるとよくわからない」という方は多いと思います。
ここでは、認定こども園への移行の流れを、当社(株式会社 いちたす)の事務所があります宮城県での事例を通して説明していきます。
(参考記事:宮城県 認定こども園インフォメーション)
以下の流れで見ていきます。
- 認定こども園の情報収集
- 市町村への事前相談
- 設備基準・改修計画・収支試算等の検討
- 都道府県への申請書類提出
宮城県のホームページは充実していて、他県での認定こども園移行のご相談を受ける際も、まずは宮城県の資料を基にご説明をしています。
ただし、実際に移行する際は、園が所在する都道府県・市町村の進め方に合わせることになりますので、お気を付けください。
手順1:認定こども園の情報収集
まずは、こども園についての情報収集です。
「何を当たり前なことを…」と言われてしまいそうですが、あやふやな知識のまま、「なんとなくこども園に移行したほうがよさそうだから」という理由で移行したという園は、意外とあります。
園が所在する都道府県、市町村が認定こども園への移行に積極的で、「役所の担当者に勧められるがままに移行した」ということもありますし、「知り合いの理事長から勧められて移行した」という話も聞きます。
当社でも、認定こども園への移行を検討されている理事長先生からお問い合わせをいただきます。
ご相談があった際は、こども園への移行をお勧めするケースが多いですが、それでも無条件にこども園へ移行したほうが良いわけではありません。園の状況次第では、こども園に移行したことで以下のようなマイナスが起こり得ます。
- 地域の園児数、利用定員次第では、収入が減少してしまう
- 施設整備(園舎建替など)を行う際の借入金の返済負担が大きく、新しい投資が出来ない
- 有資格者の人数が足りず、施設型給付費が減算される
動き出す前に、まずは情報収集が大事になります。
本記事をお読みいただければ、認定こども園移行の概要を掴むことができます。
株式会社 いちたすでは、認定こども園への移行の有無も含めてコンサルティングを行っています。園の置かれている状況次第では移行をしない方が良い場合もありますので、幼稚園・保育園のままで安定運営していくための方法を一緒に検討していきます。
手順2:市町村への事前相談
認定こども園移行の情報収集については、ネット上で情報を集めてもある程度までしかわかりません。
大枠がつかめた段階で、次に行うことは、市町村への事前相談です。
こども園への移行を検討している場合は、早い段階で市町村への事前相談を行うことをお勧めしています。なぜかというとこども園への移行は「園がなりたいと希望すれば無条件でなれる」というものではないからです。
ひとつの判断材料として「市町村子ども・子育て支援事業計画」が挙げられます。
各市町村は、「子ども・子育て支援法第61条第1項」で定められている「市町村子ども・子育て支援事業計画」を作成する必要があります。これは5年間の計画で、全市町村が作成しています。
詳しくは先ほども記載しました以下の記事で説明しています。
参考記事:【2024年最新版】こども園について経営者が知るべき3つのポイント
この計画の中で「こども園への移行は想定していない」「出生数の減少により、供給が上回ってしまう」のような記載がある場合、市町村としては、既存の園がこども園へ移行することは望んでいないということになります。
宮城県の資料では、市町村への相談項目として、以下のものが挙げられています。
認定こども園設置を県に相談,申請する前に以下の点について,施設が所在する市町村と事前に相談がなされていることが必要です。
- 開所年度(原則各年度の4月1日となります)
- 認可定員
- 認定区分(1,2,3号)ごとの利用定員
- 施設整備改修の必要性の有無
- 幼保連携型か保育所型・幼稚園型か
各市町村においては市町村財政,待機児童数,今後の定員計画(市町村計画における量の見込み及び確保方策との整合性)等を踏まえ各園の意向に沿うことが出来るか判断してください。
参考資料:設置にあたって スケジュール,事務の流れ,認可申請前の準備
園が所在する市町村の「財政」「待機児童数」「今後の定員計画」等を踏まえて、判断するようになっています。待機児童もずいぶん緩和され、数字の上では、待機児童が解消している市町村も増えてきています。
そのような市町村では「お金も手間もかかるこども園への移行は認めない」という判断が増えてもおかしくありません。
