子ども・子育て支援等分科会では、こども家庭庁に置かれているこども家庭審議会の下に設置されており、主に公定価格給付費、施設等の各種基準に関する事項等について審議を行っています。

本ブログでは、令和6年12月19日に開催された第8回子ども・子育て支援等分科会にて発表された度改正の方向性についてを中心にまとめました。

お忙しい経営者の方でも、幼保業界の動向がわかるようにまとめましたので、ぜひ最後までご覧くださいませ。

この記事を監修した人

中小企業診断士:大窪 浩太

関西の税理士法人にて公益法人に対して決算・申告書作成、財務コンサルティングを担当。 2017年、同税理士法人の仙台支店に転勤。 2019年7月に税理士法人を退職後、株式会社いちたすに参画。
得意分野:幼稚園・保育園・認定こども園の経営・財務コンサルティング。 少子化がますます進む東北で、今後数十年、安定して運営していける園づくりの支援を行う。 新規園の設立や代表者の代替わりなどの際は、法人に入り込んで、伴走型の支援を行うこともある。
宮城県中小企業診断協会所属

第8回子ども・子育て支援等分科会のポイント

第8回子ども・子育て支援等分科会のポイントについての説明画像

第8回子ども・子育て支援等分科会では、これまで本分科会で検討されてきた小規模保育事業における3歳以上児の受入れ保育士の復職支援の強化についての制度改正の方向性や、こども誰でも通園制度処遇改善等加算の一本化案公定価格の見直しについて等、幼保業界の経営者必見の内容が議論されました。

なかでも重要なポイントを5つに絞り、以下にまとめました。

第8回子ども・子育て支援等分科会 重要ポイント
  1. 小規模保育事業における3歳以上児の受入れについて
  2. 処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について
  3. 公定価格の見直しについて
  4. 令和6年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果について
  5. 保育所等の職員による虐待等に関する通報義務等

会議資料を全てご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。

トピック①:小規模保育事業における3歳以上児の受入れについて

小規模保育事業における3歳以上児の受入れについてについての説明画像

小規模保育事業は、原則0~2歳児を対象とし19人以下の利用定員内で設置されていますが、令和5年4月にこども家庭庁より3歳以上児についても市町村がニーズに応じて柔軟に判断できることとする旨の通知が発出されました。

その後さらに検討がすすみ、こどもの保育の選択肢を広げることを意義としている観点から、地域の実情を勘案して必要であるときは3~5歳児のみの小規模保育事業の実施を可能とする方向で制度改正の検討がすすんでいます。

(引用:こども家庭庁 制度改正を予定している事項の方向性等について(案)

いちたす:松嶋

3~5歳児のみの小規模保育事業は、すでに国家戦略特区で実施されており、支障は生じていないと報告されています。また、屋外遊技場等の設置を基準とし、配置基準は小規模A型と同様とする方向で検討がすすんでいます。

中小企業診断士:大窪 浩太

小規模保育事業のなかで、3~5歳児まで受け入れることの可否については、賛否両論あると思います。小規模保育事業を運営されている方とお話をしていると「現在の小規模保育事業の園舎で、0歳から5歳までを預かるのはとても難しい」というお話になることが多いです…。
また、3~5歳児のみの小規模保育事業の実施も検討されていますが、3歳児という年齢は、すでにどこかの保育園に通園している可能性が高いので、転園という形になると、こちらもハードルが高いと言わざるを得ないですね…。

トピック②:処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について

処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化についてについての説明画像

現行は処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲと3種類設けられており、それぞれ趣旨や要件が異なることから制度や手続きが煩雑となっていました。その課題を解消するため、令和7年度から処遇改善等加算の一本化に向けて検討が進められています。

本当に一本化されるのか、疑問に思われていた方も多くいらっしゃるかと存じますが、今回の第8回子ども・子育て支援等分科会で具体的な案が示されました。

処遇改善等加算(仮称)として「区分1(基礎分)「区分2(賃金改善分)「区分3(質の向上分)の各区分が設けられます。

詳細は別記事で説明しておりますので、ご覧くださいませ。

中小企業診断士:大窪 浩太

令和6年度までの処遇改善の手続きも、曖昧な部分を極力なくした、とてもよく考えられた制度だと思っていました。ただ、そのぶん、複雑で取っ付きづらくなっていたのは事実です…。
令和7年度からの一本化では、よりシンプルに、より分かりやすくなっていくと見ています。個人的には、処遇改善や人事院勧告分を当年度に支払いきれず、残額になった場合が複雑になりそうだと、現時点では感じています。

