保育の現場では、ロジカルシンキングという言葉が出てくることは少ないかもしれません。
ですが、以下のようなお話を、経営層の方からお聞きすることがあります。

現場から要望が上がってきたんだけど、話をしているうちにいろいろな話に飛んでしまい、結局何が言いたいのかわからなかった…。
このような課題に思い当たる園もあるのではないでしょうか。じっくりと話を聞くことが必要なことはもちろん多いと思いますが、ロジカルシンキングの考え方を取り入れていくと、園運営がスムーズになるかもしれません。
論理的に考えることで、「本当は何に困っているのか」「保護者トラブルの本当の原因は何なのか」といったことをつかめるようになり、よりよい園にしていく、大きなきっかけとしていくこともできるようになります。
- 報告内容に漏れがなくなる
- トラブル対処などの問題解決能力が高まる
- 職員間や保護者とのコミュニケーションが円滑になる
ただ、「ロジカルシンキング」と聞くと、大げさな感じがして
- 「どのように園に取り入れていけばよいのか」
- 「どのような効果が期待できるのか」
といった疑問を持たれるのではないでしょうか。
本記事では、ロジカルシンキングの重要性を感じている保育園・幼稚園・こども園の経営者の方に向けて、導入メリットと成功事例についてご紹介しておりますので、ぜひ最後までご覧くださいませ。
この記事を監修した人

関西の税理士法人にて公益法人に対して決算・申告書作成、財務コンサルティングを担当。 2017年、同税理士法人の仙台支店に転勤。 2019年7月に税理士法人を退職後、株式会社いちたすに参画。
得意分野:幼稚園・保育園・認定こども園の経営・財務コンサルティング。 少子化がますます進む東北で、今後数十年、安定して運営していける園づくりの支援を行う。 新規園の設立や代表者の代替わりなどの際は、法人に入り込んで、伴走型の支援を行うこともある。
宮城県中小企業診断士協会 会員
保育園におけるロジカルシンキングの重要性

保育士の仕事は、園児の直接の保育だけではなく、保育計画の作成、保育の環境設定、安全への配慮、保護者との面談…など多岐にわたります。
日々子どもたちの成長を見守りながら、様々なトラブルへ対応し、職員や保護者と子どもについての情報共有を図るといった保育士の業務を円滑に行うためには、様々な能力が求められます。今すぐ対応が必要な業務も多い保育の現場で、ロジカルシンキングを身に付けることは、保育士の業務を行う上で、大きなプラスになります。
ここからは、保育現場におけるロジカルシンキングの重要性について見ていきます。
ロジカルシンキングの要素を取り入れることで、3つの大きな効果が見込まれます。
- 職員の課題解決能力向上
- より良い保育環境の構築
- 保護者との円滑なコミュニケーション
各項目について、詳しく見ていきます。
職員の課題解決能力向上
まずは、課題解決能力からです。
課題解決能力とは、現状と理想の状況を把握し、その状況から課題を特定して、課題を解決する筋道を立て、実行する力です。
保育士不足による業務過多が深刻な社会課題となっていますが、保育士の数を増やすだけでなく、現在行っている業務の負担を軽減し、より働きやすい環境を作ることが欠かせません。
ICTのツールを導入して業務負荷を軽減していくことも必要ですが、新しいサービスを導入しなくても、現場の工夫次第では、質を落とさずに業務内容を減らしていくことも可能になります。
ロジカルシンキングを活用して課題解決能力が高まっていけば、職員一人ひとりから創意工夫が生まれ、業務の効率化や労働環境の改善につなげていくことも出来るようになります。
より良い保育環境の構築
続いて、実際の保育の現場に関わる内容です。
保育現場は、多くの子どもたちが集団生活を送る場所であり、保育を行っていくなかでは、様々な種類のヒヤリハットが発生します。
ヒヤリハットが起きたときに、それが重大な事故につながらないよう、ロジカルシンキングで冷静に原因を分析し、根本的な対策を講じることが大切です。
改善策を実行した後は、効果を検証し、定期的に見直すことで、子どもが安心して過ごすことができる保育環境の構築へとつながります。

「先生方にロジカルシンキングを身に付けてもらうのは大変だから…」ということで、外部の人間に入ってもらい、第三者評価等で定期的に検証してもらうのも一つの方法ではありますが…。
やはり、実際に保育を行われる方が、論理的に考える方法を身に付けるほうが、園の保育内容をよりよくしていくうえでは大きいです。
保護者との円滑なコミュニケーション

