多くの時間を過ごす園での食事は、保護者が園選びをする上でとても重要なポイントになります。
園の経営者としては、自園の給食に対するこだわりや取り組みを発信し、保護者に「この園に通わせたい!」と思ってもらいたいものです。しかし、それを職員と連携しながら考え実行に移していくことの難しさを感じられているのではないでしょうか。
本記事では、
- 園での給食に力を入れていきたいが、何から考えればいいか分からない
- 幼稚園から認定こども園への移行を検討しているが、給食の知識が足りていない
とお悩みの経営者の方へ、
給食資料が豊富な自園調理必須の保育園給食の基礎知識から、献立や給食費の無償化の考え方、さらに栄養士に関する基礎知識まで、管理栄養士が実体験を交えながら詳しく解説しています。
本記事を読むことで、
- 園の経営者目線から見た給食の考え方
- 給食を支える栄養士を雇う上で知っておくべきポイント
がわかりますので、給食を園の強み、魅力にしたい方はぜひ最後までお読みください。
0歳から2歳までの3号認定の園児に対しては自園調理が必須ですが、3歳から5歳までの1号認定、2号認定の園児は外部搬入が認められています。
とはいえ、保護者のニーズとしては、自園調理が求められていると考えられます。こども園移行のタイミングで自園調理に切り替えるかどうかは、とても重要な検討事項です。
保育園の給食についての基礎知識
多くの時間を過ごす園での給食は、保護者も重要視するポイントです。
また保育園給食はどのようなことが考慮されているのかを給食の目的、給与栄養目標量の設定方法からわかりやすく解説します。
給食は保育園を選んでもらうポイントの1つ
保育園の給食が魅力的であることは、保護者が保育園を選ぶ重要なポイントになります。
- 子どもに人気のメニューがある
- 栄養バランスが良い
- 味がおいしい
- 施設で調理していて安心・安全な感じがする
など、既に保育園に子どもを通わせている保護者からの口コミ等で、保育園給食の様子を知る保護者も少なくないかもしれません。
保育園給食の目的とは?
そもそも保育園給食は、どんな目的で提供されるものなのでしょうか。
厚生労働省では、保育園における食事のガイドラインの中で下記のように説明しています。
保育園は、子どもにとっては家庭と同様に「生活する場」であり、保育園での食事は、心身両面からの成長に大きな役割を担っています。
(出典:厚生労働省 保育所における食事の提供ガイドライン)
乳幼児期の子どもにとって、「食事」を通して、食事をみんなで楽しむ、調理のプロセスを日々感じる、様々な食材にふれる等の経験を積み重ねることは、子どもの五感を豊かにし、心身を成長させます。このように、「食事」は、生きる力の基礎を育む上で非常に大切なものです。
保育園 給食の規定量について
保育園の給食には、児童福祉法で定められている最低基準が存在しており、3歳以上の幼児の主食にかかる費用は、国や市町村から園に支給されません。そのため、3歳以上児の主食は園か家庭が準備する必要があります。
また主食の量は保育園で設定しており、炊き上がりの状態で1人当り90gから120g、3~5歳児の年齢や園の方針によって幅があります。
保育園の献立についての考え方
保育園給食では栄養素やエネルギー量の面からも目標値を設定し、献立を作成しています。
ここでは、弊社の本社所在地である仙台市の基準を例に、保育園の献立の考え方を解説していきます。
保育園の給与栄養目標量の設定(仙台市)
給与栄養目標量とは、施設で提供する給食の給与エネルギーや栄養素などの目標値のことをいいます。
弊社の本社所在地である仙台市の基準では、給与栄養目標量を次のような目標値を設定しています。
保育所の給食において、通常昼食の割合は1日のおおむね1/3の量を目安とし、間食については1日の10~20%程度の量を目安としている。
(出典:仙台市 保育所給食の手引き)
「1~2歳児」は、「昼食」と午前・午後の2回の「おやつ」で1日の全体の50%、
