「こども家庭庁」の発足や処遇改善臨時特例事業における施設形態での格差が問題になっていますが、いまだからこそ知っておきたいこども園(認定こども園)の3つのポイント(基礎知識、設置・運営方法、メリット・デメリット)を、経営者(代表・理事長・園長)向けにわかりやすく解説しています。
「こども園ってよく話題に上がるけど、いまいちよくわからないよな…」という方、必見です。
待機児童が解消されてきたことで、こども園への移行が難しくなっている地域も出始めています。こども園への移行を検討されている方は、まずは本記事をご覧いただくと、こども園という制度の全体像が把握しやすくなります。
幼稚園からこども園へ移行するメリット・デメリット、保育園からこども園へ移行するメリット・デメリットについても記載しております。(リンクをクリックいただくと該当箇所に飛びます)
また、認定こども園へ移行をご検討中の方は、こちらの記事もご覧ください。
関連記事:【2023年最新版】認定こども園移行をお考えの経営者が知っておくべき3つのポイント
【2023年10月31日】
こども園経営について、よくいただく質問を追記しました。
【2024年2月13日】
こども家庭庁について追記しました。
こども園の基礎知識
ここでは、こども園の基礎知識をわかりやすく解説しています。同じこども園という名前でも、一度制度が大きく変わっていますので、体系立てて整理することで、より掴みやすくなります。
類型がたくさん出てきますが、自園はどこに位置するだろうかと考えるとわかりやすくなります。
こども園とは
では、そもそもこども園とはどのような施設なのでしょうか。
内閣府のHPでは、このように説明されています。
認定こども園とは、教育・保育を一体的に行う施設で、いわば幼稚園と保育所の両方の良さを併せ持っている施設です。保護者が働いている・いないにかかわらず利用可能。
(引用元URL:内閣府 認定こども園)
以下、内閣府のページから特徴を4つ、箇条書きでまとめました。
- 保護者の就労の有無にかかわらず施設の利用が可能。
- 集団活動・異年齢交流に大切な子ども集団を保ち、すこやかな育ちを支援。
- 待機児童を解消するため、既存の幼稚園などを活用。
- 育児不安の大きい専業主婦家庭への支援を含む地域子育て支援が充実。
(引用元URL:内閣府 認定こども園)
つまり、こども園とは、幼稚園と保育園がひとつになった施設のことを言います。
一言で説明すると、ものすごくシンプルに感じますが、詳しく見ていくと、いろいろな制度が絡み合って複雑になっています。
上記引用の中では、こども園の目的のなかにも待機児童の解消が入っているというのが重要なポイントです。
こども園という制度がわかりにくくなってしまっている大きな要因として、
・成立までの歴史(政権交代があった、制度が一度大幅に見直された)
・利害関係者が多い(幼稚園・保育所の成立の背景、これまでの流れ、誇り)
が挙げられます。
こども園という制度の全体像を掴むためには、上記二つが土台になりますが、次の項目では、歴史に焦点を当てて解説しています。
こども園を説明する際に、過去の流れから説明されることはあまりありませんが、これまでの流れを理解することが、全体像を掴む近道だと考えています。
現在のこども園制度成立までの歴史
まずは、時系列から見ていきます。
- こども園という制度が、平成18年(2006年)10月に創設
「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」が第164回国会にて成立。平成18年10月から法律が施行。
(参考URL:e-Gov 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)) - 当初のこども園は、文部科学省と厚生労働省がそれぞれ補助金を出す形で、立ち位置が曖昧。
どっちつかずの存在だったため、あまり普及せず。
- 平成21年(2009年)9月に政権が自民党から民主党に変わる。政権交代。
これまでの制度に見直しが入る。
- 民主党の野田政権の際に「総合こども園」という新制度の構想が打ち出される。
平成24年(2012年)3月「子ども・子育て新システム」が公表される。ここでは、幼稚園と保育園をこども園として市町村が指定する、という案だった。平成27年(2015年)を目処に「総合こども園」をスタートさせるという目標。