最後にコミュニケーションについてです。

ひと対ひとのコミュニケーションに、ロジカルシンキングが必要なのか
と思われるかもしれません。
「コミュニケーションは感情のやり取りだから、論理が強くなると冷たくなってしまう」と心配される方もいらっしゃると思います。
お互いが保育のプロ同士である保育士同士のコミュニケーションであれば、保育に関しての共通の認識があるので、ロジカルシンキングは必要ないかもしれません。
ですが、保育の内容をまったく知らない、前提知識も共有できていないかもしれない保護者とコミュニケーションをとるうえでは、ロジカルシンキングは必要です。
論理的に考えることが出来るからこそ「〇〇さんは子どもの給食のことを心配していたから、給食のときにモリモリ食べていたことを忘れずに伝えよう」など、保護者ひとりひとりに対して違う対応を取ることが出来るようになります。
子どもにとっても保護者にとっても良い話であれば、ロジカルに考える必要はないかもしれません。
しかし、発育で気にかかることや園児間でのトラブルをお伝えするときなど、話を聞く保護者もナーバスになる話題の際は、伝えるべきことを整理して、受け入れやすい順番でお伝えするなどの配慮も必要になるかと思います。
相手の立場に立って考える、というのも、ロジカルシンキングの一つの要素です。ロジカルシンキングを身に付けることで、コミュニケーション能力の向上にもつながります。

ロジカルシンキングは「生まれつきのもの」でも、「天性のもの」でもなく、考え方を知っているかどうかによることが大きいので、誰でも身に付けることが可能です。
「園内でロジカルシンキングの教育をすることが難しい」という場合は、当社(株式会社 いちたす)にて職員向けの研修も行っておりますし、一般企業の職員向けにロジカルシンキングの考え方を伝えるセミナーもありますので、外部の力をうまく取り入れるのも一つの方法です。
ロジカルシンキングとは?

ここまで、具体的な説明をせずにロジカルシンキングについて見てきました。
そもそも、ロジカルシンキングとは、どのような思考を指すのでしょうか。
ロジカルシンキングの定義
ロジカルシンキングとは、そのまま訳すと論理的思考です。
思考は考え方なので、論理の意味を広辞苑で見てみると
- 論理…思考の法則的なつながり、論証のすじみち
- 論理的…論理の法則にかなっているさま
余計にわかりにくくなったかもしれませんが…、まとめると
ロジカルシンキング(論理的思考)とは、物事を整理し、すじみちを立てて、物事のつながりをわかりやすく組み立てる思考法です。
ロジカルシンキングを園で導入することで、組織の課題解決能力やトラブル対応力が向上し、園の運営や業務の効率化、より良い保育環境の実現に大きく貢献します。
また、ロジカルシンキングによって建設的な議論が促進されることで、職員間の連携が強化され、子どもの様子や保育内容を筋道立てて分かりやすく伝えることで、保護者との信頼関係がより一層深まり、園への安心感につながります。

園運営における「改善」は、現状をよりよくしていこうとする営みです。しかし、少し間違えると現状の批判や特定のひとの悪口にもつながりかねません。
ロジカルシンキングが園内で共有できていると、現状批判ではなく理想の姿に集中することが出来ますので、余計なトラブルを防ぐことが出来ます。
ロジカルシンキングの要素
ロジカルシンキングと一口に言っても、とても広い考え方なので捉えづらいものがあります。ですのでここでは、ロジカルシンキングを構成する要素をあえて3つに絞って、ひとつずつ解説していくようにします。
- 分析力
- 問題解決能力
- コミュニケーション能力
それでは、ロジカルシンキングの要素を一つずつ見ていきます。
分析力

「分析力」と聞くと、日常の園運営には必要のないもののように思えるかもしれませんが…。ロジカルシンキングにおける分析力は、円滑な園運営を行う上で欠かせない要素の一つです。
分析力とは、ある物事を分解して、それを成立させている成分・要素・側面を明らかにする力です。
分析力は、現状を正確に把握し、課題を見つけ出し、改善策を検討するための基盤となります。
「なんとなくこう思う…」で決断をしてうまくいけばよいですが、なんとなくの経験則で決断すると失敗したときに何が悪かったのかの検証ができなくなってしまいます。
日々の保育実践において、分析力は重要です。
- 設定した活動のねらいは達成できたか
- 子どもたちの反応はどうだったか
- 声かけは効果的だったか
- 改善すべき点は何か
これらを振り返ることで、経験を次の実践に活かすことができます。