トピック③:公定価格の見直しについて

公定価格の見直しについてについての説明画像

幼保施設を運営する上で、一番と言っても過言ではないくらいに影響が大きい公定価格ですが、令和7年度
予算編成過程で以下について見直しが検討されています。

令和7年度予算編成過程で検討している保育の公定価格の見直し事項について
  • 1歳児の配置基準改善(6対1から5対1へ)を踏まえた所要の措置
  • 処遇改善等加算の一本化
  • 人口減少地域に対応した定員区分に係る所要の見直し
  • 災害時における地域支援の取組を念頭に置いた主任保育士専任加算の要件見直し
  • 恒常的に定員を超過している施設の収支差率が高いことを踏まえた所要の措置

引用:こども家庭庁 令和7年度予算編成過程で検討している保育の公定価格の見直し事項について

国家公務員の地域手当の見直しが行われたことによる公定価格の地域区分の見直しについては以下記事で解説しております。

まだ詳細は公表されていないため、具体的にどのような見直しが行われるのかわかっていません。
分かり次第、当社のブログ記事で配信してまいります。

いちたす:松嶋

どのような見直しになるのか、現時点では情報がでておりませんが「災害時における地域支援の取組を念頭に置いた主任保育士専任加算」は、国が以前から言っている「保育所の多機能化」がキーワードになっていそうですね。

中小企業診断士:大窪 浩太

園の経営という面から考えたときに、一番大きな影響が出る可能性があるのは、
恒常的に定員を超過している施設の収支差率が高いことを踏まえた所要の措置」
です。特に1号認定15人定員については、以前から定員を超過しやすい部分だと問題視されていましたので、何かしら調整が入るかもしれません。

トピック④:令和6年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果について

令和6年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果についてについての説明画像

幼稚園・保育所・認定こども園・地域型保育事業を対象に、令和5年度の収支の状況について調査した経営実態調査の集計結果が公表されました。

前回は平成30年度の決算をもとに調査が行われていました。
公表されている資料のなかでは4項目についてまとめられており、以下に概要を記載します。

① 私立施設・事業所の収支差率
  • 保育所は費用も伸びているが、収入がそれ以上に増加。
  • 幼稚園(新制度)、認定こども園の収支差は減少。
  • 収支差減は利用定員と入所児童の乖離が大きくなっていることが影響している可能性あり。(議事録より)
私立施設・事業所の収支差率の表
私立施設・事業所の収支差率

引用:こども家庭庁 令和6年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>

② 私立施設・事業所の人件費比率
  • 全体的に約6~8割程度が人件費に充てられている。(保育所は7割程度)
  • 幼稚園、認定こども園、地域型保育事業は人件費が上がっている。
 私立施設・事業所の人件費比率の表
私立施設・事業所の人件費比率

引用:こども家庭庁 令和6年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>

③私立施設・事業所の保育士等(常勤)の1人当たり給与月額(賞与の1/12を含む)
  • 保育所、幼稚園(新制度)、認定こども園は給与月額が約4~5万円程度増額している。
  • 月額の増額は人勧分を踏まえても少し大きな金額でプラスになっている。(議事録より)
私立施設・事業所の保育士等(常勤)の1人当たり給与月額(賞与の1/12を含む)の表
私立施設・事業所の保育士等(常勤)の1人当たり給与月額(賞与の1/12を含む)

引用:こども家庭庁 令和6年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>

④私立施設・事業所の保育士等(常勤+非常勤)の配置状況
  • 全施設において公定価格基準と実際の配置が乖離している。
私立施設・事業所の保育士等(常勤+非常勤)の配置状況の表
私立施設・事業所の保育士等(常勤+非常勤)の配置状況

引用:こども家庭庁 令和6年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>

令和7年4月からの見える化制度についても、今回の実態調査の情報と近いものを収集する予定とのことです。
また、今回公表されたデータは速報値のため、今度クロス集計の結果が公表されるとのことのため当ブログでも追って扱っていきます。

中小企業診断士:大窪 浩太

今後公表されるクロス集計では、地域区分ごとに集計結果が出てくるなど、より詳細に分析できるようになると思います。

全国平均と比べて、皆様の園はいかがでしたでしょうか?
弊社では、詳しい財務分析も行っておりますので、今後の園運営に悩まれることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

トピック⑤:保育所等の職員による虐待等に関する通報義務等

保育所等の職員による虐待等に関する通報義務等についての説明画像

昨今、不適切保育の事案が全国の幼保施設で相次いでいます。
こども家庭庁・文部科学省として、ガイドラインの策定や保育現場の負担軽減、巡回支援の強化をすすめると共に、保育所等の職員による虐待等の発見時の通報義務の創設等、児童福祉法の改正による制度的対応が検討されています。

現在検討されている制度改正の方向性は以下です。

制度改正の方向性

保育所等の職員による虐待について、児童福祉法等を改正し、下記の規定を設ける。

  • 虐待を受けたと思われる児童を発見した者の通報義務
  • 都道府県等による事実確認や児童の安全な生活環境を確保するために必要な措置
  • 都道府県等が行った措置に対する児童福祉審議会等による意見
  • 都道府県による虐待の状況等の公表
  • 国による調査研究 等