(参考URL: 第3節 「子ども・子育て新システム」の概要”>内閣府 平成24年版 子ども・子育て白書 > 第3節 「子ども・子育て新システム」の概要) - 平成24年(2012年)12月に政権が自民党に変わり「子ども・子育て新システム 」に見直しが入る
民主党政権時代の目標がゼロベースになり、新しい制度が検討される。
- 平成27年(2015年)4月に「子ども・子育て支援新制度」がスタート
従来のこども園制度では、曖昧になっていた立ち位置を内閣府にまとめる。内閣府に子ども・子育て本部を設置。
(参考URL:内閣府 子ども・子育て本部)
令和5年(2023年)4月1日にこども家庭庁が創設され、こども家庭庁が子ども・子育て支援制度の管轄となっています。
(参考URL:こども家庭庁 子ども・子育て支援制度)
上記のように、制度が出来て10年の間で2回、大幅な見直しが入っています(うち1回は構想で終わりましたが…)。その際も、こども園という名称は同じものを使っているので、誤解が起きやすくなっています。
たとえば、今回のテーマでブログを書くにあたって、「こども園 歴史」と検索した結果、文部科学省のページが上位に表示されました。
(参考URL:1 認定こども園について – 文部科学省)
このページ、内閣府という文字は一言も出てこず、文部科学省と厚生労働省が協議して指針を定める、といった内容が書かれています。このページを現行のこども園の制度と勘違いして、経営判断を行ってしまうと、取り返しがつかないことになってしまいます。
(上記ページは、「平成18年版 文部科学白書」なので、平成18年当初のこども園の内容です)
ネットで検索する際は、どのタイミングのこども園を説明しているのかで、意味がまったく変わってきます。
最新版以外の資料が残っているところも、制度がわかりにくくなる一つの要因になっています。
もうひとつ、「幼保連携型認定こども園」で調べると、トップページに文部科学省のページが上がりました。説明の最初に「認定こども園法の改正」というテーマから始まり、肝心の「幼保連携型認定こども園」については、よくわからない内容になっています。
(参考URL:Ⅴ.幼保連携型認定こども園 – 文部科学省)
上記も「文部科学省の資料がわかりづらい」ということではありません。これまでの経緯を踏まえたうえでの説明資料なので「従来の制度と新制度を比較する」という説明方法になっています。
上記のように、ネットで検索する際も、資料を確認する際も、「この資料はいつの時期のこども園のことを言っているのだろうか」と頭の隅には置いておく必要があります(特にネット検索)。
資料を確認する際は、可能な限り新しい資料を確認しないと、思わぬ落とし穴があります。
本記事では、最新の制度(子ども・子育て支援新制度)について説明していますので、ご安心ください。
こども園に移行することを、広く「新制度に移行する」と言ったりもするのは、上記のような歴史があるためです。
こども園と保育園・幼稚園の違い
こども園の歴史を見てきましたが、具体的にこども園とはどういう施設なのか、ということを確認する際は、こども園だけを見てもわかりにくいものがあります。そこで、ここでは保育園・幼稚園との違いを見ていきます。
とはいえ、面積基準や配置基準を見ていくと、さらに細かくなってしまうため、預かることが出来る園児に絞って違いを見ていきます。
現在、こども園や保育所を利用するためには、市町村から認定を受けなければならない部分があるため、保護者の就労状況等によって、認定区分を定めています。ここでは、その認定区分を通して違いを見ていきます。
- 1号認定:3歳から5歳(利用制限なし)
- 2号認定:3歳から5歳(保育を必要とする事由に該当)
- 3号認定:0歳から2歳(保育を必要とする事由に該当)
「保育の必要性」というキーワードが出てきましたが、保育の必要性について詳しく知りたい方は認可保育所についてまとめた記事に記載していますので、そちらもご参考下さい。
参考記事:【プロが解説】認可保育所とは?入園条件や保育料をご紹介
では、この認定区分によって、受け入れられる園児はどのように変わるのでしょうか。
- 幼稚園で預かることが出来る園児
- 1号認定:3歳から5歳(利用制限なし)
- 保育所で預かることが出来る園児
- 2号認定:3歳から5歳(保育を必要とする事由に該当)
- 3号認定:0歳から2歳(保育を必要とする事由に該当)
- こども園で預かることが出来る園児
- 1号認定:3歳から5歳(利用制限なし)