「3~5歳児」は、「昼食」と「おやつ」で1日全体の45%を提供することを目的とするが、家庭で不足しがちなビタミン、ミネラルについては50%とする。
延長保育の間食については、1日の5~10%、夕食としては1日の25~30%を目安とする。
幼い子どもは、大人と比べると胃の容量が少なく、1度にたくさんの量を食べることができません。
そのため、保育園のおやつは一度の食事では摂取しきれないエネルギーや栄養素、水分補給の意味合いもあります。
もちろんお楽しみの意味合いもあります。そのため、保育園のおやつはクッキーやケーキなども出ますが、食事の一部と考え、うどんやスパゲティ、おにぎりなどもおやつとして提供されます。
給与エネルギー目標量の算出方法(仙台市)
給与エネルギー目標量とは、施設で提供する1日の給食・おやつのエネルギー量の基準となるものです。
例えば、給与エネルギー目標量が500kⅽalであれば、給食・おやつで500kⅽalになるように献立を考えます。
給与エネルギー目標量は、毎日基準以上になることを目指すのではなく、1か月トータルで見た時に給与エネルギー目標量以上になるように献立を作成します。
下記の仙台市の基準を基に、給与エネルギー目標量の算出方法をご紹介します。
- 園児の性別・身長・体重から個人の推定エネルギー必要量(1日に必要なカロリー)を算出します。
- 未満児(1~2歳児)、以上児(3~5歳児)の推定エネルギー必要量を算出後、中央値・平均値・最小値・最大値など様々な角度から考慮し、最も多くの子どもに対応できる値を集団の推定エネルギー必要量とします。
- 集団の推定エネルギー必要量(kcal/日)を算出後、1~2歳児は50%、3~5歳児は45%で計算すると、園での給与エネルギー目標量が算出できます。
給食の献立を考える際、給与栄養目標量を満たすためにはどのような食品をどのくらい摂取したらよいかを具体的に示した「食品構成」というものも考慮し献立作成をします。
園で設定した給与栄養目標量と食品構成をしっかり守ってれば、近年問題となっている「給食の量が少ない」「質素すぎる」という問題は起きないはずです。
物価高騰の影響を受けてなのかもしれませんが、給食で問題になるケースでは、給与栄養目標量や食品構成が考慮されていない給食ということが多いです…。
全国の保育園の給食人気メニュー紹介
子どもの成長に欠かせない給食は、主食や主菜などの栄養素バランスが取れていていることが前提です。
しかし、子どもが喜んで食べてくれるかという観点からも、考慮されている保育園が多いのではないかと思います。
そこで、給食メニューに悩まれる方に向けて、全国の保育園で人気の給食メニューを3つご紹介します。
レバーのオーロラ和え
レバーは不足しがちな鉄分が豊富に含まれており、子どもの成長にもぴったりです。
癖が強いレバーですが、下味をしっかりつけ、ソースで和えることで子どもたちにも人気なメニューになっています。
【材料(三歳以上児 一人分)】
- 豚レバー 30.0g
- おろしにんにく 1.0g
- おろししょうが 1.0g
- カレー粉 1.0g
- 片栗粉 5.0g
- 油 5.0g
- 中濃ソース 2.0g
- ケチャップ 3.0g
- 三温糖 1.0g
【作り方】
- ソース、ケチャップ、砂糖を鍋に入れ、軽く火にかけてソースをつくります。
- ボールにおろしにんにく、おろししょうが、カレー粉、レバーを入れ下味を付けます。
- 2.に片栗粉をまぶし、油で揚げます。
- 揚げたレバーに1.のソースを和えれば出来上がりです。
野菜納豆和え
青菜が苦手な子どもにも食べやすい和え物です。子どもたちに人気の納豆と和えることで、食べやすくなっています。
【材料(三歳以上児 一人分)】
- 挽きわり納豆 15.0g
- ほうれん草 15.0g
- もやし 7.0g
- コーン缶 3.0g
- しらす干し 2.0g
- 油 0.5g
- 醤油 1.0g
【作り方】
- 油でしらす干しを炒め、粗熱をとります。
