当ブログをご覧いただいている皆様の中に
- 学校法人を経営しているけれど、学校法人そのものについて深く考えたことがなかった
- 先代から学校法人を承継したけれど、そもそも「学校法人」について知りたい
- 幼稚園の運営母体である学校法人って一体どんな組織か気になる
上記に当てはまる方はいらっしゃいませんか?
本記事では、学校法人のきほんの「き」について、分かりやすく解説しています。
記事後半では、学校法人にまつわる会計や補助金、混同されがちな寄附行為の二つの意味について解説しておりますので、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
関連記事:【プロ解説】学校法人決算書の見方が実例を元に7分で分かる!|幼稚園・こども園向け
学校法人向けの行政の資料を読んでいて毎回思いますが、独特の専門用語については、当たり前に知っている前提で話が進み、説明がないものが多いです。
専門用語に馴染めず、資料を読むこと自体が億劫になることもあると思いますが…。専門用語の数自体は少ないので、おおよその概要を知っておくだけでも、行政の資料はぐっと読みやすくなると思います。
学校法人とは
そもそも「法人」とは、法律によって人と同じように権利や義務を認められた組織のことです。法人格については、株式会社、学校法人、社会福祉法人、NPO法人…と様々ありますが、ここでは「学校法人」について解説します。
学校法人を簡単に分かりやすく解説
学校法人は、「私立学校法」の3条に規定されています。
この法律において「学校法人」とは私立学校の設置を目的として、この法律の定めるところにより設立される法人をいう。
私立学校法3条を読むと「学校法人が私立学校を設置することを目的としていることはわかったけど、私立学校って何?」となると思います。
「私立学校とはどのような学校をいうのか」についても、同じ私立学校法の第2条に記されていますが、詳しくは学校教育法に記載されています。学校法人が設立する学校について、以下にわかりやすくまとめます。
- 学校教育法に規定する学校
幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校 - 就学前のこどもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律に規定する幼保連携型認定こども園
(出典:e-Gov 私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)
e-Gov 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)))
つまり学校法人は、幼保連携型認定こども園や幼稚園、小学校等の私立学校の設置を目的に設立される法人のことを言います。
学校法人が、上記の「学校法人が設立する学校」しか設立できない、というわけではありません。あくまでも、学校法人の設立の目的が「学校法人が設立する学校」の設置であるため、幼稚園を運営する学校法人が保育所を設置・運営することも可能です。
学校法人が出来た理由
学校法人は、私立学校の設置を目的に設立される法人ですが、そもそも私立学校とはどんなものでしょうか。
学校法人が規定されている私立学校法の1条には、以下のように私立学校法の目的が記載されています。
この法律は、私立学校の特性にかんがみ、その自主性を重んじ、公共性を高めることによつて、私立学校の健全な発達を図ることを目的とする。
私立学校は、創立者の財産を寄附することにより設立されるため、私立学校の運営において「自主性」が重んじられています。一方で、私立学校と言っても公教育の一部を担っている存在でもあるため「公共性」を高める必要があります。
以上のような理由から、その他の民間の法人と異なった法的規制がある「学校法人」という特別な法人制度が創設されました。私立学校の設置者である学校法人は、その自主性を尊重される一方で、公共性にも十分配慮するよう求められています。
(出典:文部科学省 私立学校法)
学校法人の種類について
学校法人は、私立学校の設置を目的に設立された法人です。学校法人の中には、幼稚園のみを運営する法人や、幼稚園・小学校・大学等の複数の私立学校を運営する法人もあります。ここでは、学校法人の種類について解説します。
幼保連携型認定こども園
認定こども園は、教育・保育を一体的に行う施設です。幼保連携型・幼稚園型・保育所型・地方裁量型と4類型あり、類型により設置種類が異なります。
類型 | 幼保連携型 | 幼稚園型 | 保育所型 | 地方裁量型 |
---|---|---|---|---|
設置主体 | 国、自治体、学校法人、社会福祉法人 | 国、自治体、学校法人 | 制限なし | 制限なし |
学校法人は、4類型すべての認定こども園を設置することが可能です。
認定こども園については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【2023年最新版】こども園について経営者が知るべき3つのポイント
幼稚園
幼稚園は、満3歳から小学校就学前までの幼児が入園し、学校教育法22条で目的が定められています。
幼稚園は、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を保育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする。
上記の目的を実現するための教育に加えて、保護者や地域住民への幼児期の教育の支援を努めるよう学校教育法で規定されています。
幼稚園は国が設置・運営する国立幼稚園、都道府県や市町村が設置・運営主体の公立幼稚園のほかに、民設民営で行う私立幼稚園があります。
私立幼稚園は、学校法人以外にも、宗教法人、公益法人、農協、社会福祉法人、個人が設置・運営主体となることが可能です。
(引用:文部科学省 幼稚園及び保育所の設置主体の運営主体の関係について)
保育所では市町村が設置主体となり、株式会社等法人が運営主体となる公設民営の保育所がありますが、幼稚園では設置者管理主義の観点から公設民営幼稚園は存在しません。