- 2号認定:3歳から5歳(保育を必要とする事由に該当)
- 3号認定:0歳から2歳(保育を必要とする事由に該当)
預かることが出来る園児からそれぞれの施設を見ると、内閣府のHPでこども園についての説明にあった
「教育・保育を一体的に行う施設で、いわば幼稚園と保育所の両方の良さを併せ持っている施設」
という言葉がよりわかりやすくなるのではないでしょうか。
経営者向けにこども園の違いを説明するうえでは、何と言っても預かることが出来る園児の違いが重要です。ここを掴むことが出来れば、経営方針を定めることが出来ます。
面積基準や有資格者の配置基準などの検討は、「こども園に移行するかどうか」という経営戦略を策定した後の戦術という扱いになります。
こども園の管轄
こども園に関する事務については、こども家庭庁で一元的に対応しています。
こども家庭庁の中でこども園の今後の在り方や課題を検討する会議や法令、子ども・子育て支援制度の説明資料などが公開されています。
ここでも、こども園だけを見ていくと、これまでの園との違いが分かりにくいので保育園・幼稚園と比較してみます。
- 認定こども園:こども家庭庁(こども家庭庁創設前は内閣府)
- 認可保育所:こども家庭庁(こども家庭庁創設前は厚生労働省)
- 幼稚園:文部科学省
ただ、実務上、管轄の違いを意識することはあまりありません。
実際にやり取りをすることになるのは、基本的には以下の通りになります。
(都道府県をまたいで事業を行っている法人を除く)
- 認定こども園:市区町村
- 認可保育所:市区町村
- 幼稚園:都道府県
上記の括りからもわかる通り、こども園と保育園は、実務上の取り扱いはとても似ています。制度の立て付けも似ていますので、こども家庭庁を創設する際に、まとめてしまうというのは納得できます。
幼稚園は、こども園・保育園とは異なる考え(公定価格ではなく私学助成)で動いていますので、こども家庭庁創設の際も、文部科学省に残るというのも理解できますが、ますます立場が弱くなるのでは、と危惧しています…。
参考記事:【プロが解説】認可保育所とは?入園条件や保育料をご紹介
こども園の種類
一口に「こども園」といっても、これまで見てきた通りの歴史があり、認可保育所、幼稚園、というそれぞれの施設類型として行ってきた施設を、ひとつの「こども園」という制度にまとめる過程で、限界や齟齬が生じます。
そこで、本来意図していたこども園の姿に加えて、 認可保育所・幼稚園それぞれが移行しやすい類型が準備されています。
令和3年10月11日に行われた第58回子ども・子育て会議の資料でも、施設類型の説明が行われていましたので、そちらから引用します。
(参考URL:第58回 子ども・子育て会議 資料7 認定こども園に関する現況)
【幼保連携型】
幼稚園的機能と保育所的機能の両方の機能を併せ持つ単一の施設として、認定こども園の機能を果たすタイプ
幼保連携型認定こども園が、そもそもの制度が出来た際に想定されていたこども園です。ただ、法律上もまったく新しい施設という扱いになりますので、認可を取るまでの手続きが多くなるなど煩雑な面もあります。一方、幼保連携型認定こども園だと受け取れる補助金もありますので、優遇されている面も大きいと言えます。
【幼稚園型】
幼稚園が、保育を必要とする子どものための保育時間を確保するなど、保育所的な機能を備えて認定こども園の機能を果たすタイプ
幼稚園型認定こども園は、幼稚園が保育所機能を兼ね備えることで、こども園に移行するための類型です。幼稚園から移行しているこども園ですので、1号認定の園児が多くなる傾向があります。
【保育所型】
認可保育所が、保育を必要とする子ども以外の子どもも受け入れるなど、幼稚園的な機能を備えることで認定こども園の機能を果たすタイプ
保育所型認定こども園は、保育所が、幼稚園の機能を兼ね備えることでこども園に移行するための類型です。保育所から移行しているこども園ですので、こちらは2・3号認定の園児が中心となる傾向が多いです。
【地方裁量型】
認可保育所以外の保育機能施設等が、保育を必要とする子ども以外の子どもも受け入れるなど、幼稚園的な機能を備えることで認定こども園の機能を果たすタイプ
最後の地方裁量型認定こども園については、本来であれば認定こども園になれない施設を、地方の問題を解決するために、こども園として認めるという、地域課題の解決という目的が大きい施設類型です。