- ほうれん草、もやし、コーンを茹で、ザルにあけて、冷水をかけて冷まします。
- 2.の水分をしっかりきってボールに入れます。
- 3.のボールに挽きわり納豆、醤油を入れて和えれば出来上がりです。
【調理のポイント】
茹でた野菜はしっかり水気を切ると美味しく作れます。
きなこマカロニ
きなことマカロニを和えるだけの簡単レシピですが、子どもに大人気のおやつメニューです。
きな粉に含まれるたんぱく質やカルシウムが気軽に摂取できるのも、嬉しいポイントですね。
【材料(三歳以上児 一人分)】
- マカロニ 12.0g
- きな粉 5.0g
- 砂糖 4.0g
- 塩 少々
【作り方】
- きな粉、砂糖、塩を混ぜておきます。
- マカロニを表記時間より少し多く、柔らかめに茹でます。
- お湯を切ったマカロニに、1.をまぶせば出来上がりです。
【調理のポイント】
- マカロニを茹でてすぐにきな粉をまぶすと、べちゃっとするので、少し水分を飛ばしてから和えるときれいに仕上がります。
- 塩は甘さを引き立たせるために入れています。
保育園の給食を経営観点から見たポイント
保育園の給食が魅力的であることは、保護者が保育園を選ぶ決め手になりうるものです。
では保育園の経営者は、保育園給食のどんな点に気を配れば良いのか、気になるところです。
ここからは、保育園経営の観点からみた保育園給食を考える3つのポイントをお伝えします。
ポイント①園のブランディング
園のブランディングとは「自分達らしさというブランドを確立し、顧客である保護者からの共感を集めるための表現活動」のことです。
自園の給食も、園らしさというブランドをつくる要素となります。
自園の給食に対するこだわりや独自の取り組みを保護者に伝えていくことで、園の価値を保護者に訴求することができ、保護者が「この園に通わせたい!」と自園を第一希望で申し込みしてもらえる可能性を高めることができます。
ブランディングについては下記記事でも詳しく解説しておりますので、保育園のブランディングについて知りたい方は下記ボタンよりご覧くださいませ。
ポイント②収入に対する給食費割合
保護者や子どもにとってより良い給食を提供したいと思う反面、費用は限られているのが現状です。
近年、食材費の高騰により給食費の増額徴収を検討する園も増えているかと思います。給食費の削減は地道ですが、日々の積み重ねがとても大切になります。
実際のところ、給食費にどのくらい費用をかけるかは、園の理念や経営方針により様々で、絶対的な正解はありません。
しかし、給食費にかける予算を決める上で参考にできる情報もあります。
それは、WAM(ワム:独立行政法人福祉医療機構)が毎年12月頃に公表している「保育所および認定こども園の経営状況について」というPDF資料です。
2024年3月現在の最新版は2022年度決算が元となっており、保育園(5,804件)と認定こども園(1,902件)の給食費率が定員規模別にまとめられています。資料によると、給食費率は、サービス活動収益に対して3.7%~5.6%の割合となっています。
給食費率についての詳細は、下記リンクから確認できます。
参考情報:WAM 2022 年度 保育所および認定こども園の経営状況について
また経費割合だけではなく、給食費を無駄なく有効的に支出することも重要です。
下に、給食費を削減する3つのポイントをまとめています。
- 季節の食材を使用
季節の食材を使用することによって、栄養豊富な食材が安く入荷できます。季節外れの食材を献立に取り入れてしまうと、味が良くない上に値段も普段の倍以上することもあります。果物・野菜類(特に葉物)は注意が必要です。 - 給食数の管理 保育との連携
給食数の管理は保育との連携が重要になります。前もって給食数の変動(お盆の時期や年末年始など)がわかるのであれば、共有し発注量を減らすことで食材費を下げることが出来ます。 - 残食を減らす工夫
