保育士不足の課題に対して、地域の実情やニーズに応じて子ども・子育て分野の支援の役割を担う「子育て支援」について保育園経営者向けにわかりやすく解説しました。

本記事を読めば、以下のことがわかります。

  • 子育て支援員と保育士の違い
  • 子育て支援員は保育士の代わりとして配置できるか?
  • 保育園で子育て支援員を雇用するメリット
  • 活用事例、経営上の注意点

保育士の人材不足で困っている保育士の勤務環境改善したい、という保育園経営者の方はぜひご一読くださいませ。

この記事を監修した人

中小企業診断士:大窪 浩太

関西の税理士法人にて公益法人に対して決算・申告書作成、財務コンサルティングを担当。 2017年、同税理士法人の仙台支店に転勤。 2019年7月に税理士法人を退職後、株式会社いちたすに参画。
得意分野:幼稚園・保育園・認定こども園の経営・財務コンサルティング。 少子化がますます進む東北で、今後数十年、安定して運営していける園づくりの支援を行う。 新規園の設立や代表者の代替わりなどの際は、法人に入り込んで、伴走型の支援を行うこともある。
宮城県中小企業診断協会所属

子育て支援員の基礎知識

子育て支援員の基礎知識に関する説明画像

子育て支援員とは、国で定めた研修を修了し、多様な保育子育て支援分野に関する必要な知識技能を習得した人材のことを言います。
保育士資格や幼稚園教諭の免許を持っていなくても、保育や子育て分野の事業で仕事をすることができます。そのため保育士不足の中、多くの保育施設子育て支援員活躍されています。
本記事では、子育て支援員の基礎知識を解説しています。

子育て支援員とは?

平成27年に始まった子ども・子育て支援制度において、待機児童を解消するために施設数が増える中で、支援スキルをもつ人材不足課題でした。「子育て支援員」は、そのような人材不足の課題に対して、地域の実情やニーズに応じて子ども・子育て分野の支援を担う役割があります。

子育て支援員について、内閣府が作成した資料から抜粋して更に詳しく説明します。

「子育て支援員」とは
  • 国で定めた研修を修了し、「子育て支援員研修修了証書」の交付を受けたことにより、子育て支援員として保育や子育て支援分野の各事業等に従事する上で必要な知識や技術等を修得したと認められる者
  • 研修内容は各事業等に共通する「基本研修」と特性に応じた専門的内容を学ぶ「専門研修」により構成され、質の確保を図る。
  • 研修修了者を「子育て支援員」として研修の実施主体認定全国で通用

(出典:内閣府 「子育て支援員」研修について

子育て支援員になるための研修については、以下の記事で詳しく解説しています。
参考記事:【最新版】子育て支援員資格の完全ガイド!取得方法から仕事内容まで徹底解説

子育て支援員と保育士の違いとは?

子育て支援員は、保育士資格や幼稚園教諭の免許を持っていなくても、保育や子育て分野に従事できると書きましたが、保育士との違いはなんでしょうか。

保育士は児童福祉法に基づく国家資格であり、名称独占資格のため有資格者以外は保育士として名乗ることはできません。

保育士の定義

この法律で、保育士とは、第18条の18第1項の登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者をいう。

(引用:児童福祉法 第18条の4

一方、子育て支援員は厳密にいうと資格ではなく、国で定めた研修を修了したと認められた人が「子育て支援員」として認定されます。
そのため保育園等では、子育て支援員は保育士の補助としての役割を担うことが多いです。

子育て支援員に必要な資格について

子育て支援員は、国で定めた研修の修了し、都道府県や市町村等の実施主体から認定されると「子育て支援員」として従事することができます。

この子育て支援員になるための研修を受講する際に必要な資格はありません
例えば弊社の事務所がある宮城県仙台市では、研修の参加対象者を以下としています。

仙台市内に在住または在勤(保育や子育て支援分野)の18歳以上の方(高校生は除く)で、保育や子育て支援の仕事に関心があり、仕事に就きたい方が対象です。

(出典:仙台市 「子育て支援員」研修受講生を募集します

実施主体により参加対象者は異なるため、注意が必要です。

子育て支援員の保育園経営のメリット

子育て支援員の保育園経営のメリットの説明画像

子育て支援員の基礎知識について理解が深まったところで、ここからは保育園経営において子育て支援員を活用するメリットをご紹介します。

メリット1:保育士の人材不足リスクに対しての備えとしても有効

保育園で子育て支援員を活用するメリットはなんといっても、保育士の人材不足の解消に繋がるという所です。

保育士の配置基準は、「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和二十三年厚生省令第六十三号)」で定められています。