幼稚園・保育所いずれの認可もない地域の教育・保育施設が、認定こども園として必要な機能を果たす施設とされています。
私学助成の幼稚園の場合、新制度に移行する方法として、「幼保連携型認定こども園」「幼稚園型認定こども園」に加えて、「施設型給付を受ける幼稚園」という施設類型があります。
こども園の設置方法や運営方法
それでは、新しくこども園を創設したい場合は、どのように行うことになるのでしょうか。新しくこども園を建築する場合や、こども園に移行するための改築の補助金についても、説明していきます。
こども園の設置
こども園という制度の目的の一つに、待機児童の解消が掲げられていることを見てきました。待機児童が解消されつつある2022年2月時点では、新しくこども園を創設することはハードルが高いですが…。
まず行うことは、どのようなことでしょうか。
こども園の管轄は内閣府ということは見てきましたが、では、こども園として認定を出すのはどこになるでしょうか。
「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」には、以下のように記載されています。
- 幼保連携型認定こども園以外の認定こども園の認定等
第三条 幼稚園又は保育所等の設置者(中略)は、その設置する幼稚園又は保育所等が都道府県(中略)の条例で定める要件に適合している旨の都道府県知事(当該幼稚園又は保育所等が指定都市等所在施設である場合にあっては、当該指定都市等の長)(中略)の認定を受けることができる。 - 設置等の認可
第十七条 (中略)幼保連携型認定こども園を設置しようとするとき、又はその設置した幼保連携型認定こども園の廃止等を行おうとするときは、都道府県知事(指定都市等の区域内に所在する幼保連携型認定こども園については、当該指定都市等の長。(中略))の認可を受けなければならない。
第三条では、幼保連携型以外の認定こども園の認定を出すのは、どこになるのか。
第十七条は、幼保連携型認定こども園の認定を出すのは、どこになるのか。
結論は、どちらも同じです。
- 都道府県知事
- 指定都市等の区域内に所在するこども園については、当該指定都市等の長
指定都市とは、地方自治法で「政令で指定する人口50万以上の市」と規定されている都市のことです。
ですので、当社が所在する仙台市の場合、仙台市は指定都市なので、宮城県知事の認定ではなく仙台市長の認定を受けることになります。
とはいえ、実際に認定こども園を新しくつくる、となった場合、まず相談するのは、都道府県ではなく設立予定の市町村になります。
また法律の話になってしまいますが、「子ども・子育て支援法」において、市町村では内閣総理大臣が示す基本指針に即して、市町村子ども・子育て支援事業計画を策定しなければなりません。
第六十一条 市町村は、基本指針に即して、五年を一期とする教育・保育及び地域子ども・子育て支援事業の提供体制の確保その他この法律に基づく業務の円滑な実施に関する計画(以下「市町村子ども・子育て支援事業計画」という。)を定めるものとする。
ちなみに、仙台市では以下のように策定されています。
(参考URL:仙台市すこやか子育てプラン2020(令和2年度~令和6年度))
各市町村ごとに、名前は違えど子ども・子育て支援事業計画を策定していますので、その5年間の計画の中で、1号認定、2号認定、3号認定の枠をどのようにしていくか、ということがとても重要になります。
保護者の需要に比べて、既存の園での供給量がまだまだ足りていないということであれば、市町村としては何かしらの策を講じる必要がありますので、こども園の新設の可能性はあります。
反対に 保護者の需要は、既存の園ですべて満たされているという計画でしたら、新しい施設を建てる必要はありませんので、新設を希望しても難しいという判断になります。
市町村によっては、ホームページ等では子ども・子育て支援事業計画を公開していない場合もありますので、担当部署に問い合わせをするのが、一番確実です。
園舎建築・改築を行うための補助金
では、市町村との打ち合わせも終わり、新しくこども園を建設するという方向で決まった場合、どのような補助金を使えるのでしょうか。
まったくいちから園舎を建築する場合は、園舎建築のための補助金があります。こども園の場合、園舎建築の際には、厚生労働省・文部科学省の補助金があります。
令和4年2月1日に開催された第60回子ども子育て会議にて、「資料1 令和4年度における子ども・子育て支援新制度に関する予算案の状況について」が公開されています。