ベテラン保育士であれば経験知に基づいて判断できることは多いと思います。しかし、経験知は必ずしも言語化されているわけではないため、ここで悩む若手保育士は少なくないのではないでしょうか。
日頃から分析力を活用した会議やミーティングが実施できている園であれば、ベテラン保育士の経験知を若手保育士にも的確に伝えることができ、組織全体の成長スピードが加速します。

改善をしていくうえでは、PDCAのサイクルを回すことが重要だと言われます。
PDCAとはPlan、Do、Check、Actionの4つを言いますが、ただ行うだけではなく、計画を立てて、行動して、評価をして、改善していく、というサイクルを回していくことが、改善につながるという考え方です。
PDCAサイクルを回すためにも、その土台となる分析力は、園の運営をより良く改善していくためにはとても重要な力になります。
問題解決能力
問題解決能力とは、課題の根本原因を特定し、筋道を立てて解決策を導き出す力です。
保育の現場では、日々さまざまな問題が発生しますが、表面的な対応だけでは根本的な解決にはつながりません。
例えば、「残業が多い」という問題があったとします。多くの園では、「人を増やせば解決する」と考えがちですが、本当にそれだけで解決するでしょうか?
ロジカルシンキングを用いると、まずなぜ残業が発生しているのかを分析します。
- 業務の無駄はないか
- 行事準備が特定の職員に偏っていないか
- 保護者対応の時間帯に問題はないか
こうした視点で現状を洗い出します。
後述するロジックツリーを使って業務を可視化すると、「書類作業に多くの時間が取られている」、「行事準備が特定の職員に偏っている」など、残業の原因が明確になります。そこから、書類作業のICT化や行事準備の分担見直しといった具体的な改善策を導き出すことができます。

問題解決能力は、経験を重ねることで徐々に身についていくものではありますが、ただ業務をこなしているだけでは、なかなか身に付きません…。日々の業務で意図的に取り組むことが大切です。
トラブルが発生した際に、「無事に解決して良かった」で終わらせるのではなく、なぜそのようなことが起こったのか、どうすれば防げたのか、よりよく解決できたのか、といったことを記録に残し、後で振り返るといった方法も有効です。
コミュニケーション能力

保育の現場では、子ども、保護者、同僚といったさまざまな人と関わります。その中でも、特に保護者とのコミュニケーションは、園の信頼を左右する重要な場面です。
ロジカルシンキングを活用したコミュニケーションとは、相手の立場を理解し、事実を整理して、分かりやすく伝えることです。感情的にならず、筋道を立てて話すことで、誤解を防ぎ、相手の納得を得やすくなります。
例えば、発達の遅れが気になる子どもについて保護者に伝える場面を考えてみましょう。このような伝えにくい内容を伝える際、感情的になったり、曖昧な表現を使ったりすると、保護者は不安を感じたり、誤解したりする可能性があります。
ロジカルシンキングを用いると、5W1H分析で「いつ・どこで・何が・なぜ・どのように」を明確にし、事実を整理した上で伝えることができます。「最近、〇〇の場面で△△という様子が見られました。このような発達の特性について、専門機関にご相談されることをおすすめします」といった形で、事実ベースで具体的に伝えることで、保護者の不安を軽減しながら、次のステップへと導くことができます。

保護者への説明や報告の場面でも、「短時間で要点を伝える」力が求められます。朝夕の送迎時に保護者と話せる時間は限られています。その中で、伝えるべきことを整理し、優先順位をつけて話すことで、保護者の理解と信頼を得ることができます。

当社の話になりますが、当社内では「常識的に考えて…」という言葉は使わないようにしています。生まれ育ってきた環境はひとそれぞれなので、「常識」もひとの数だけあると考えているからです。
たとえば社内で「常識的に考えて、あの人が対応しないのはおかしい…」という不満が出てきた場合でも、「常識的に考えて…」で終わらせずに、論理的な根拠を明確にして情報をあげるという流れを徹底しています。
そうすることで、そのまま終わらせていれば、ただの不満で終わっていたものが、検討した結果、業務の改善につながったということはよくあります。
保育園におけるロジカルシンキングの活用事例

