2022年の出生数が過去最低を記録したことが大きなニュースとなりましたが、2023年はさらに出生数の減少が見込まれているのはご存知でしょうか?

本記事では、2023年の少子化最新情報から、少子化が幼児保育経営こども園・認可保育所・幼稚園・小規模保育所・企業主導型保育事業等の経営)に与える影響、そしてその対策4つについて解説しています。

幼稚園経営については、こちらの記事もご覧ください。
関連記事:【2024年最新版】幼稚園経営者が知るべき経営難を生き抜く5つのポイント

2023年:我が国の少子化の現状

2023年:我が国の少子化の現状についての説明画像

皆様もご存知の通り、少子化とは出生率の低下や子ども数が減少傾向にあることを言います。
人口学では、合計特殊出生率が、人口を維持するのに必要な水準(日本では2.08前後)を相当期間下回っている状況を「少子化」と定義しています。(出典:厚生労働省 少子化社会白書

ここでは、少子化の最新情報と影響を受ける地域について解説します。

2023年の少子化最新情報

厚生労働省が速報値として発表した2022年の出生数は、初めて80万人を割り込み、過去最低となりました。
また、2022年の合計特殊出生率は「1.26」でこちらも過去最低の記録です。
国立社会保障・人口問題研究所では、2030年に80万人を下回ると予測していましたので、想定より8年も早いペースで子どもの数が減少しています。

出生数「80万人割れ」のニュースについてはこちら
参考記事:【園児獲得に影響有】2022年出生数初の「80万人割れ」ニュースをいちたす独自解説

2023年はと言うと、2023年1月~3月までの出生数の速報値は18万2477人でした。2022年1月~3月は19万2211人だったため、5.1%の減少です。このペースで推移すれば、過去最低の出生数となった2022年よりもさらに出生数が減少することが予想されます。

(出典:厚生労働省 人口動態統計速報(令和5年3月分)

中小企業診断士:大

令和4年度の園児募集で、新入園の園児数が減少してしまった園は多いのではないでしょうか。
2022年の出生数が過去最低でしたが、2023年の出生数はこのまま進むと2022年よりも少なくなる可能性が高いです。この出生数の減少は、数年後の園児募集に間違いなく影響を与えることになるため、今すぐの対策が必要になります。

少子化の影響を早い段階で受ける(受けている)地域

それでは、少子化の影響を既に受けている地域はどこでしょうか。
人口動態調査」から出生数、「社会福祉施設等調査」から保育所等(地域型保育事業所数含む)の利用児童数を抽出しました。以下は、出生数の減少率が特に高い5県です。

都道府県出生数
(R1)
出生数
(R2)
出生数の
増減率
利用児童数の増減率
(R2→R3)
香川県26,519人23,223人-6.8%8.0%
山口県52,058人47,018人-6.5%12.4%
栃木県23,919人21,999人-6.3%+1.4%
奈良県62,210人57,964人-5.9%+0.4%
岐阜県157,939人148,009人-5.4%+3.3%
都道府県別 出生数(減少率が高い5県)

(出典:人口動態調査社会福祉施設等調査

香川県山口県は、出生数の減少により、保育所等の利用児童数大幅に減少しているため少子化の影響を既に受けていると言えます。

一方で、同じく出生数が減少している栃木県奈良県岐阜県の保育所等の利用児童数増加しています。これは、1・2歳児の保育利用率が影響していることが考えられます。
以下のグラフを見ていただくとよく分かるのですが、女性の就業率が低い都道府県は1・2歳児の保育利用率も低い傾向があります。

女性就業率(25~44歳)と1・2歳児保育利用率の都道府県別状況の解説グラフ画像
女性就業率(25~44歳)と1・2歳児保育利用率の都道府県別状況

(出典:厚生労働省 令和3年5月 保育を取り巻く状況について )

栃木県奈良県岐阜県は、1・2歳児保育利用率50%以下であり、出生数が減少しても女性の就業率が上がるに連れて、保育ニーズ高まる可能性があります。

逆に1・2歳児保育利用率が既に70%を超えている島根県高知県福井県秋田県少子化の影響大きく受けることが考えられます。

中小企業診断士:大窪

本記事では、都道府県別に解説していますが、同じ都道府県でも市町村や地域によって状況は異なります。運営している保育施設の地域では、どのような傾向があるでしょうか?
出生数が減少していても、0~2歳児の保育利用率が低い地域では、これから保育ニーズが見込まれる可能性もあります。

