新規事業として幼稚園・保育園・認定こども園を経営され始めた方や、事業承継などで園の経営に関わるようになった方から、多くご質問を頂く「1号認定」「2号認定」「3号認定」について、経営者が知るべき基礎知識を解説しました!
「支給認定」について保護者向けに解説している記事はあっても、保育施設経営者向けに解説した記事はあまりないのではないでしょうか?

本記事では、認定区分に関する基礎知識はもちろん、経営者が考えるべき1号・2号・3号認定のポイントも解説しています。

認定区分は公定価格の単価表に関係し、特に認定こども園では、「1号認定」と「2号・3号認定」の利用定員の考え方が収入に大きな影響を与えます。

  • 認定こども園、新制度幼稚園への移行を検討中
  • 新園舎建設を検討中
  • 近年、園児減少により収入が減ってきた

このような方は必見の記事となっておりますので、ご一読いただけますと幸いです。

この記事を監修した人

中小企業診断士:大窪 浩太

関西の税理士法人にて公益法人に対して決算・申告書作成、財務コンサルティングを担当。 2017年、同税理士法人の仙台支店に転勤。 2019年7月に税理士法人を退職後、株式会社いちたすに参画。
得意分野:幼稚園・保育園・認定こども園の経営・財務コンサルティング。 少子化がますます進む東北で、今後数十年、安定して運営していける園づくりの支援を行う。 新規園の設立や代表者の代替わりなどの際は、法人に入り込んで、伴走型の支援を行うこともある。
宮城県中小企業診断協会所属

1号・2号・3号認定の基礎知識

1号・2号・3号認定の基礎知識の説明画像

ここでは、幼稚園・保育園・こども園経営に関係する1号・2号・3号認定の基礎知識について解説します。

そもそも「認定」とは?

平成27年4月から開始された「子ども・子育て支援制度」にて、幼児教育・保育施設を利用する子どもの保護者は、市町村の客観的基準に基づき「支給認定」を受けることとなりました。

この「支給認定」は3区分に分かれており、以下の基準で区分されます。

  • 子どもの年齢(3歳未児・3歳以上児)
  • 保育の必要性の有無
  • 保育の必要量(保育標準時間・保育短時間)

それぞれの区分の詳細については、後ほど説明します。

利用施設別に必要な認定が異なります

一口に幼児教育・保育施設と言っても、その中には保育所・幼稚園・認定こども園・小規模保育施設等といった施設類型が様々あります。認定区分により、利用できる施設が異なります。

認定区分利用できる施設類型
1号認定幼稚園・認定こども園
2号認定保育園・認定こども園
3号認定保育園・認定こども園・地域型保育(小規模保育施設等)
支給認定区分ごとの利用可能な施設類型

新制度に移行していない幼稚園では、支給認定を受けていなくても利用することが可能です。

幼稚園・保育園では利用できる認定区分が限られているのに対し、認定こども園では1~3号のどの認定区分でも入園することができます
認定こども園については、以下の記事で詳しく解説しています。
参考記事:【2024年最新版】こども園について経営者が知るべき3つのポイント
参考記事:【2024年最新版】認定こども園移行をお考えの経営者が知っておくべき3つのポイント

いちたす:松嶋

子どもの母数がどんどん減少していく中、幼稚園・保育園では利用できる認定区分が限られるため、園児募集においても影響を受けます。
一方、認定こども園では1号~3号の子どもを対象とすることができます。園児募集の間口が広がることは認定こども園に移行するメリットの一つです。

新2号認定等新たな認定もスタートしています

認定こども園や幼稚園を経営されている事業者の方は「新2号認定」という言葉に馴染みがあるかもしれません。

「新2号認定」とは、令和元年10月に「幼児教育・保育の無償化」がスタートしたことによってはじまった新たな認定区分です。

幼稚園の預かり保育や認可外保育施設を利用される方が「幼児教育・保育の無償化」の対象となるには、認定を受ける必要があります。
「新2号認定」については、追って詳しく説明いたします。

1号・2号・3号認定それぞれの詳細

ここまでは、支給認定ついての基礎知識を確認しました。
ここからは1号・2号・3号認定それぞれの詳細を解説していきます。

認定区分のフローチャート
(出典:こども家庭庁 よくわかる「子ども・子育て支援新制度」

1号認定とは?