残食を日々確認することで、子どもたちの嗜好などを把握することが出来ます。残食が多かった場合は提供量は適正か、味付けに問題があったのか、見た目で食欲をそそらなかったのかなど残食が多い理由を考え、次に活かし残食が少なくなるよう努めます。残食が多いということはその分、食材費も無駄になっているということなので残食を減らす努力が必要です。
子どもの健やかな成長という点からも、削減する部分、費用をかける部分のメリハリをつけることが大切になってきます。
ポイント③食育を押し出す
保育園では給食以外の場面においても、子どもの成長に応じた「食を通じた学び」の体験を提供されているかと思います。
下記の記事では、保育園の食育について詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
おすすめ記事:【2024年最新版】保育園の食育ついてプロが5分で分かりやすく解説
保育園 給食費の無償化について
幼児教育の無償化が始まってから、保護者から「給食費は無償化になるのか?」と聞かれることが多いのではないでしょうか。
結論から申し上げると、基本的に給食費は無償化の対象外となっています。
施設の利用料は無償化となっていますが、給食費や行事の費用、通園送迎費などは従来どおり保護者の負担となります。
保育園の給食費は、主食費や副食費などに分かれています。
無償化の前は副食費は施設の利用料に含まれていましたが、無償化後は保護者が副食費を実費で支払うようになりました。
そのため「無償化の前までは副食費は施設の利用料に含まれていたのだから、副食費も無償化の対象になるのでは?」と思われる保護者がいらっしゃる可能性は十分に考えられます。
ただし0~2歳児クラスに子どもを預ける住民税非課税世帯の場合は、給食費も無償化となる点に注意が必要です。
栄養士の雇用で知っておくべき基礎知識
また、少ない人員で給食室を回している園では、給食は給食室に一任しているという園も多いかと思います。
少ない人員で給食室を回していると、栄養士・調理員ひとりひとりの役割が大きくなり、業務が属人化することにもつながります。給食業務は毎日のことなので、栄養士・調理員の方の急な退職があったとしても、業務を止めるわけにはいきません。
そのため、給食室の人員計画を考えていくことも重要になります。保育園では、管理栄養士までは求められていませんが、栄養士と管理栄養士の違いについてもわかりやすく解説していきます。
給食室の職員が一人退職したことで、業務が止まらないよう、経営者が園の長期計画として給食室の退職対策等計画を示すことにより、園内での給食室の重要性が伝わり、給食室と保育の連携が取りやすくなることにもつながります。
栄養士・管理栄養士の違い
管理栄養士は養成施設で4年間学ぶことで、国家資格の受験資格を得ることが出来ます。
その後、国家試験に合格し管理栄養士を名乗ることが出来ます。または、栄養士の資格を取得した上で実務経験を積み、国家試験に合格すると管理栄養士を名乗れます。
健康な人はもちろん、傷病者を対象とした栄養管理・指導ができ、病院や老人ホームなどに勤務することが出来ます。また、不特定多数に対しての給食対応も可能です。
この法律で管理栄養士とは、厚生労働大臣の免許を受けて、管理栄養士の名称を用いて、傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導、個人の身体の状況、栄養状態等に応じた高度の専門的知識及び技術を要する健康の保持増進のための栄養の指導並びに特定多数人に対して継続的に食事を供給する施設における利用者の身体の状況、栄養状態、利用の状況等に応じた特別の配慮を必要とする給食管理及びこれらの施設に対する栄養改善上必要な指導等を行うことを業とする者をいう。(栄養士法第1条第2項)
栄養士法
栄養士は養成校を卒業することで国家資格を取得します。主に健康な人に対する栄養管理・指導を行います。保育園や社員食堂などのイメージです。
この法律で栄養士とは、都道府県知事の免許を受けて、栄養士の名称を用いて栄養の指導に従事することを業とする者をいう。(栄養士法第1条第1項)