(引用:こども家庭庁 制度改正を予定している事項の方向性等について(案)

これまでは、児童養護施設や障害児者施設、高齢者施設の職員、また保護者による虐待については通報義務がありましたが、保育所等の職員による虐待についても通告義務が課される予定です。

いちたす:松嶋

どんな理由があっても虐待や不適切保育はあってはならないことですが、限られた人員の中で現場の負担が大きいのも事実です。弊社では、幼保業界の経営者の方の時間を生み出すご支援をしております。経営者の方に時間(余裕)が生まれれば、現場の負担の軽減に繋がるのではないでしょうか。お困りの方はぜひ一度無料相談をご利用くださいませ。

まとめ

本記事では、主に公定価格や給付費、施設等の各種基準に関する事項等にについて審議を行ってる子ども・子育て支援等分科会について、令和6年12月19日に開催された第8回子ども・子育て支援等分科会にて発表された制度改正の方向性を中心にまとめました。

第8回子ども・子育て支援等分科会で検討された主な内容
  • 小規模保育事業における3歳以上児の受入れについて
  • 処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について
  • 公定価格の見直しについて
  • 令和6年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果について
  • 保育所等の職員による虐待等に関する通報義務等

その他にも、保育士の復職支援の強化や、こども誰でも通園制度についても議論が行われています。資料の全文をご確認いただきたい方は、こちらからご確認いただけます。

保育事業を運営するなかで切っても切れない「制度」ですが、目まぐるしい社会の変化に対応するため制度改正が検討されています。情報をいち早くキャッチすることで、制度に対応できたり、重要な経営判断に活かすことができます。当社ではこれからも最新情報を発信してまいります。

幼稚園・保育園・こども園経営でお悩みなら東北・宮城の幼児教育・保育業界専門の経営コンサルティングいちたすへ

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処遇改善等加算への対応や、今後の法人経営について、お困りのことがありましたら株式会社 いちたすへお気軽にお問合せください。

いちたすについて

株式会社 いちたすでは、幼稚園・保育園・こども園の経営者の皆様に対して、運営・財務・経営に関するコンサルティングを行っています。

処遇改善等加算について株式会社いちたすで出来ること
  • 処遇改善という制度の説明や考え方の研修
  • 園に導入する際の導入支援
  • 所轄庁に提出する申請書類の作成支援
  • 所轄庁に提出する実績報告書の作成支援
  • 就業規則や給与規程の改訂支援(社会保険労務士と連携)
  • 組織図の作成支援(責任と権限の明確化)
処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ支援
詳しくはこちら

会計事務所として、日常の会計の確認、記帳代行を行ってもいますので、保育所のバックオフィス業務書類関係全般のご支援もしています。幼稚園・保育所・こども園の税務・労務に精通した税理士法人・社会保険労務士事務所とも提携しています。

会計事務所は法人設立からお世話になっているから変えたくない、というお声を頂きます。
そのような場合は、会計・税務ではなく、委託費(施設型給付費)の加算の取りこぼしがないか、処遇改善をどのように取り入れていけばよいかなどを確認する相談契約もございます。こちらは、セカンドオピニオンのようにお使いいただくことも出来ます。

料金プラン

株式会社 いちたすでは、定期的な顧問契約から、スポット(単発)での委託費の確認、申請書類の確認なども行っております。
たとえば、職員15名の園の場合

処遇改善等加算Ⅰ、処遇改善等加算Ⅱ、処遇改善等加算Ⅲの実績報告作成支援

19.25万円~
(税込)

で引き受けております。

また、相談契約、コンサルティング契約ですと

保育園の顧問(相談)契約の場合(1施設)

月額22,000円~
(税込)
保育園のコンサルティング契約(月1回1時間の打ち合わせあり)の場合(1施設)

月額55,000円~
(税込)

で引き受けております。

その他、オプションにはなりますが、処遇改善等加算Ⅰの配分方法の検討園内でのキャリアパスの明確化の支援処遇改善等加算Ⅰの期末一時金としてどの程度支給すればよいのかの試算なども承っております。

依頼の流れ

お問合せフォームかinfo@ichitasu.co.jp宛にメールをお送りください。
詳しい内容をお伺いいたします。

その後は、

その後の流れ
  • 当社の担当者が園にお伺いする
  • 当社事務所(仙台市一番町)にお越しいただく
  • Zoomなどを利用してオンラインで打ち合わせをする

といった形で、具体的にどのようなご支援が出来るのかを打ち合わせいたします。

園によって状況は様々ですが、

など、ご要望に合わせてご提案いたします。
お気軽にお問い合わせください。