実際に、認定こども園への新たな移行を認めないという市町村もあります。
早い段階で事前相談を行い、そもそも認定こども園へ移行することが出来るのかを確認する必要があります。
手順3:設備基準・改修計画・収支試算等の検討
市町村に事前相談した結果、認定こども園への移行が可能ということが明確になれば、次は具体的にひとつひとつを確認していくことになります。
まず大きいところが「認定こども園への設備基準を満たしているか」です。
既存の施設のままでは満たしていない園も多い(特に幼稚園)ので、基準を満たしていない場合は、園舎建替・改修を行うことが必要になります。
こども園への移行の際は、既存の園舎の改修ではなく、園舎建替を行う園も多いので、その場合はこども園への移行と並行して施設整備補助金の申請も行う必要があります。
改修・園舎建替、どちらの場合でも資金が大きく出ていくことになりますので、資金計画、移行後の返済計画、事業計画、収支計画などを作成することになります。
また、収支を試算する際には、有資格者を何名配置するのか、採用するのかといった採用計画も必要になります。
資金計画や、将来の収支計画の検討、先生方の配置基準の検討といった内容も、当社でご支援することが可能です。
移行後を見据えて、処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱの制度の研修、今後の園運営のコンサルティングも行っております。
手順4:都道府県への提出書類作成
市町村への事前相談が終わり、法人内部での検討まで進めば、あとは都道府県への認定こども園設置認可の申請書類の提出になります。
どのようなスケジュール感で進むかは、都道府県によってそれぞれ異なりますが、ここでは宮城県のスケジュールを確認していきます。
- ~10月
認可申請書仮提出
- ~12月
認可申請書の追加・修正(認定こども園審議会)
- ~2月
認可申請書本申請
- ~3月
認可申請書の補正(現地調査)
10月までに、いったん仮の申請書を提出し、そこから翌年の2月の本申請に向けて、資料を追加・修正・補正を行っていくことになります。
こども園の設置認可申請書は、記載方法が誤っていたり、添付書類が漏れていたから、認定こども園へ移行できない、というものではありません。
記載方法が誤っている場合は教えてもらえますし、書類が漏れていたら連絡を頂くことになります。
申請書類の作成自体を専門家に依頼することも出来ますが、当社のお客様では、ほぼすべての園がご自身で申請を行っています。申請を行うまでの検討が大変で時間が掛かります。
保育園から認定こども園移行するメリットとデメリット
ここまでは認定こども園への移行の流れを見てきました。おおよそのスケジュール感は掴めたかと思います。
それでは、実際にこども園に移行するうえで、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。保育園から移行した場合を基に、詳しく見ていきます。
保育園から認定こども園に移行するメリット
保育園から認定こども園に移行するメリットは以下の通りです。
- 幼稚園児(1号認定)を預かることが出来る
- 収入が増えることが多い
それぞれ詳しく見ていきます。
幼稚園児(1号認定)を預かることが出来る
こども園に移行することで、これまでの保育園では預かることが出来なかった幼稚園(1号認定)の園児を預かることが出来るようになります。
保育園では、市町村の割り当てによって入園する園児(2・3号認定)が決まります。
対して、幼稚園では、園児(1号認定)を自園で募集します。
こども園に移行することで幼稚園児(1号認定)を預かることが出来るようになると、自分たちで園児募集を行うことが出来るようになります。
(各認定区分の詳細については、以下の記事で言及しています。
参考記事:【2024年最新版】こども園について経営者が知るべき3つのポイント)
もちろん、現在の保育園でも第一希望に書いてもらえるようにするなど、園児獲得のための努力は必要です。しかし、こども園に移行すると、幼稚園児の募集は初めから終わりまで、すべて自分たちで行うことになります。
地域に子どもがたくさんいて、募集をしなくても園児が定員いっぱいに入っていたという園では、いまでもホームページが無かったり、どのような保育をしているのか見えにくいところもあります。しかし、こども園に移行した後は、自園のみでの園児募集を行うことになりますので、情報発信・情報公開がとても重要になってきます。