1号認定とは?の説明画像

1号認定は「教育標準時間認定」と言われることもあります。

  • 子どもの年齢が3~5歳
  • 保育を必要とする事由」に該当しない場合

に受ける認定です。「保育を必要とする事由」については、以下の2号認定で詳しく解説いたします。

1号認定の場合は保育の必要性が無いと判断されるため、施設によっても異なりますが教育標準時間は約4時間程度と、2号・3号認定と比べて施設の利用時間は短く設定されています。

また2・3号認定と違い、1号認定は保護者が直接施設に利用申し込みを行い、施設が市町村に認定を申請します。

保育園では1号認定の子どもをお預かりすることはできません
また幼稚園を利用できるのは1号認定の方のみのため、共働きの保護者の方が幼稚園の利用を希望されている場合は1号認定を受けていただく必要があります。
(後ほど出てくる「保育の必要性」の認定を受けることが出来れば「新2号認定」という扱いになります)

2号認定とは?

2号認定とは?の説明画像

続いては2号認定です。2号認定は3号認定と合わせて「保育認定」と呼ぶこともあります。

  • 子どもの年齢が3~5歳
  • 保育を必要とする事由」に該当する場合

に受けることができる認定です。
保育を必要とする事由」とは以下の項目を言います。

保育を必要とする事由

次のいずれかに該当することが必要です。

  • 就労(フルタイムのほか、パートタイム、夜間、居宅内の労働など)
  • 妊娠、出産
  • 保護者の疾病、障害
  • 同居又は長期入院等している親族の介護・看護
  • 災害復旧
  • 求職活動(起業準備を含む)
  • 就学(職業訓練校等における職業訓練を含む)
  • 虐待やDVのおそれがあること
  • 育児休業取得中に、既に保育を利用している子どもがいて継続利用が必要であること
  • その他、上記に類する状態として市町村が認める場合

(出典:こども家庭庁 よくわかる「子ども・子育て支援新制度」

2号認定を受ける場合は上記の事由に該当することが必要なため、認定の申請保護者市町村に行います
市町村の審査後、保護者に「支給認定証」が交付され、保護者の希望や状況・施設の状況等を考慮し利用調整が行われます。

3号認定とは?

3号認定とは?の説明画像

3号認定は、

  • 子どもの年齢が0~2歳
  • 保育を必要とする事由」に該当する場合

に受ける認定区分です。
保育を必要とする事由」は2号認定と同じで、2号認定との違いは子どもの年齢です。

また、2号認定と3号認定には「保育の必要量」の区分もあります。

保育の必要量

保育を必要とする事由や保護者の状況に応じ、次のいずれかに区分されます。

  • 保育標準時間」 認定=最長11時間(フルタイム就労を想定した利用時間)
  • 保育短時間」認定=最長8時間(パートタイム就労を想定した利用時間)

(出典:こども家庭庁 よくわかる「子ども・子育て支援新制度」

保育施設を利用する方の認定区分を確認する際は、この「保育の必要量」の確認も重要です。

新2号認定とは?

新2号認定とは?の説明画像

さて、新2号認定は「幼児教育・保育の無償化」がスタートしたことによってはじまった新たな認定区分であるとお伝えしましたが、具体的にどんな方が対象となるのでしょうか?