保育園
学校法人では、保育園の設置・運営が可能です。
実際に幼稚園と保育園をそれぞれ運営している法人もあります。
保育園には、大きく分けて認可保育園と認可外保育園があります。認可保育園も学校法人で運営することができます。
「認可保育園とは」については、詳しくはこちらの記事で解説しています。
関連記事:【プロが解説】認可保育園とは? 入園条件や保育料、メリット・デメリットをご紹介
また、認可保育園は学校法人のほかに株式会社や有限会社、NPO法人も設置・運営主体となることができます。
(引用:文部科学省 幼稚園及び保育所の設置主体の運営主体の関係について)
学校法人が設置する認可保育所については、営利性の高い「収益事業」とは位置付けられないことから、「附帯事業」とするよう平成14年に文部科学省より通知がでています。
特別支援学校
特別支援学校は、障害のある幼児、児童、生徒に対して幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を行う学校です。
文部科学省の令和3年の調査では、特別支援学校は全国で1,160校あり、約15万人が在籍しています。
対象の障害種は、次のとおりです。
- 視覚障害者
- 聴覚障害者
- 知的障害者
- 肢体不自由者
- 病弱者(身体虚弱者を含む)
(出典:文部科学省 特別支援教育の現状)
特別支援学校にも、国立・公立・私立があり、学校法人が運営する特別支援学校は私立に分類されます。
大学
「学校法人」と聞くと、大学を思い浮かべる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そもそも大学の目的とは、学校教育法83条で以下のように定められています。
大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。
② 大学は、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
大学の設置主体は、国、地方公共団体、学校法人に限定されています。
しかし、構造改革特区においては株式会社が「学校設置会社」として株式会社が設置主体となることが認められています。
構造改革特区では、大学に限らず幼稚園や小学校も株式会社が設置主体となることを認めています。しかし、教育・研究上「特別なニーズ」があること、別途所轄庁の設置認可等が必要です。
専門学校
専門学校は、学校教育法の1条に規定されている学校ではありませんが、大学と同じ「高等教育機関」として位置付けられています。
法律では、学校教育法11章の「専修学校」にあたります。
平成30年度時点で、専門学校は全国に2,800校あり、約59万人の生徒が在籍しています。大学と比較し、実践的な職業教育を行っている点が特徴です。
(出典:文部科学省 未来につながる専門学校)
私立学校法64条4項より、専修学校(又は各種学校)を設置しようとする法人は、「準学校法人」と呼ばれる、専修学校のみを目的とする法人を設立することができます。
知っておきたい学校法人のお金の話
ここまでは、学校法人の基礎知識や種類について、ご紹介しました。ここからは、知っておきたい学校法人のお金について、説明します。
学校法人の会計について
国や地方公共団体から経費補助金の交付を受ける学校法人については、「私立学校振興助成法」で学校法人会計基準に則り、会計処理を実施すること、と規定があります。
なお、令和7年4月1日に施行される改正私立学校法101条では、 文部科学省令が定める基準(会計基準)に従い、会計処理を行うよう定められました。
学校法人会計基準では、学校法人が作成すべき計算書類の種類や、その計算書類の様式、記載方法について定めています。
学校法人で作成すべき計算書類や決算書については、以下の記事で実例を元に詳しく解説しています。
関連記事:【プロ解説】学校法人決算書の見方が実例を元に7分で分かる!|幼稚園・こども園向け
学校法人の会計について、企業会計とは異なり、とっつきにくいと思われている幼保業界の経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
弊社では、学校法人の会計について勉強会や財務分析支援、会計業務のアウトソーシング支援も行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
学校法人の補助金(財政補助)について
学校法人が運営する私立学校は、社会的にも大きな役割を果たしているため、国が法令に基づき私学助成を行っています。
ここでは、幼稚園で活用できる補助金に絞ってお伝えします。
私立の幼稚園では、都道府県が経常費補助を行っています。また、その都道府県が行う助成費に対し、「私立高等学校等経常費助成費等補助金」という国の財政支援があります。
都道府県が行う私立の高等学校、中等教育学校、中学校、小学校、幼稚園及び特別支援学校の経常費助成に対し、その経費の一部を補助
(出典:文部科学省 私学助成の充実(拡充))
※幼保連携型認定こども園も補助金交付の対象
上記の「私立高等学校等経常費助成費等補助金」は都道府県が経常費補助を行うことになっているため、都道府県ごとに交付要綱が存在します。
例えば、当社の事務所がある宮城県では「私立学校運営費補助金交付要綱」を定めています。
宮城県では、私立学校運営費補助金は学校法人のみが対象となっており、学校法人立以外の私立幼稚園は、「私立幼稚園教育振興補助金」の交付を受けることができます。
都道府県ごとに交付要綱が異なるため、補助金の額も都道府県によって異なります。また経常費補助金(運営費補助金)については、具体的な金額をどのように算出しているかが公開されていないことが多く、当社でご支援する際も具体的な補助金額をお示しできないことが多いです…。
また施設型給付費を受ける幼稚園や認定こども園も補助金の交付対象ですが、宮城県の場合は、一般の運営費補助金を受けることはできません。
寄附行為について
学校法人の「寄附行為」と聞くと、皆さまは何が思い浮かぶでしょうか?