必然的に、これまで行ってきた保育を見直すことになりますので、保育の質の向上にもつながります。
収入が増えることが多い
園を継続して運営していくためにも、安定した収入は不可欠ですが、こども園への移行は、収入アップにつながる(つなげることが出来る)ケースが多いです。
先ほどの「幼稚園児を預かることが出来る」とも重なりますが、これまで預かることが出来なかった園児を預かることで、当然収入は上がります。
また、施設型給付費の加算項目は、保育園の委託費(運営費)の加算項目に比べて多くありますので、すべての加算項目を取得することが出来れば、収入は上がります。
ただし、無条件に収入が上がるわけではないので、収入が上がらない場合についてはデメリットの項目で取り上げます。
収入が増えることになれば、配置基準よりも多く先生を配置することができ、先生方の給与を継続的に上げていくことで、保育の質を高めることが出来ます。
また、園児のための遊具・おもちゃの購入など、保育材料費に使うことも出来ます。
少子化が進み、地域の園でも園児獲得に向けての競争が始まりつつある現状、収入アップは、積極的に投資し、選ばれる園になるためにも大きなポイントです。
保育園から認定こども園移行するデメリット
それでは反対に、こども園に移行するデメリットはどのようなものがあるでしょうか。
保育園からこども園に移行すると、基本的には保育園に戻ることは出来ませんので、「こんなはずじゃなかった…」とならないためにも、しっかりと押さえておきたいポイントです。
- 先生(有資格者)の人数が増えることが多い
- 自分たちで園児募集をしなければならない
メリットの裏返しでもありますが、詳しく見ていきます。
先生(有資格者)の人数が増えることが多い
メリットの「幼稚園児を預かることが出来る」の項目ともつながりますが、幼稚園児を預かる以上、配置する有資格者の人数も増えることになります。
また、加算項目が増えるというお話をしましたが、加算項目は、基本的に配置基準よりも多く人を配置することで取得できるものが多いです。
先生の人数が増えたとしても、増えた人件費を賄える金額で加算額は設定されていますので、先生をしっかりと集めることが出来る園では、デメリットにはなりません。
しかし、先生の募集がうまくいかず、保育士不足になっているという園では、移行することで収入が下がることにもつながりかねません。
「少ない先生の人数だからこそ、園長の目が届き良い保育が実現できるんだ」と考えている園では、先生の人数が増えることはマイナスと捉えることが出来ます。
こども園に移行して、加算をしっかり取ろうとすると、園児一人当たりの先生の人数は確実に増えますので、手厚い保育を実現できます。
しかし、新たに雇った先生の教育やマネジメントコストも上がりますので、そこを負担に考えてしまうと、デメリットになります。
自分たちで園児募集をしなければならない
保育園では、市町村が窓口になり、園児を振り分けてくれます。
保育の質を高める努力はどの保育園でもされてきているかと思います。ただ、保育園では、園内での活動を外部に発信するということに関しては、力を入れていない園も多いのではないでしょうか。
幼稚園児を預かることが出来るというメリットは、幼稚園と園児獲得の競争をしなければならないということにもつながります。
幼稚園では、これまでもずっと園児募集を自分たちで行ってきました。
こども園に移行すると、幼稚園やすでに移行して経験を重ねているこども園と同じ土俵で、園児募集を行うことになります。これまで行ったことがない部分でもありますので、やはり最初は自分たちで園児募集を行うハードルは高いです。
デメリットを記載しましたが、たとえ移行せずに保育園のまま残ったとしても、少子化がますます進んでいる現在、園の情報発信は、いつかは対応せざるを得ない課題です。
保育士募集、園児募集のどちらも園の魅力をいかに伝えるかという点では、共通しています。
デメリットとしてとらえず、解決すべき課題として、前向きに捉えていきたいですね。株式会社 いちたすでは、保育士募集、園児募集のご支援も行っています。
幼保連携型認定こども園への移行の特例について
ここまで、こども園への移行の流れ、メリット・デメリットを見てきました。
本項目では、幼保連携型認定こども園へ移行する際の特例について、詳しく見ていきます。
これまでも運営を行ってきた施設(幼稚園、保育所、幼稚園型認定こども園、保育所型認定こども園)から、幼保連携型こども園への移行の場合、適用される認可基準に特例があります。