保育士は国家資格であり名称独占資格のため、本来であればこの配置基準は「保育士」の人数で満たす必要がありますが、保育士不足を解消するために配置基準規制緩和が行われました。

そこでは、「保育所の職員配置に係る特例」として、特定の状況では、保育士を子育て支援員代替可能であることが示されました。
具体的な内容を以下に記載します。

 朝夕等の園児が少数となる時間帯等における職員配置に係る特例(94条)

保育士最低2人配置要件について、朝夕など児童が少数となる時間帯においては、保育士2名のうち1名は子育て支援員研修を修了した者等に代替可能とする。

 保育所等における保育の実施に当たり必要となる保育士配置に係る特例(96条)

保育所等を8時間を超えて開所していることなどにより、認可の際に最低基準上必要となる保育士数(例えば15名)を上回って必要となる保育士数(例えば15名に追加する3名)について、子育て支援員研修を修了した者等に代替可能とする。

※特例適用に当たっては、全体で1/3を超えない(保育士を2/3以上配置する)ことが必要

参考URL:内閣府 第48回健康・医療ワーキング・グループ 資料2 厚生労働省 提出資料

早番、遅番の保育士が足りない…という保育園も多く、朝夕の時間帯で子育て支援員を配置できると、保育士不足の軽減につながりますね。

保育士の配置基準について、こちらの記事で詳しく説明しています。
参考記事:【2024年最新版】保育園の保育士 配置基準について経営者が知っておくべき3つのポイント

いちたす:松嶋

この特例制度は、条例で厳しい配置基準を設けている場合等、所在の市区町村によっては使えない場合もあります。特例を適用したい場合は事前に管轄の行政に確認しましょう。

メリット2:市町村によっては補助金の対象となる

保育補助者雇上強化事業」を実施している自治体では、子育て支援員の雇上に対する経費を交付している場合があります。ここでは、兵庫県神戸市の保育補助者雇上強化事業補助金を紹介いたします。

 神戸市保育補助者雇上強化事業補助金交付要綱(一部抜粋)

(趣旨)

保育士等の人材確保や離職防止を図るため、保育所等を運営する者による保育士の補助を行う保育士資格を持たない職員の雇い上げに必要な経費に対する補助金

(補助対象者)

  • 保育所及び幼保連携型認定こども園
  • 小規模保育事業者
  • 事業所内保育事業者
  • 企業主導型保育事業者

(補助対象事業)

  • 補助の対象となる事業は、次のいずれにも該当する補助者を新たに雇い上げる事業とする
    • 保育士資格を有していない者であること。
    • 子育て支援員研修(地域型保育)または家庭的保育従事者研修の受講を完了した者
  • 配置基準数に含まれている者および他の加算・補助事業の対象となる者は補助対象職員から除く

(補助対象経費)

保育対象職員の雇用に要する経費とする

(補助金の算定基準)

種別上限額補助率雇用上限数
利用定員121人未満年額3,104,000円10分の101名
利用定員121人以上年額6,208,000円10分の102名
補助基準額

(出典:神戸市保育補助者雇上強化事業補助金交付要綱

以上のように神戸市では、子育て支援員研修修了者の雇用にかかわる経費の補助金を交付しています。

補助率も10分の10で、園負担なく、子育て支援員の方を雇うことが出来、現場の負担を減らすことが出来る、使いやすい補助金です。
所轄の自治体でも同様の補助事業を行っているか、ご確認くださいませ。