共働き家庭で幼稚園を利用されている保護者の方は、預かり保育を利用している場合が多いかと思います。
幼児教育・保育の無償化は、預かり保育も対象となりますが、それには「保育の必要性」の認定を受ける必要があります。

この預かり保育を無償化の対象とするために受ける認定のことを「新2号認定」といいます。
新2号認定を受けるためには「2号認定とは?」の部分に記載の「保育を必要とする事由」に該当する必要があります。

保育園経営者が考えるべき1号・2号・3号認定のポイント

保育園経営者が考えるべき1号・2号・3号認定のポイントの説明画像

ここまで、1号・2号・3号認定の基礎知識を確認してきました。
ここからは、幼保業界の経営者が知るべき認定のポイントについて解説します。

認定区分は施設の収入に影響する?

なぜ、保育園経営者は1号・2号・3号認定について知るべきなのか? 
それは利用している園児の認定区分が、保育園の収入に大きく関係するためです!

ご存知の方も多いかと思いますが、この認定区分は園の収入を考える際に重要な公定価格でも登場します。

令和5年度公定価格単価表 認定こども園(教育標準時間認定)の説明画像
令和5年度公定価格単価表 認定こども園(教育標準時間認定)
令和5年度公定価格単価表 認定こども園(保育認定)の説明画像
令和5年度公定価格単価表 認定こども園(保育認定)

認定区分、保育の必要量区分(保育標準時間・保育短時間)は収入を計算する際にも押さえておくべきポイントです。

公定価格については、こちらの記事で詳しく解説しています。
参考記事:【令和6年最新版】保育園の公定価格について経営者目線で7分で解説

いちたす:松嶋

上段で「新2号認定」について解説しましたが、公定価格の単価表において「新2号認定」は「1号認定」なのでしょうか、それとも「2号認定」なのでしょうか?
正解は…「1号認定」です。公定価格の単価表では、「新2号認定」という認定区分はないため、「1号認定」の単価が適用されます。

自分の園に最適な利用定員は? 現在の利用定員は最適?

認定こども園を経営されている皆様の園では、1号認定(教育標準時間認定)2号・3号認定(保育認定)利用定員は最適でしょうか?
実は、園全体での利用定員は同じでも1号認定と2号・3号認定のバランスを変更するだけで、園の収入が大きく変わる場合もあります。(保育園幼稚園においても利用定員の設定は園の収入に大きく影響するため、ぜひ読み進めていただければと思います。)

それは、利用定員によって公定価格の単価が異なるためです。

公定価格の単価は定員区分があり、定員が少ない方が単価が高く設定されています。
そのため、1号認定と2号・3号認定の定員をバランスよく設定するよりも、教育認定の利用定員を少なくした方が施設型給付費は高くなります。
以下は、定員75人の認定こども園(所在地:宮城県仙台市)の収入試算パターンです。

1号15人、2・3号60人1号35人、2・3号40人
約1億2,500万円約1億900万円
認定こども園年間収入試算(こども家庭庁 公定価格の試算ソフト(令和4年度版)より作成)
※それぞれ利用定員通り園児が入園したとし、取得加算も同じ条件で計算。

上記の表のように、同じ利用定員でも認定区分ごとの定員を変更するだけで約1,600万円の差が出ます。
保育認定の園児をお預かりした方が保育時間は長いため、シフトをまわすための職員の確保は必要ですが、必要配置基準の職員数は同じです。

もちろん法人の理念地域の実情行政の意向等により、認定区分ごとの利用定員設定も変わってきますが、園児数減少により収入が減ってきているという施設は、一度利用定員が最適が検討してみてはいかがでしょうか。

事業規模を拡大したい場合の利用定員の考え方

上段では認定こども園の1号認定、2号・3号認定の利用定員のバランスについて解説しましたが、事業規模を拡大したい場合の利用定員の考え方のポイントをお伝えします。

利用定員の考え方のポイント(事業規模拡大版)
  • 考えられる全ての定員パターンで収入の試算を行う
  • 法人の理念目指す姿を明確にする
  • 保護者・地域のニーズを把握する
  • 定員検討と同時に必要職員数の計算も行う
  • 定員の変更が可能か行政に相談しておく