ここでは、どのような特例があるのかを見ていきます。
以下の項目では「平成二十六年内閣府・文部科学省・厚生労働省令第一号 幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準」を基に説明していきます。
(参考URL:e-GOV 法令検索 幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準(平成二十六年内閣府・文部科学省・厚生労働省令第一号))
特例が設けられているということは、国としては、幼保連携型認定こども園を増やしていきたいという意向があることが読み取れます。
ただし、施行10年経過後に、国としてあらためて内容を検討するとなっていますので、変更になる可能性があります。
移行の特例を受けるための条件
移行特例について記載がある「幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準」という省令、附則や経過措置が入り乱れているので、実際に特例を利用する際は、所轄庁と入念に打ち合わせをして進めていくことが重要です。
まずは、移行の特例を受けるための条件を見ていきます。
上記省令の中の特例についての項目に、以下のような記述があります。
- 施行日の前日において現に幼稚園(その運営の実績その他により適正な運営が確保されていると認められるものに限る。以下この条において同じ。)を設置している者が、
- 施行日の前日において現に保育所(その運営の実績その他により適正な運営が確保されていると認められるものに限る。以下この条において同じ。)を設置している者が、
すべての幼稚園、保育園が対象になるわけではなく、省令の施行日の前日までに設置されている園が対象になります。
それでは、施行日はいつかというと「平成二十七年四月一日」です。
つまり、平成27年3月31日以前までに認可されている園が対象になります。
(ちなみに、平成27年4月1日に子ども・子育て支援新制度は施行されました。)
保育園が一気に増えた「待機児童解消加速化プラン」は平成25年度(2013年度)から平成29年度(2017年度)末まで行われました。
その際に新たに認可された保育園が、幼保連携型認定こども園に移行しようとする際は、注意が必要です。
平成27年4月1日以降に認可された園では、特例を使えないということになります。
園舎の面積・保育室等の面積について
幼保連携型認定こども園については、前提の考え方として「幼稚園・保育所の要件が厳しい基準を適用する」ということになっています。
ただ、厳しい基準を適用してしまうと、これまで幼稚園・保育所として適正に運営していた園でも、改修が必要となってしまうケースが多くなるため、特例が設けられています。
新設 | 幼稚園 | 保育所 | |
園舎の 面積 (第六条第六項) | 園舎の面積は、次に掲げる面積を合算した面積以上とする。 一 次の表の上欄に掲げる学級数に応じ、それぞれ同表の下欄に定める面積 一学級:180平方メートル 二学級以上:320+100×(学級数-2)平方メートル 二 満三歳未満の園児数に応じ、次条第六項の規定により算定した面積 | 特例なし | 園舎の面積は、次に掲げる面積を合算した面積以上とする。 一 満三歳以上の園児数に応じ、次条第六項の規定により算定した面積 二 満三歳未満の園児数に応じ、次条第六項の規定により算定した面積 |
保育室等の面積 (第七条第六項) | 次の各号に掲げる設備の面積は、当該各号に定める面積以上とする。 一 乳児室 一・六五平方メートルに満二歳未満の園児のうちほふくしないものの数を乗じて得た面積 二 ほふく室 三・三平方メートルに満二歳未満の園児のうちほふくするものの数を乗じて得た面積 三 保育室又は遊戯室 一・九八平方メートルに満二歳以上の園児数を乗じて得た面積 | 一 乳児室 一・六五平方メートルに満二歳未満の園児のうちほふくしないものの数を乗じて得た面積 二 ほふく室 三・三平方メートルに満二歳未満の園児のうちほふくするものの数を乗じて得た面積 | 特例なし |
表にしたことで、わかりにくくなっている気もしますが…。
幼保連携型認定こども園を新設する際は、幼稚園・保育所の要件が厳しい基準を適用しています。
特例として認められている部分は、幼稚園なら幼稚園としての基準、保育園なら保育園としての基準を満たしていれば、幼保連携型認定こども園に移行できますよ、という内容になっています。