- 厚生労働省:「新子育て安心プラン」に基づく保育の受け皿整備
- 文部科学省:認定こども園施設整備交付金
(参考URL:内閣府 第60回 子ども子育て会議)
その他、子育て世代の支援に力を入れている市町村では、安心して子供を預けられるようにということで、市町村で独自に施設整備の補助金を設けている市町村もあります。
厚生労働省の「保育所等整備交付金」について、申請の流れや計算方法などを記事に取り上げていますので、補助金について詳しく知りたい方はご参照ください。
参考記事:【プロが解説】保育園補助金の基礎知識!補助金から事例までご紹介
待機児童の解消が見えてきており、保育の需給ギャップが発生する(供給が多くなってしまう)と発表されている現状、このような施設整備の補助金がいつまで続くかは不透明です。
新子育て安心プランでは、令和3年度から令和6年度末までに約14万人の枠を増やすと謳われていますが、その後は数値目標はなくなる可能性もあります。
こども園への移行を検討されている方は、いますぐ動くことをお勧めします。
(参考記事:厚生労働省 「新子育て安心プラン」について)
こども園の運営方法
幼児教育・保育業界は税金が大きく投入されている事業ですが、幼稚園と保育園の主な収入源は以下の通りです。
- 幼稚園:経常費補助金(私学助成)、保育料無償化分(施設等利用給付費)
- 保育園:委託費(保護者負担額含む)
それが、こども園に移行すると、どの施設類型でも共通で以下の通りになります。
- こども園:施設型給付費、保育料無償化分(3~5歳児)、保護者負担額(0~2歳児)
また、保育園補助金について説明している記事でも取り上げていますが、施設型給付費以外にも、園を運営していくうえで様々な補助金が存在します。こちらは、こども園の類型によって申請できる補助金が異なるケースもあります。
参考記事:【プロが解説】保育園補助金の基礎知識!補助金から事例までご紹介
- 幼稚園型認定こども園:こども園・幼稚園で申請できる補助金
- 保育所型認定こども園:こども園・保育所で申請できる補助金
- 幼保連携型認定こども園:こども園・幼稚園・保育所で申請できる補助金
幼稚園型、保育所型は、もともと持っていなかった機能を兼ね備えた(プラスした)というイメージなので、追加した機能部分の補助金は受け取れないことが多いようです。
厳密には、このように分けるのは誤っているという意見もあるかと思いますが、幼保連携型と幼稚園型・保育所型の違いという話になると、受け取れる補助金の違いが一番大きいように感じます。
幼保連携型のほうが、申請できる補助金の枠がとても広くなりますが、一方で、補助金の資料が多すぎて、じっくりと検討出来ないという短所もあります。
こども園移行のメリットやデメリット
こども園の歴史や種類などを見てきましたが、こども園は、制度が成立した法律名「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」の通り、教育・保育を総合的に提供するための園を推進する(増やす)ために創設されました。
ですので、こども園を新しく建てることはもちろん可能ですが、既存の幼稚園・保育園からこども園に施設類型を変えさせる(変えてもらう)ことも大きな目的です。ここまで、移行という言葉を使ってきましたが、移行とは、幼稚園・保育園からこども園に施設類型を変更することを言います。
認定こども園へ移行をご検討中の方は、こちらの記事もご覧ください。
関連記事:【2023年最新版】認定こども園移行をお考えの経営者が知っておくべき3つのポイント
こども園移行のメリット
それでは、こども園に移行するメリットとはどのようなものでしょうか。
大前提として、国としては既存の施設をこども園に移行させたいという目的があります。それは、子ども・子育て会議で定期的にこども園への移行状況を報告しているところからも見て取れます。
(参考URL:第58回 子ども・子育て会議 資料7 認定こども園に関する現況)
令和4年2月から9月で行われる処遇改善臨時特例事業でも、移行していない私学助成の幼稚園は不利な取り扱いをされています…。
参考記事で取り上げている処遇改善には、私学助成の幼稚園は含まれていません。
(施設型給付を受ける幼稚園は含まれています)
参考記事:【確定版】保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業の全体像・注意点について【2/4付FAQ追記】