少子化による幼児保育経営の3つの影響

少子化による幼児保育経営の3つの影響についての説明画像

ここでは、幼児保育経営に係る少子化の影響3つを解説します。

少子化による幼児保育経営の3つの影響
  1. 園児数減少
  2. 過剰な保育施設の減少(競争の激化)
  3. 保育士の人数確保(人気のある園に集中)

それぞれ、詳しく見ていきます。

影響①園児数減少

少子化による影響の一つ目は、園児数減少です。
数年前までは0歳児クラスは満員が当たり前だったのに、今年度は希望者が少なかった」と頭を抱えている経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?

以下の表は、厚生労働省が発表した「年齢区分別の就学前児童数に占める保育所等利用率」を示したものです。

年齢令和4年4月令和3年4月
0歳児144,835人(17.5%146,361人(17.5%
1・2歳児986,090人(56.0%958,974人(53.7%
3歳児以上児1,628,974人(57.5%1,636,736人(56.0%
年齢区分別の就学前児童数に占める保育所等利用児童数の割合(保育所等利用率)

(出典:厚生労働省 保育所等関連状況取りまとめ(令和4年4月1日

注目していただきたいのは、0歳児の保育所等利用率です。
0歳児以外の年齢では、利用率が上昇していますが、0歳児のみ横ばいという結果になっています。
保育所等利用率が横ばいであっても、分母となる児童数は減少していますので利用児童数も減少していきます。

保育園の場合、0歳児の入園が少ないと、卒園するまでの間(最大6年間)収入減少が続いてしまう恐れがあります。

中小企業診断士:大窪

園児募集に失敗してしまうと、その影響は、単年度にとどまらず、その後数年間、最大で6年間は影響を受け続ける可能性があります。
地域によって、「0歳児から預ける保護者が多い」「1歳児、2歳児から預ける保護者が多い」など違いはありますが、共通して言えることは4歳児、5歳児の入園が、とても少なくなってきているということです。
以前は2歳まで保育園に通園して、3歳から幼稚園に転園する、という動きもありましたが、こども園が出来て、ぐっと少なくなったと感じています。
保育園では0・1・2歳幼稚園では満3歳・3歳での入園がうまくいかないと、その後に挽回することは非常に難しくなっています

影響②過剰な保育施設の減少(競争の激化)

待機児童が大きな問題となり、その解消のために保育施設急増しました。
それは厚生労働省が公表されている資料からも読み取ることができます。

保育所等数の推移のグラフ解説画像
保育所等数の推移(出典:厚生労働省 保育所等関連状況取りまとめ(令和4年4月1日

一方で利用児童数は、減少しています。
利用児童数は減少傾向にありますが、利用定員数は増加しているため、定員充足率は低下しています。

利用児童数定員充足数
令和2年2,737,359人92.2%
令和3年2,742,071人90.9%
令和4年2,729,899人89.7%
保育所等の利用児童数等の状況

待機児童が解消傾向にあり、保護者が保育施設を選ぶことができるようになることは社会的にも良いことですが、保育園経営者にとっては厳しい時代になりつつあります。
出生数が増えていれば受け入れる余地もありますが、このまま少子化が続けば園児獲得競争が激しくなっていきます。

中小企業診断士:大窪

定員充足数が、毎年約1%ずつ下がっているのは、園経営を考えるうえではとても怖いことです…。

影響③保育士の人数確保(人気のある園に集中)

保育士不足が大きな課題となっていますが、実は、保育所等で働く保育士数は増加しています。
以下は、厚生労働省が調査した「保育士の登録者数と従事者数の推移」を表したグラフです。

保育士の登録者数と従事者数の推移の解説グラフ
保育士の登録者数と従事者数の推移(出典:厚生労働省 保育を取り巻く状況について

登録者数も従事者数も増えている一方で、「保育士資格を保有しているものの保育所等で働いていない保育士」も増えています。
これに加えて、上述のように保育施設数は増え、利用定員数も増えているため必要となる保育士の数も増加の一途をたどっています。