(園舎の面積で出てくる「次条第六項の規定」という文言は、保育室等の面積で掲げられている部分(第七条第六項)です。)
- 幼稚園:満三歳未満の園児の基準は保育所に合わせるが、満三歳以上は幼稚園の基準
- 保育園:園舎の面積は幼稚園の基準の方が要件が厳しいので、保育園の基準
園庭の面積について
幼稚園と保育園の違いについて、パッと見てわかりやすい違いのひとつに園庭の広さが挙げられます。
保育園でも園庭が広い園はありますが、一般的には幼稚園の方が園庭が広いことが多いです。
幼稚園の方が園庭が広いのは「幼稚園で行う教育には園庭が必要だからだ」と考えることも出来ますが、幼稚園の方が園庭の面積として求められる基準が高くなっています。
幼保連携型認定こども園では、要件が厳しい基準を適用することを見てきましたが、園庭の面積が足りない保育園で、園庭を増やすことは容易ではありません。ですので、ここにも特例があります。
新設 | 幼稚園 | 保育所 | |
園庭の 面積 (第六条第七項) | 園庭の面積は、次に掲げる面積を合算した面積以上とする。 一 次に掲げる面積のうちいずれか大きい面積 イ 次の表の上欄に掲げる学級数に応じ、それぞれ同表の下欄に定める面積 二学級以下:330+30×(学級数-1)平方メートル 三学級以上:400+80×(学級数-3)平方メートル ロ 三・三平方メートルに満三歳以上の園児数を乗じて得た面積 二 満三歳未満の園児数に応じ、次条第六項の規定により算定した面積 | 園庭の面積は、次に掲げる面積を合算した面積以上とする。 一 次の表の上欄に掲げる学級数に応じ、それぞれ同表の下欄に定める面積 二学級以下:330+30×(学級数-1)平方メートル 三学級以上:400+80×(学級数-3)平方メートル 二 満三歳未満の園児数に応じ、次条第六項の規定により算定した面積 | 園舎の面積は、次に掲げる面積を合算した面積以上とする。 一 三・三平方メートルに満三歳以上の園児数を乗じて得た面積 二 満三歳未満の園児数に応じ、次条第六項の規定により算定した面積 |
その他にも園庭の代替地、職員資格など、特例はありますが、幼保連携型認定こども園に移行しやすくするための特例ですので、園側としては有利な内容になっています。
幼保連携型認定こども園以外の認定こども園の場合、都道府県の条例等があればそちらが優先されますので、上記内容とは異なる基準を適用している可能性があります。
こども園移行の実際の事例のご紹介
株式会社 いちたすでは、認定こども園に移行する際のご支援も行っております。
本記事では、宮城県での移行の流れを参考として記載しましたが、他の都道府県ではまた異なる進め方になりました。
ある県で、学校法人立の幼稚園から認定こども園への移行をご支援した際は、3年かかりました。
既存の幼稚園を改修してではなく、新たに土地を購入し、その土地の上に園舎を新築する計画でスタートしました。
認定こども園として運営したほうが収入が上がることは試算が出来ていましたので、一刻も早くこども園に移行したいところでしたが、園が所在する所轄では、こども園に移行する前に、以下のような流れにしてほしいという話がありました。
- 私学助成の幼稚園(現状)
私学助成の幼稚園からこども園に移行するのではなく、まずは施設型給付を受ける幼稚園に移行してほしいと行政から打診がある
- 施設型給付を受ける幼稚園
既存の園舎で施設型給付を受ける幼稚園に移行
- 園舎建築
施設型給付を受ける幼稚園への移行と同時に、園舎建築がスタート
- 幼保連携型認定こども園として運営開始
新たに園舎を建築する計画だったため、通常でも数年間は掛かりますが、こども園への移行の間に施設型給付を受ける幼稚園に移行しての運営が入ったため、1年延びることになりました。
結果的に、施設型給付を受ける幼稚園への移行を挟んだことで、新制度への対応、職員の確保、保護者への案内、先生方の現場での動きのシミュレーションなどがうまくいき、認定こども園として運営を開始した当初からとても順調に運営することが出来ました。
園が所在する所轄次第で、求められることが変わってきますので、園にとって最善の方法を選び取っていきたいですね。
こども園移行についてのご質問
ここでは、こども園への移行について、よく頂くご質問に回答します。
- Q認定こども園では、自園調理での給食を行わなければならないと聞きました。給食の実施は義務付けられているのでしょうか?