ここからは、保育の現場でロジカルシンキングがどのように活用されているのか、具体的な事例を紹介します。

事例の中では、MECE(ミーシー)思考やロジックツリー、5W1H分析、なぜなぜ分析といったフレームワークが登場します。これらのフレームワークの詳しい内容や使い方については、後述の「ロジカルシンキング研修の内容」で詳しく解説していますので、まずは実際の活用場面をイメージしながらお読みいただけますと幸いです。
職員会議での意見集約

職員会議で、行事の進め方について意見が分かれることはよくあります。「準備に時間がかかりすぎる」「予算が足りない」「保護者の満足度を優先すべき」「子どもの学びを重視したい」——さまざまな意見が飛び交い、議論が収拾つかなくなることもあります。
このような場面で、MECE(ミーシー:漏れなくダブりなく)の考え方を用いると、論点を整理できます。例えば、行事の進め方を以下の4つの視点で分類します。
- 準備時間:職員の負担、準備期間
- 予算:費用対効果、コスト削減の可能性
- 保護者満足度:保護者のニーズ、期待
- 子どもの学び:教育的価値、発達への効果
このように論点を整理することで、どの視点が重視されているのか、どの視点が見落とされているのかが明確になります。その上で、各視点から意見を出し合い、全員が納得できる方向性を導くことができます。
この手法を用いることで、論点が整理され、建設的な議論ができるようになります。会議時間の短縮や職員の負担軽減にもつながります。
保育計画の作成

保育計画の作成においても、ロジカルシンキングは重要な役割を果たします。園の保育方針から年間計画、月案、週案、日案へと一貫性を持たせることが求められますが、実際には各職員が個別に作成し、つながりが見えにくくなっているケースも少なくありません。
ロジカルシンキングを用いると、ロジックツリーで「園の保育方針」を頂点に、そこから年間計画、月案、週案、日案へと階層的にブレイクダウンしていくことができます。
例えば、園の保育方針に「自然に親しむ」というねらいがある場合、それを以下のように落とし込みます。
- 年間計画:春夏秋冬の季節ごとに自然と触れ合う活動を設定
- 月案:5月は「草花に触れる」、10月は「落ち葉拾い」など具体的なテーマ
- 週案:散歩コースの選定、観察ポイントの設定
- 日案:環境構成(虫眼鏡を用意する、図鑑を置くなど)
このように、保育方針から日々の実践まで一本の筋が通ることで、職員全体が同じ方向を向いて保育に取り組めるようになります。また、保護者に対しても、「なぜこの活動を行っているのか」を明確に説明できるため、園の保育への理解と信頼が深まります。

週案や日案を作成する際、保育雑誌の実践例を参考にされている方も多いのではないでしょうか。他園の優れた実践を取り入れることは有効ですが、園の保育方針から一貫した流れで計画を立てることで、より説得力のある保育が実現します。
保護者との面談
保護者との面談は、園と家庭をつなぐ重要なコミュニケーションの場です。しかし、「子どもの様子をうまく伝えられない」「言いにくいことを伝えるのが苦手」という悩みを抱える保育者も多いのではないでしょうか。
特に、発達の遅れが気になる子どもについて保護者に伝える際は、事実を整理し、感情的にならずに伝えることが重要です。ロジカルシンキングの5W1H分析を用いると、以下のように情報を整理できます。
- いつ(When):最近、特に〇月頃から
- どこで(Where):集団活動の場面で
- 何が(What):指示の理解が難しい様子が見られる
- なぜ(Why):発達の特性による可能性がある
- どのように(How):専門機関への相談をおすすめしたい
このように整理することで、曖昧な表現を避け、具体的に伝えることができます。また、保護者の不安を軽減するために、「園でもこのような配慮をしています」「このような成長も見られています」といったポジティブな情報もあわせて伝えることが大切です。
5W1H分析を活用した面談シートを作成し、職員全体で共有することで、伝え方の質を向上させることができます。

5W1H分析を活用することで、感情や印象ではなく事実に基づいた「客観的」な伝え方ができるようになります。特に、保護者に伝えにくい内容を話す際は、主観的な表現が誤解やトラブルにつながることがあります。5W1Hをテンプレート化し、日頃から客観的に情報を整理する習慣を身につけることが重要です。
トラブル対応