(出典:栄養士法)
給食業務は栄養士資格を保有していれば従事することができます。
より専門的な知識を備えている管理栄養士を採用すれば、園紹介に「管理栄養士を配置!」など、食に力を入れていることを保護者や外部の方へ園の強みとして発信することもできます。
栄養士の退職対策
「管理栄養士を採用したから、給食はお任せで大丈夫」とお考えの経営者の方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、栄養士・管理栄養士の全員が、最初から保育園給食のプロフェッショナルであるかというと、そうではありません。
もちろん、管理栄養士は食の専門家として学んでいます。
管理栄養士養成校の一般的なカリュキュラムでは、1・2年生で健康な人向けの栄養管理学習はほとんど修了し、3年生で傷病者向けの学習を中心に行い、4年生で国家試験の勉強という流れで、資格取得を目指す内容となっています。
このことから、栄養士・管理栄養士の全員が、最初から保育園給食のプロフェッショナルかというと、そうではないことがお分かりいただけるのではないでしょうか。
前職では保育園で栄養士として働いていました。
「新卒の栄養士を採用したがすぐに退職してしまった」という話をよく耳にするのですが、栄養士と聞くと、食の専門家、献立作成や調理はできるのが前提と考えていられる方が多いかと思います。
管理栄養士については、病院、介護老人施設、社員食堂、学校給食、保育園給食等、様々な分野を学び、栄養の知識に関連した臨床分野、食品化学なども学んでいます。
ただ、保育の養成校のように幼児ピンポイントでの学習や調理、献立作成を専門に学んでいるというわけではないという認識が必要です。
私が学生のころ作成した献立は最長で3日間でした。
新人の頃は、1か月分の作成、栄養士は自分だけ、頼れる人もいないといつも不安を抱えていました。献立作成、幼児特有の食形態や調理については周りの方々のサポートを受けながら現場で学んでいきました。
また給食業務は少ない人員で回していることも多く、栄養士・調理員ひとりひとりの役割が大きくなり、属人化しやすい傾向があります。そのため、給食室の業務まで把握するのが難しいことも多くあります。
特に新卒や未経験採用の場合は、本格的な栄養計算ソフトの使用も初めてになります。
栄養士・管理栄養士を採用してすぐに、
- 「栄養士だから献立作成できるよね?」
- 「調理もできるよね?」
- 「給食室のまとめ役もお願いね!」
と丸ごとお任せしたくなるところですが、
栄養士・管理栄養士の資格を取得したからといって、最初から保育園給食の全体を把握してまとめられる訳ではありません。
新卒・未経験の栄養士採用をお考えの園は、下記のように
- 栄養士を複数人体制にする
- 給食室の人員にゆとりを持たせる
などのサポート体制を整えておくと、
今後の成長に期待ができ、栄養士・管理栄養士の退職対策に繋がるのではないでしょうか。
サポート体制が取れる余裕がない場合や給食室は栄養士に一任したい場合は、給食業務経験のある管理栄養士・栄養士の採用をおすすめします。
新人の頃は、一人職のため
「業務を正しくこなせているのか?」
「間違ってないか?」
と不安を抱える毎日でした。
身近に相談できる栄養士さんがいたら…そんなことを思っていました。
系列園や近隣の園さんと栄養士の交流を持てるような環境があれば、栄養士にとってうれしいポイントです。
同じ職種と交流を持つことで、精神面でも安定し退職回避にも繋がります。
また、積極的な研修参加を推奨していただけると、栄養士業務にも自信が持てるのではないでしょうか。
ここまで保育園給食について、給食費の無償化の考え方から栄養士に関する基礎知識まで、保育園経営者必見の情報をお伝えしていきましたが、最後のテーマは「給食室の監査対策」についてです。
監査対策は保育園経営者様からよく聞かれるテーマですが、監査対策は情報収集がしにくい分野でもあるのではないでしょうか?