文字だけを読むと、寄付をする行為、なので、学校法人に寄付をする際の方法をまとめたもののようにも読み取れますが…。学校法人における「寄附行為」は、文字から来るイメージとはまったく違う、とても重要なものです。
学校法人の「寄附行為」は二つの意味があります。
学校法人を設立する行為
寄附行為の一つ目の意味は、「学校法人を設立する行為そのもの」を指します。
学校法人を設立する際は財産を寄附する必要があります。そのため、創立者が必要な財産を寄附し、学校法人を設立することそのものを寄附行為と呼びます。
学校法人の規則を定めた文書
寄附行為の二つ目の意味は「学校法人の規則を定めた文書」です。
株式会社などで作成する「定款」と同じようなものです。
学校法人の寄附行為というと、この「学校法人の規則を定めた文書」という意味で使われることが多いです。
宮城県では、寄附行為の標準例を公開しています。
- 第1章 総則
- 第2章 目的及び事業
- 第3章 役員及び理事会
- 第4章 評議員会及び評議員
- 第5章 資産及び会計
- 第6章 解散及び合併
- 第7章 寄附行為の変更
- 第8章 補則
(引用:宮城県 学校法人寄附行為標準例)
上記の内容を標準例として、各学校法人の実態に合わせて活用することとなっています。
「寄附行為」がいわゆる「定款」を指す言葉というのは、知らないとまったく結びつかないと思います…。
名前の由来を聞くと、学校法人の設立は寄附から始まり、寄附を行うなかで、初めに法人としての決まりを決めていくことから「寄附行為」と呼ぶのは、言われればそうかとわかりますが…。
同じく寄附から法人が設立される社会福祉法人では、「定款」のことは「定款」と呼ぶので、学校法人独特の用語として、覚えてしまうのが早いですね。
学校法人についてよくあるご質問
ここでは、学校法人についてよくあるご質問にお答えします。
- Q学校法人が設置する学校は私立しかないのですか?
- A
おっしゃる通り、学校法人が設置する学校は私立しかありません。
学校教育法2条において、学校は、国・地方公共団体・学校法人のみが設置することができると定められています。また、同条2項において、国立学校とは国の設置する学校、公立学校とは地方公共団体の設置する学校、私立学校とは学校法人の設置する学校をいう、とされています。
- Q公立の学校は学校法人が運営している訳ではないのですか?
- A
上段の質問で回答した通り、公立学校の設置主体は地方公共団体と定められています。そのため、ほとんどの公立学校では各地方公共団体が設置し、各地方公共団体の教育委員会が管理運営を行っています。一方で、国家戦略特別区域では公立学校の管理を民間が行う、公設民営学校の設置が認められています。例えば愛知総合工科高等学校専攻科は、愛知県から認定を受け、学校法人が指定管理法人として運営を行っています。
- Q学校法人は儲かるのですか?
- A
株式会社は営利行為を目的として設立されますが、学校法人は私立学校の設置・運営を目的に設立するため、非営利法人に分類されます。学校法人においても収益事業を行うことはできますが、収益を私立学校の経営に充てる必要があり、事業の種類も所轄庁が定めることとなっています。このような理由から、学校法人では基本的に「儲かる」という考え方はしません。
とはいえ、健全で安定的な運営を続けていくためには、一定の資金を残していく必要があるため財務についての知識は必要不可欠です。
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