さらに、これからは日本全体で生産年齢人口が減少していきます。
保育士が人気のある園に集中したり、他の業種に流れてしまったりすることが考えられます。

幼児保育経営観点での4つの少子化対策

幼児保育経営観点での4つの少子化対策についての説明画像

ここまでは、少子化による幼児保育経営の3つの影響を解説しました。
ここからは、幼児保育経営における少子化への対策4つを紹介します。

幼児保育経営観点での4つの少子化対策
  1. 園の特徴、力を入れていることの発信
  2. 発達支援への新たな取り組み
  3. 民間移管の検討
  4. 先生のキャリアプランの構築、研修制度構築に取り組む

人口推計からも、少子化・利用児童数の減少は避けられませんが、園として何も対策が出来ないというわけではありません。詳しく解説していきます。

対策①園の特徴、力を入れていることの発信

園では、子どもたちの育ちのために様々なことを行っていると思いますが、その思いや行動は保護者に伝わっているでしょうか?
園では一生懸命行っていることでも、保護者に伝わっていないことは意外とあります。

また毎日通っている園の保護者には伝わっているかもしれませんが、園に通っていないお子さんの保護者地域の方には、ほとんど伝わっていないことも考えられます。

園の保育を伝えていくことに、これまで以上に力を入れていかなければなりません。
ホームページはもちろん、Instagram等のSNSを運用するなど、園の情報発信に新しい試みを実行することも必要です。

中小企業診断士:大窪

貴法人では園の特徴を言語化できているでしょうか? 園の強み、力を入れていることを言語化し保護者や地域の方に伝えていくことが他園との差別化につながります。
当社では、保育園におけるブランディング支援を行っております。園児募集でお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。

対策②発達支援への新たな取り組み

グレーゾーンの園児が増えてきており、児童発達支援への取り組みが重要視されています。

子どもの出生数は減少傾向にある一方で、児童発達支援利用児童数平成26年度から令和元年度約3.3倍になっています。(出典:厚生労働省 児童発達支援事業の現状と課題について
そのため、児童発達支援事業所として未就学の障害のある子どもへの支援のニーズが高まっています。

とはいえ、児童発達支援施設には「児童発達支援管理責任者」などの専門的な資格を持つスタッフや、専門的な研修を受けた保育士の配置等が必要です。

ここで大切なのは、発達支援への取り組みは収入確保の方策ではなく、園として発達支援への強い気持ちがあるのが前提です。

中小企業診断士:大窪

発達支援への取り組みは、収入アップの一つの方法として、よく上げられますが、施設型給付費や委託費ではなく、障害児通所支援という、まったく別の事業になります。
施設型給付費の請求や補助金事業の請求を市町村に対して行うのとは異なり、発達支援関連の事業では、国保連(国民健康保険連合会)へ請求することになります。
児童発達支援に新しく取り組む際は、「事業多角化の一つ」ではなく、「発達支援への思い」が大事になってくると感じています。

対策③公立園の民間移管

これまでは一つの園のみ運営していた法人は、複数の園運営して法人の経営安定させるという方策があります。
しかし、待機児童が解消している地域では新規園設立抑制されていることが多く、新たに園を作ることは難しいです。

新規園の設立は難しいですが、公立園民間移管は今後も続いていく可能性が高いです。
多くの自治体で、公立保育園の運営費の削減、施設が老朽化している等の理由で公立保育園の民営化を進めています。

そこで、公立園の民間移管に手上げをし、民営化を受託することで法人としての園を増やすことができます。

中小企業診断士:大窪

公立園の民営化では、これまでの実績や園運営のノウハウがとても重要になってきますので、すでに園を運営されている方にとっては、有利な条件で申請をすることが出来ます。
(プロポーザル形式がほとんどなので、書類準備・対応の負担は大きいですか…)

対策④先生のキャリアプランの構築、研修制度構築に取り組む

処遇改善等加算Ⅱを取得されている園では、役職やそれに伴う責任といった、先生方のキャリアプランを整備されているかと思いますが、「これからもっとキャリアプラン構築に力を入れていきたい」というお話を、よくお聞きします。

保育士の先生方のキャリアプランや研修制度が構築されている園は、人気なため求人にも有利ですし、離職少ない傾向があります。
そのため、より質の高い人材を集めることができ、配置基準より多く有資格者配置することも可能です。