上記のように、こども園に移行しないことで不利になるケースが出始めていますので、こども園に移行することで不利になるケースを避けられるということもメリットとして挙げられます。
また、幼稚園、保育園では、それぞれこども園に移行するメリットが異なりますので、個別にみていきます。まずは幼稚園がこども園に移行するメリットです。
- これまでは預かることが出来なかった保育園に通う園児(2号認定)を預かることが出来る。
- 0歳児から2歳児の園児(3号認定)を預かることが出来る。
- 3歳児からの入園だけではなく、0歳児、1歳児、2歳児からの入園が生じることで経営が安定。
- これまでの教育方針を変える必要はない。
- 処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲを受けることが出来る。
幼稚園の先生と、保育園・こども園の先生との平均年収に差が開き始めているのは、処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの影響も大きいですが、新制度に移行することで、幼稚園でも処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲを受けることが出来ます。
参考記事:【プロが解説】処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱとは?全体像と手当の実態
続いて、保育園がこども園に移行するメリットです。
- これまでは市町村に振り分けられていた園児が、自分たちで募集できるようになる(1号認定)。
- 保育園(委託費)に比べて、こども園の公定価格(施設型給付費)は加算項目が多い。
- 手厚い教育・保育が出来るようになる(先生の人数を増やしても、加算で賄える)。
その他にも、こども園に移行することで園児数が変わらないままで、収入を数千万円増やせるケースもあります。こども園に移行する際に検討していないと、移行後は対策が難しいこともありますので、こども園への移行を検討されている方は、お気軽にご連絡ください。
こども園移行のデメリット
次に、こども園に移行する際のデメリットです。
デメリットについても、幼稚園と保育園で分けて考えたほうがわかりやすいのですが、どちらにも共通するデメリットは、移行すると元の施設類型に戻ることは出来ない、ということです。
「こども園に移行したのはいいけど、やっぱり大変だから幼稚園に戻ろう」というのは、認められていません。(新制度が出来た当初、ごくごく一部で、こども園から幼稚園に戻ったケースがありましたが…)
まずは、幼稚園がこども園に移行するデメリットです。
- 0歳児から2歳児を長時間預かることになるので、新たなノウハウが必要。
- 2号認定、3号認定の園児を預かることになるので、夏休みや冬休みは取れなくなる。
- 原則、土曜日も開所が必要。
- 11時間開所になるので、シフト調整が必要。全職員集まっての会議は難しい。
- 自園調理に対応するために、園舎改築が必要になるケースが多い。
続いて、保育園がこども園に移行する際のデメリットです。
- 保育園では、保護者負担額も全額市町村から入金されていたが、こども園では自分たちで保護者から徴収することになる。
- 1号認定については、自分たちで園児募集をしなければならない。
- 選ばれる園にならないと、園児数が減少する(市町村を頼れない)。
- ホームページを作成し、園の特色や保育の内容を情報発信する必要がある。
こども園に移行する際のデメリットは、そのままこども園に移行する際のリスクや不安にも繋がります。移行する前に対応できる部分もありますので、デメリットを認識するだけでなく、どのように対応するのかまで踏み込んで、検討しておきたいですね。
経営者が知るべきこども園のコロナ対策について
令和4年2月13日時点、コロナによる休園が3週連続で最多になったと報道されています。
換気や消毒・マスクの着用など、コロナ対策を行っていない園はないかと思いますが、どれだけ感染対策を行っていても、起こる時には起きてしまうのが、新型コロナウイルスだと感じます。
そこでここでは、保育の現場でのコロナ対策ではなく、コンサルタントの視点から、園運営におけるコロナ対策をまとめていきます。