利用定員は頻繁に変えられるものではないため、慎重に検討しなければなりません。
また、現在の認定区分ごとの利用定員と、変更したい認定区分ごとの利用定員に大きな差がある場合は進級園児について考慮しつつ、新入園児を計画的に募集する必要があります。

いちたす:松嶋

利用定員の変更は、法人の目指す姿・職員数・地域のニーズも影響するため外部の専門家と一緒に検討することをおすすめいたします。弊社でもご支援しておりますのでお気軽にお問い合わせください。

1号認定は、園の人気の指標になる

2号・3号認定(保育認定)は、保護者が市町村に支給認定申請を行い、各施設への入園の割り振りを行うのは市町村になります。市町村は保護者の希望はもちろんですが、保育の必要性の程度によっても利用調整を行うことがあります。

一方で1号認定(教育標準時間認定)保護者が直接、施設へ利用申し込みを行います。そのため、1号認定の利用者数は、園の人気を図る一つの指標と言えます。

保育所型の認定こども園でも、1号認定の園児を預かると、同じ職員数でも取得できる加算が増えると収入が大きく変わります。これまで保育園だったため園児募集を大々的に行っていなかった、という施設でも1号認定の募集を積極的に行ってみてはいかがでしょうか。

1号・2号・3号認定についてよくあるご質問

1号・2号・3号認定についてよくあるご質問についての説明画像

ここでは、幼保業界の経営者様からよくいただく、1号・2号・3号認定についてのご質問に回答します。

Q
今後事業規模拡大を考えているのですがどの利用定員が最適か分かりません。
A

最適な利用定員は、法人の目指す姿・職員数・地域のニーズ等が影響するため、施設によって異なります。利用定員によって収入が変わりますが、必要な職員数も変わります。
そのため、収入が上がったものの、人件費も上がり、結果としてあまり資金を残せなかったというパターンもあります。外部の専門家の手を借りながら利用定員の検討を行うことをおすすめいたします。

Q
現在の1号・2号・3号認定の利用定員が正しいかどうか判断してもらう事は可能でしょうか?
A

もちろん可能です。弊社では、定員パターンの収入試算をはじめ、必要配置職員数、取得可能な加算等、施設に最適な利用定員の検討をご支援しております。まずは、お気軽に無料相談をご利用くださいませ。

保育園・幼稚園・こども園経営のご相談なら幼児教育・保育専門コンサルティング会社いちたすへ

いちたす事務所画像

保育園・こども園・幼稚園を経営するうえで、お困りのことがありましたら株式会社 いちたすへお気軽にお問合せください。
今後どのように運営していけばよいか、給付費(委託費)や補助金はしっかりと取れているのかといった経営・財務に関するご相談から、保育士・職員に外部研修を行ってほしい等の人材育成に関するご相談まで、幅広くご支援しています。

いちたすについて

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株式会社 いちたすでは、保育園・こども園・幼稚園の経営者の皆様に対して、経営・運営・財務に関するコンサルティングを専業で行っています。

会計事務所として、日常の会計の確認、記帳代行を行ってもいますので、保育所のバックオフィス業務書類関係全般のご支援もしています。幼稚園・保育所・こども園の税務・労務に精通した税理士法人・社会保険労務士事務所とも提携しています。

「会計事務所は法人設立からお世話になっているから変えたくない」というお声を頂きます。
そのような場合は、会計・税務ではなく、

  • 委託費の加算の取りこぼしがないか、第三者に確認してもらいたい。
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などのお悩みに対してご支援・コンサルティングを行う顧問(相談)契約もあります。こちらは、セカンドオピニオンのようにお使いいただくことも可能です。

料金プラン

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たとえば相談契約、コンサルティング契約ですと

保育園の顧問(相談)契約の場合(1施設)

月額22,000円~
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