仙台市の給食監査を受けた経験をもとに、次から詳しく解説していきます。
給食室の監査対策のポイント
「給食室の監査ではどんなところを見られるのだろう?」とドキドキされる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、仙台市の給食監査を受けた経験をもとに、監査でよく聞かれる点をまとめています。しっかり準備して監査対応に臨みましょう。
監査で見られる視点
仙台市の給食監査は事前資料として提出した書類に基づき進められます。監査時に提出する書類(仙台市ですと給食実施状況)について、根拠を説明できるように準備しておきましょう。
特に給与栄養目標量の設定根拠については、確認されることが多いです。設定根拠を明確に記録に残すことをおすすめします。
(出典:厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版))
また、衛生管理についても根拠をもって対応している旨を伝えられるよう準備をしておきましょう。
検収表などの日々の衛生管理については記入漏れがないか日々確認しましょう。記入漏れが多いと日々の衛生管理が徹底されていないとみなされてしまいます。給食会議についても同様です。記録をしっかり残し、給食を園全体で把握している旨をお伝えできるようにしておきましょう。
監査を受けるときに忘れやすい箇所
給食室の監査を受けた経験上、忘れやすいと感じたポイントを2つ、下記にまとめました。
- 検便について
監査では、給食に関わる職員全員の検便結果が確認対象になります。
給食室の職員だけでなく、給食を運搬する先生、給食補助に入る先生など給食に関わる職員は全員対象です。特に確認が必要なのは、検便結果が出てから入職しているかという点です。検便結果が陰性と確認できてから、保育・給食業務に入っているかを監査では確認されます。特に年度途中に入職した先生がいる施設では入職日と検便結果が出た日を把握しておく必要があります。 - 給食実施日数と開園日について
監査では給食実施日数と開園日についての確認もあります。
開園日が20日で給食実施日数が19日の場合、1日少ないのはなぜかを説明できるようにしておきます。行事のため、保育の園児がいなかった、などなぜ開園日と給食実施日数があっていないのか把握しておく必要があります。
保育園給食についてのご質問
- Q運営経費のうち給食費経費はどの程度かけるべきでしょうか?
- A
給食費経費にどのくらい費用をかけるかは、園の理念や経営方針により様々で、絶対的な正解はありません。
ただ、給食費にかける予算を決める上で参考にできる数値をご紹介します。
WAM(ワム:独立行政法人福祉医療機構)の「2022年度 保育所および認定こども園の経営状況について」によると、給食費率は、サービス活動収益に対して3.7%~5.6%の割合となっています。給食費率についての詳細は、下記リンクから確認できます。参考情報:WAM 2022 年度 保育所および認定こども園の経営状況について
ただ上記は、あくまで参考値であることをご承知おきください。
- Q給食は園を選ぶポイントの1つになりますか?
- A
保育園の給食が魅力的であることは、保護者が保育園を選ぶ重要なポイントになります。
ただ、園の給食が魅力的かどうかを保護者が直接確かめる機会はないことが多く、また保護者の判断基準が曖昧になりやすいことが考えられます。
そのため、自園の給食に対するこだわりや独自の取り組みを、保護者に積極的に伝えていくことが大切になってきます。
- Q自園給食のメリット・デメリットはなんですか?
- A
自園給食のメリットは、園の方針を迅速に反映できるという点です。
デメリットは、給食室の人員管理を行う必要があるということです。給食室の人員は少ない園が多く、急な退職などの場合は急いで人員を補充しなければなりません。
- Q給食委託業者のメリット・デメリットはなんですか?
- A
給食委託業者のメリットとしては人員管理が委託業者側にあるという点です。急な退職の場合も異動などで人員を確保してもらえることもメリットの一つです。
デメリットとしては、限られた予算の中で園の方針を実現しづらい場合があるということです。
安心・安全で安定した給食提供を求める場合は委託業者をおすすめします。
- QHACCP(ハサップ)とは?
- A
HACCP(ハサップ)とは、世界で標準的に活用されている衛生管理の手法です。
日本では2020年6月1日に食品衛生法の一部を改訂する法律が施行され、食品取扱い業者はこの手法に沿った衛生管理を構築し、運用していくことが制度化されました。保育園、こども園、幼稚園給食も対象です。
まとめ
保育園の給食について、献立の考え方から給食費の無償化の考え方、さらに栄養士の雇用で知っておくべきポイント、さらに給食室の監査対策まで、保育園経営者必見のテーマを解説しましたが、いかがだったでしょうか?
本記事が、給食を園の強み、魅力にするためのお役に立てれば幸いです。
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- 当社の担当者が園にお伺いする
- 当社事務所(仙台市一番町)にお越しいただく
- Zoomなどを利用してオンラインで打ち合わせをする
といった形で、具体的にどのようなご支援が出来るのかを打ち合わせいたします。
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