- 新型コロナウイルスの陽性者が出た場合、濃厚接触者が出た場合、職員に出た場合、園児に出た場合、保護者に出た場合、など想定できる限り細かく場合分けをして、それぞれどのような対応を行うのかを事前に明確にしておく。
- 検討した内容を全職員で共有して、迷いがないようにする。
- プライバシーを尊重する組織文化を日ごろから形成しておく。
- 在宅でも最低限の事務は行える体制を整える(給与や取引業者への振り込みなど)。
- 休園した際の保護者負担額の返還や給与支給額をどのようにするか、あらかじめ決めておき、合意を得ておく。
- どのように情報開示を行うのか、決めておく。
コロナの陽性者が出た場合など、保健所や市町村との連絡や今後の対応、保護者からの問い合わせ、検査キットの配布や回収、などなど行うことは、際限なく増えていきます。
そのどれも、しっかりとした対応が求められるものですので、平常時からどこまで準備を出来ていたかで、園が受ける影響は最小限に抑えられるかと思います。
こども園経営についてのご質問
ここでは、こども園に関して、よく頂くご質問に回答します。
- Q1号認定児も2・3号認定のこどもと同じ時間、保育しなければいけないのですか?1号認定児は16時までなど保育時間の調整はできますか?
- A
2・3号認定は、保育必要量として1日最大11時間又は8時間と定められています。 一方、1号認定の教育標準時間は、基本的に1日4時間ですが、自治体や園により4時間以上のところもあります。 園児の発達の程度や季節などに適切に配慮するもの、とされています。
- Qこども園に移行する際預かることができる園児が増えると、保育士資格や幼稚園教諭免許を新たに取得するか持っている人を新たに雇うかするのですか?
- A
幼保連携型認定こども園では、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方の資格を保有する保育教諭の配置が必要です。2025年3月までは、保育士資格又は幼稚園教諭免許のどちらかを持っていれば保育教諭としてみなされる経過措置期間です。そのため、この期間中にもう一方の資格を取得することをおすすめいたします。
また、認定こども園に移行すると、公定価格の基本分単価に含まれる職員が増えるため、新規採用が必要な施設もあります。例えば、保育園と認定こども園では基本分単価に含まれる職員は、年齢別の配置基準に加えて以下のように異なります。
公定価格の基本分単価に含まれる職員構成(抜粋)- 保育園
- 利用定員90人以下の施設については1人
- 保育標準時間認定を受けた子どもが利用する施設については1人
- 認定こども園
- 保育認定子どもに係る利用定員が90人以下の施設については1人
- 保育標準時間認定を受けた子どもが利用する施設については1人
- 主幹保育教諭等2人を専任化させるための代替保育教諭等を2人(うち1人は非常勤講師等でも可とする)
- 保育園
- Q幼稚園からこども園へ興味はあるが、0歳児のこどもを預かることが懸念点である。 0歳児以外を預かるということはできますか?
- A
0歳児の定員を設けないことも可能です。実際に0歳児の定員を設けていないこども園も多くあります。最終的には行政の判断となりますので、自治体へご相談ください。
- Q認可保育園からこども園へ移行する場合、1号認定を1人でも入れたらこども園として成立しますか?最低何人は1号認定児を入れないといけないなどの決まりはありますか?
- A
認定こども園の保育認定の加減調整部分の一つに、「教育標準時間認定子どもの利用定員を設定しない場合」という項目があります。この適用を受ける施設では調整額が加算されることになりますので、1号認定の定員を設定しないことも可能です。しかし、行政の判断次第となりますのでご留意ください。
- Qこども園への移行を検討しておりますが、園庭が確保できない場合は保育所型でしか申請できませんか?
- A
たしかに幼稚園と保育園では、幼稚園の方が園庭の面積として求められる基準が高くなっています。幼保連携型認定こども園では、「幼稚園・保育所の要件が厳しい基準を適用する」ということになっています。しかし、2015年3月31日以前に認可されている園では、特例制度を使うことが可能です。特例制度については、こちらの記事で詳しく説明しております。また、過去には2階の屋上部分を改修し、園庭として扱うことが認められたという事例もあります。
- Q現在、私学助成の幼稚園として運営していますが、こども園に移行しようか悩んでいます…。どうすればよいでしょうか?