いちたす:松嶋

保育補助者雇上強化事業の他にも、保育士補助者雇上費貸付事業を行っている自治体もあります。これは、保育補助者の雇用にかかる費用を施設が貸付を受け、期間中に保育補助者が保育士資格を取得した場合は返還免除となる事業です。この保育補助者の条件に「子育て支援員研修の受講」を含めている自治体もあります。その他条件等ございますので、気になられた方は行政にご確認いただけますと幸いです。

メリット3:企業主導型保育事業で加算が取得可能

こども家庭庁が所管の企業主導型保育事業では、子育て支援員を配置すると「保育補助者雇上強化加算」という加算を取得することができます。加算の適用条件の詳細は次のとおりです。

 保育補助者雇上強化加算の適用条件
  • 保育士資格を有していない者であること
  • 原則として勤務時間が週30時間程度かつ1か月120時間程度であること。
  • 子育て支援員研修(地域保育コースのうち地域型保育)等の必要な研修を修了した者

(出典:児童育成協会 企業主導型保育事業運営ハンドブック

加算額は、年額約230万円となっており1か月にすると19万円程です(令和6年4月現在)。
この加算は、子育て支援員を保育補助として配置することで保育士の業務負担を軽減し、保育士の離職防止を図る狙いがあります。

子育て支援員採用保育園の事例紹介

子育て支援員採用保育園の事例紹介についての説明画像

ここからは、実際に子育て支援員を採用している保育施設の事例を紹介いたします。

ケース1:宮城県仙台市 認可保育園

子育て支援員を雇用している仙台市の認可保育園を経営する理事長先生にお話を聞きました。

理事長

保育士が不足しており、業務の負担過多の影響で保育士の退職が続くという負のスパイラルを脱出するために、子育て支援員の雇用を行いました。
子育て支援員は、保育士ではないため通常の時間帯で配置基準に含むことはできませんが、午睡の準備や、保育日誌の記入製作や行事の準備を子育て支援員に担ってもらうことで、保育士の勤務環境を改善することができました。
現在働いている子育て支援員は、保育士を目指しているため資格取得後は保育士として引き続き園で勤務していただきたいと考えています。

ケース2:埼玉県さいたま市 小規模保育園

埼玉県さいたま市の子育て支援員を採用している小規模保育事業所の園長にお話を聞きました。

園長

当園は、さいたま市が実施している保育士等の職員配置の特例を適用しています。園児が少ない朝の時間帯に最低必要な保育士等2名のうち1名を子育て支援員に代えて配置しています。
子育て中の保育士もおり、朝の時間帯にシフトに入れる職員がおらず、困っていたのですが子育て支援員を配置することで運営ができています。この特例制度時限的なものであるため、保育士資格の取得を希望している子育て支援員を採用しました。

さいたま市の保育士等の職員配置の特例についてはこちらから詳細をご確認くださいませ。

子育て支援員雇用/導入の保育園経営上の注意点

子育て支援員雇用/導入の保育園経営上の注意点の説明画像

ここでは、子育て支援員を雇用する際の保育園経営上の注意を説明します。

子育て支援員の役割はあくまでも補助的な業務

子育て支援員は、国で定められた研修を受講することによって「保育や子育て支援分野の各事業等に従事する上で必要な知識や技術等を修得したと認められる者」ではありますが、国家資格である保育士が必要配置基準として定められている場合に、子育て支援員に代えることはできません(特例を除く)。

そのためあくまでも補助的な業務を担う役割です。保育補助者雇上強化事業等の補助金の交付を受けない場合は、子育て支援員は公定価格の配置基準に含まれないため、法人の持ち出しで雇用していることになります。

子育て支援員を多く雇用していて人件費を圧迫しているという事例もあるため、子育て支援員を採用する際はあくまでも補助的な役割という認識の上、経費面を考慮することも重要です。

採用の際には慎重な判断が必要

子育て支援員は、地域において保育や子育て支援等の仕事への関心があり、保育施設での従事希望の方が研修を受けます。
そのため、ご自身の子育てが一段落した方が保育分野に興味を持ち、就労を希望されるというケースも多いです。
子育ての経験豊富な人材の確保が出来るため、園にとってもプラスの要素が多いです。

しかしそもそも保育士不足が課題の園では、子育て支援員の配置が認められている特例制度は、いつか法が改正される可能性があるため、保育士資格の取得を希望している子育て支援員の方を採用することをおすすめします。採用の際には慎重に判断しましょう。