配置基準より多く有資格者を配置することで保育の質も上がり、周りの園と差別化を図ることができます。

中小企業診断士:大窪

東京のある法人では、国の基準の2倍以上の保育士を配置することで大きな話題となっています。
保育士にとっても働きやすい環境であることは間違いないですし、子どもたちにとっても遊べる範囲が拡がり、また保護者にとっても安心ですよね。保育士の応募が増えることはもちろん、子ども・保護者にとっても人気の園になるのではないでしょうか。

少子化で悩む保育園・幼稚園経営者の生の声

少子化で悩む保育園・幼稚園経営者の生の声についての説明画像

ここでは、少子化でお悩みの保育園・幼稚園経営者の方の生の声をお届けします。

福島県 学校法人 理事長様 の少子化での経営の悪影響の声

A理事長先生は、福島県の学校法人で幼稚園を経営されています。

A理事長

園児募集に大苦戦

やはり、少子化の影響で園児が集まらなくなり、園児募集苦戦していますね。今までは、大々的に園児募集活動を行わなくても申込があったのですが、最近では…。

昨年度からは、今までやっていなかったSNSで園の情報発信を行うようにしたところ、徐々にですが園見学の申込も増えてきました。うちの園でしかやっていない事を発信して、入園につなげていきたいですね。

山形県 社会福祉法人 理事長様 の少子化での経営の悪影響の声

B理事長先生は、山形県の社会福祉法人で保育園を経営されています。

B理事長

園児減少により、収入もダウン

少子化により地域の子どもの数が減少したことで、園児募集が厳しくなっています。特に単価の高い0歳児の申し込みが年々少なくなっており、園の収入にも大きな影響を受けています。

このままでは、淘汰されかねないので他園との差別化を図るために、認定こども園への移行を検討しています。こども園に移行し、教育の部分にも力を入れるていることをアピールすることで地域で選ばれる園にしたいと思っています。

保育園・こども園・幼稚園の経営でお困りの方はいちたすへご相談を

いちたす事務所画像

保育園・こども園・幼稚園を経営するうえで、お困りのことがありましたら株式会社 いちたすへお気軽にお問合せください。
今後どのように運営していけばよいか、給付費(委託費)や補助金はしっかりと取れているのかといった経営・財務に関するご相談から、保育士・職員に外部研修を行ってほしい等の人材育成に関するご相談まで、幅広くご支援しています。

いちたすについて

株式会社 いちたすでは、保育園・こども園・幼稚園の経営者の皆様に対して、経営・運営・財務に関するコンサルティングを専業で行っています。

会計事務所として、日常の会計の確認、記帳代行を行ってもいますので、保育所のバックオフィス業務書類関係全般のご支援もしています。幼稚園・保育所・こども園の税務・労務に精通した税理士法人・社会保険労務士事務所とも提携しています。

「会計事務所は法人設立からお世話になっているから変えたくない」というお声を頂きます。
そのような場合は、会計・税務ではなく、

  • 委託費の加算の取りこぼしがないか、第三者に確認してもらいたい。
  • 認定こども園への移行を考えているが、何から手を付ければよいかわからない
  • 処遇改善をどのように取り入れていけばよいか、他園がどのように行っているかを知りたい。

などのお悩みに対してご支援・コンサルティングを行う顧問(相談)契約もあります。こちらは、セカンドオピニオンのようにお使いいただくことも可能です。

料金プラン

株式会社 いちたすでは、定期的な顧問契約から、スポット(単発)での委託費の確認、申請書類の確認なども行っております。

たとえば相談契約、コンサルティング契約ですと

保育園の顧問(相談)契約の場合(1施設)

月額22,000円~
(税込)
保育園のコンサルティング契約(月1回1時間の打ち合わせあり)の場合(1施設)

月額55,000円~
(税込)

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「複数施設を運営しているが本部で契約したい」「打ち合わせは2か月に1回でよい」など、オーダーメイドでご契約内容を作成いたしますので、お気軽にご連絡ください。

依頼の流れ

お問合せフォームかinfo@ichitasu.co.jp宛にメールをお送りください。
詳しい内容をお伺いいたします。

その後は、

その後の流れ
  • 当社の担当者が園にお伺いする
  • 当社事務所(仙台市一番町)にお越しいただく
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といった形で、具体的にどのようなご支援が出来るのかを打ち合わせいたします。

園によって状況は様々ですが、

など、ご要望に合わせてご提案いたします。
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