- A
とても大きな経営判断になりますので、しっかりと検討することが必要ですね。
私学助成の幼稚園からこども園に移るとなると、多くの対応が必要になりますが、「施設型給付を受ける幼稚園」という制度は施設型給付に移行しつつも、運営は従来通りの幼稚園と同じでよい、という施設類型もあります。
園児数が減少している状況でしたら、新制度への移行検討を、まずはお勧めしています。
- Q認可保育所以外の保育機能施設とはどんな施設でしょうか。
- A
認可外保育所や、認可外幼稚園が該当します。
- Qこども園に移行すると給食は必須ですか。調理室を増築しなくてはなりませんか?
- A
幼保連携型認定こども園の場合は、保育認定(2・3号認定)に対しては給食の実施が必要です。教育標準時間認定(1号認定)に対しては園の任意ではありますが、一律で自園調理の給食を提供している園がほとんどです。幼稚園型でも、3号認定を預かる場合は、調理室が必要です。幼保連携型以外の認定こども園では、都道府県の条例等があればそちらが優先されるため、自園調理が難しい場合は、まずは自治体にご相談することをおすすめいたします。
- Q現在、認可保育所として運営していますが、こども園に移行すると、何が大きく変わるのでしょうか?
- A
認可保育所からこども園に移行すると、何と言っても1号認定の園児を預かることが出来るようになるのが大きいです。
保育園の場合、市町村が園児を割り振ることになるので、ホームページも整備されていない園がまだまだありますが、1号認定を預かるということは、保護者から直接入園希望を受けることになりますので、情報開示をしていくことが必要になります。
保育園のままでも、少子化で定員割れになれば、人気のある園から埋まっていくことになります。その際、自分たちの園を選んでもらうためにも、自園で園児募集を行うというプロセスはとても重要になってきます。
- Qこども園に移行するかどうかを検討するうえで、まずは何から取り掛かればよいでしょうか?
- A
ずは収入がどのように変わるか、有資格者は何名必要かを調べることから始めると良いかと思います。
そうしたことが明確になれば、これだけ収入が上がると、
・園児のために新しい遊具が買える
・おもちゃを増やすことが出来る
・手厚い保育が出来る
・先生の給与を上げることが出来る、
など具体的にイメージしやすくなるかと思います。
こども園経営のご相談ならいちたすへ
認定こども園を運営するうえで、お困りのことがありましたら株式会社 いちたすへお気軽にお問合せください。
いちたすについて
株式会社 いちたすでは、保育園・こども園・幼稚園の経営者の皆様に対して、経営・運営・財務に関するコンサルティングを専業で行っています。
会計事務所として、日常の会計の確認、記帳代行を行ってもいますので、こども園のバックオフィス業務、書類関係全般のご支援もしています。幼稚園・保育所・こども園の税務に精通した税理士法人とも提携しています。
会計事務所は法人設立からお世話になっているから変えたくない、というお声を頂きます。
そのような場合は、会計・税務ではなく、施設型給付費の加算の取りこぼしがないか、処遇改善をどのように取り入れていけばよいかなどを確認する顧問(相談)契約もございます。こちらは、セカンドオピニオンのようにお使いいただくことも出来ます。
料金プラン
株式会社 いちたすでは、定期的な顧問契約から、スポット(単発)での施設型給付費の確認、申請書類の確認なども行っています。
たとえば継続的な契約ですと
で引き受けています。
依頼の流れ
お問合せフォームかinfo@ichitasu.co.jp宛にメールをお送りください。
詳しい内容をお伺いいたします。
その後は、
- 当社の担当者が園にお伺いする
- 当社事務所(仙台市一番町)にお越しいただく
- Zoomなどを利用してオンラインで打ち合わせをする
といった形で、具体的にどのようなご支援が出来るのかを打ち合わせいたします。
園によって状況は様々ですが、
など、ご要望に合わせてご提案いたします。
お気軽にお問い合わせください。