子育て支援員についてよくある質問

子育て支援員についてよくある質問の説明画像

ここからは、子育て支援員についてよくある質問に回答します。

Q
子育て支援員は国家資格ですか?それとも民間資格ですか?
A

子育て支援員は厳密にいうと資格ではなく、国で定めた研修を修了したと認められた人が「子育て支援員」として認定されます。
そのため保育園等では、子育て支援員は保育士の補助としての役割を担うことが多いです。

Q
子育て支援員研修はどれ位の時間が掛かりますか?
A

子育て支援員研修は、「基本研修」と各事業の特性に応じた「専門研修」によって構成されています。「基本研修」は8時間ですが、「専門研修」は選択するコースによって5.5時間~24時間です。またコースによっては、2日以上の見学実習が必要な場合もあります。


子育て支援員研修についてはこちらの記事で詳しくまとまております。
関連記事:【最新版】子育て支援員資格の完全ガイド!取得方法から仕事内容まで徹底解説

Q
子育て支援員が働ける場所について教えて下さい。
A

子育て支援員は、保育所小規模保育事業所企業主導型保育事業の他にもファミリー・サポートセンター一時預かり放課後児童クラブ地域子育て支援拠点等の事業で働くことができます。また、障害児支援の指導員等、幅広い事業で活躍できます。

保育園・幼稚園・こども園経営のご相談なら幼児教育・保育専門コンサルティング会社いちたすへ

いちたす事務所画像

保育園・こども園・幼稚園を経営するうえで、お困りのことがありましたら株式会社 いちたすへお気軽にお問合せください。
今後どのように運営していけばよいか、給付費(委託費)や補助金はしっかりと取れているのかといった経営・財務に関するご相談から、保育士・職員に外部研修を行ってほしい等の人材育成に関するご相談まで、幅広くご支援しています。

いちたすについて

いちたすについて説明画像

株式会社 いちたすでは、保育園・こども園・幼稚園の経営者の皆様に対して、経営・運営・財務に関するコンサルティングを専業で行っています。

会計事務所として、日常の会計の確認、記帳代行を行ってもいますので、保育所のバックオフィス業務書類関係全般のご支援もしています。幼稚園・保育所・こども園の税務・労務に精通した税理士法人・社会保険労務士事務所とも提携しています。

「会計事務所は法人設立からお世話になっているから変えたくない」というお声を頂きます。
そのような場合は、会計・税務ではなく、

  • 委託費の加算の取りこぼしがないか、第三者に確認してもらいたい。
  • 認定こども園への移行を考えているが、何から手を付ければよいかわからない
  • 処遇改善をどのように取り入れていけばよいか、他園がどのように行っているかを知りたい。

などのお悩みに対してご支援・コンサルティングを行う顧問(相談)契約もあります。こちらは、セカンドオピニオンのようにお使いいただくことも可能です。

料金プラン

いちたすの料金プラン説明画像

株式会社 いちたすでは、定期的な顧問契約から、スポット(単発)での委託費の確認、申請書類の確認なども行っております。

たとえば相談契約、コンサルティング契約ですと

保育園の顧問(相談)契約の場合(1施設)

月額22,000円~
(税込)
保育園のコンサルティング契約(月1回1時間の打ち合わせあり)の場合(1施設)

月額55,000円~
(税込)

で引き受けております。

「複数施設を運営しているが本部で契約したい」「打ち合わせは2か月に1回でよい」など、オーダーメイドでご契約内容を作成いたしますので、お気軽にご連絡ください。

依頼の流れ

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お問合せフォームかinfo@ichitasu.co.jp宛にメールをお送りください。
詳しい内容をお伺いいたします。

その後は、

その後の流れ
  • 当社の担当者が園にお伺いする
  • 当社事務所(仙台市一番町)にお越しいただく
  • Zoomなどを利用してオンラインで打ち合わせをする

といった形で、具体的にどのようなご支援が出来るのかを打ち合わせいたします。

園によって状況は様々ですが、

など、ご要望に合わせてご提案いたします。
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