- A
幼保連携型認定こども園の場合、保育園児(2号・3号認定)に対しては給食の実施が必要です。幼稚園児(1号認定)に対しては、園の任意となっていますが、幼稚園児と保育園児で分けて給食を行う事は現実的ではないので、一律で自園調理の給食を行っている園がほとんどです。
幼保連携型認定こども園の設備には「調理室」が必須ですが、以下の場合は調理設備で代替可能です。
- 満3歳以上の園児に対して、外部搬入の方法により食事の提供を行う場合
- 園内で調理する方法により食事の提供を行う園児の数が20人に満たない場合
中小企業診断士:大窪 特例の説明部分でも記載しましたが、幼保連携型認定こども園以外の認定こども園の場合、都道府県の条例等があればそちらが優先されます。上記のご回答内容とは異なる基準を適用している可能性があります。
自園で調理を行うことが難しい場合、まずは行政に相談することをお勧めします。
- Q認定こども園への移行を国が推進しているのはわかりましたが、認可保育所に対する施設整備補助金はどのような扱いになるのでしょうか。
また、公定価格の中に減価償却費加算という加算項目がありますが、施設整備補助金との関係はどのようになるのでしょうか。 - A
認定こども園へ移行する際に園舎を建築した場合にも施設整備補助金はありますが、保育園に対する施設整備補助金も引き続き残ることになります。
減価償却費加算は、施設整備補助金を受けていない園に対して、施設整備補助金を受けている園と比べて不公平にならないよう、公定価格の中で、園舎建築等の際に園が負担した経費を支援する加算です。
- Qこども園には、幼保連携型認定こども園、幼稚園型認定こども園、保育所型認定こども園、と類型がありますが、幼保連携型認定こども園とそれ以外のこども園では公定価格に差が出るのでしょうか。
- A
幼保連携型認定こども園の方が園庭や面積要件、職員の資格の基準が厳しく、移行する際の書類も多くなりますので、このご質問はよく頂きます。しかし、幼保連携型、幼稚園型、保育所型の3類型について、公定価格は基本的には同じになります。
中小企業診断士:大窪 公定価格は基本的には同じというお話をすると「それではなぜ、基準が厳しい幼保連携型に移行するのですが?」と尋ねられます。
結論を書くと、幼保連携型認定こども園では「学校」と「児童福祉施設」の両方に位置付けられています。そのため、幼稚園と保育園、どちらの補助金にも手を上げることが可能になります。
もちろん、同じ趣旨の補助金を二重で受け取ることは出来ませんが、補助金の種類が大きく増えることになるので、とても大きな違いです。
- Qこども園に移行することを決めた場合、職員への説明は必要でしょうか。
- A
こども園に移行する場合、職員への説明は必須になります。
保育園からこども園に移行する場合は、職員の待遇面などは大きくは変わりませんが、園児募集が必要になるなど、園としての動きは変わってきます。
幼稚園からこども園に移行する場合、職員にとっては、処遇改善等加算が増えるというメリットもありますが、長期の夏休みが取りづらくなるなどの働き方の変化も伴います。これまでは預かっていなかった0歳から2歳の園児も預かることになりますので、現場の動きは大きく変わります。
こども園へ移行する際には、配置基準として求められる有資格者の人数も増えるケースが多いので、こども園への移行の目処が付いた段階で、先生方には説明することをお勧めしています。
こども園移行のご相談ならいちたすへ
認定こども園への移行を検討するうえで、お困りのことがありましたら株式会社 いちたすへお気軽にお問合せください。
移行前の検討の段階から、移行するために必要な提出書類の解説、移行後の運営方法まで、幅広くご支援しています。
いちたすについて
株式会社 いちたすでは、保育園・こども園・幼稚園の経営者の皆様に対して、経営・運営・財務に関するコンサルティングを専業で行っています。
会計事務所として、日常の会計の確認、記帳代行を行ってもいますので、園のバックオフィス業務、書類関係全般のご支援もしています。幼稚園・保育所・こども園の税務・労務に精通した税理士法人・社会保険労務士事務所とも提携しています。
「会計事務所は法人設立からお世話になっているから変えたくない」というお声を頂きます。
そのような場合は、会計・税務ではなく、
- 認定こども園への移行を考えているが、何から手を付ければよいかわからない。
- 施設型給付費の加算の取りこぼしがないか、第三者に確認してもらいたい。
- 処遇改善をどのように取り入れていけばよいか、他園がどのように行っているかを知りたい。
などのお悩みに対してご支援・コンサルティングを行う顧問(相談)契約もあります。こちらは、セカンドオピニオンのようにお使いいただくことも可能です。
料金プラン
株式会社 いちたすでは、定期的な顧問契約から、スポット(単発)での施設型給付費の確認、申請書類の確認なども行っております。
たとえば相談契約ですと
で引き受けております。
依頼の流れ
お問合せフォームかinfo@ichitasu.co.jp宛にメールをお送りください。
詳しい内容をお伺いいたします。
その後は、
- 当社の担当者が園にお伺いする
- 当社事務所(仙台市一番町)にお越しいただく
- Zoomなどを利用してオンラインで打ち合わせをする
といった形で、具体的にどのようなご支援が出来るのかを打ち合わせいたします。
園によって状況は様々ですが、
など、ご要望に合わせてご提案いたします。
お気軽にお問い合わせください。