保育の現場では、予期せぬトラブルが発生することもあります。そのような場面こそ、ロジカルシンキングが最も力を発揮します。
ここでは、初雪の日の園庭での衝突事故を例に、実際になぜなぜ分析で根本原因を探ってみましょう。
【事例】初雪の日の園庭での衝突事故
ある日、園庭で子ども同士の衝突事故が発生しました。その日はその年の初雪の日で、子どもたちの気分も高揚していました。さらに、ベテラン保育士である担任は休みの日で、代替に入った新人保育士が担当していました。そのとき園庭には他のクラスの園児もおり、園庭は混雑していました。クラスごとの活動予定等は連携していませんでした。
このような事故が起きた際、「子どもが走ったから」「新人保育士の見守りが甘かったから」といった表面的な原因だけで終わらせてしまうと、再発防止にはつながりません。
そこで、なぜなぜ分析を用いて、根本原因を探りました。
- なぜ衝突が起きたのか? → 園庭が混雑していたから
- なぜ混雑していたのか? → 複数のクラスが同時に園庭を使っていたから
- なぜ同時に使っていたのか? → クラスごとの活動予定が共有されていなかったから
- なぜ共有されていなかったのか? → 職員間の連携体制が不十分だったから
- なぜ連携体制が不十分だったのか? → ベテラン不在時のサポート体制が整っていなかったから
このように「なぜ?」を5回繰り返すことで、根本原因は「職員間の連携不足」と「ベテラン不在時のサポート体制の欠如」にあることが明らかになりました。
その上で、以下の再発防止策を実施しました。
- 園庭使用スケジュールの共有:クラスごとの活動予定を事前に共有し、混雑を避ける
- 声かけルールの明文化:特別な日(初雪、運動会前など)の見守り体制を強化
- ベテラン不在時のサポート体制:新人保育士が担当する際は、ベテラン職員がフォローに入る
この対策により、同様の事故は再発せず、職員間の連携も強化されました。このように、ロジカルシンキングを用いることで、表面的な対症療法ではなく、根本的な解決が可能になります。
ロジカルシンキング研修の内容

ロジカルシンキングは、研修を通じて体系的に学ぶことで、保育の現場で実践できるスキルとして身につけることができます。ここでは、実際の研修で扱われる主な内容を紹介します。
基本的な思考法
ロジカルシンキングを実践するには、まず情報を整理し、物事を構造的に捉えるための基本的な思考法を身につけることが重要です。ここでは、保育の現場で活用できる代表的なフレームワークを紹介します。
MECE思考
MECE(ミーシー)とは、「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の略で、「漏れなく、ダブりなく」情報を整理する思考法です。保育の現場では、情報の整理や報告の場面で活用できます。

例えば、アレルギーのある子どもへの誤配膳を防ぐために、ヒヤリハット事例を分析する場面を考えてみましょう。MECEを用いると、以下のように分類できます。
- 調理段階:アレルギー食材の混入リスク
- 配膳段階:食器の取り違えリスク
- 確認段階:チェック体制の不備
このように分類することで、どの段階に課題があるのかが明確になります。その上で、各段階でのチェック体制を強化し、ダブルチェックを導入することで、誤配膳のリスクを大幅に減らすことができます。

また、保護者への連絡事項を整理する際にも、MECEは有効です。「健康面」「生活面」「学習面」「行事」といった切り口で漏れなく整理することで、連絡ミスを防ぐことができます。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、複雑な問題を階層的に分解し、整理するフレームワークです。保育の現場では、業務改善や問題解決に活用できます。

例えば、「残業が多い」という問題をロジックツリーで分解すると、以下のようになります。
- 残業が多い
- 書類作業に時間がかかる
- 手書きが多い
- フォーマットが使いにくい
- 行事準備に時間がかかる
- 準備が特定の職員に偏っている
- 準備の進め方が非効率
- 保護者対応に時間がかかる
- 対応時間が集中している
- 対応方法が統一されていない
- 書類作業に時間がかかる
このように問題を細分化することで、どこに課題があるのかが一目で分かるようになります。この手法を用いて書類作業のICT化や行事準備の分担見直しを行うことで、残業時間の削減につながります。
フレームワーク
フレームワークとは、思考を整理するための枠組みのことです。ここまで紹介してきたMECE思考やロジックツリーも、フレームワークの一種です。フレームワークを活用することで、考えるべきポイントが明確になり、抜け漏れのない判断ができるようになります。
例えば、行事の企画を考える際、「何となく例年通り」ではなく、以下のようなフレームワークで整理することができます。
- 目的:この行事で何を達成したいのか
- 対象:誰のための行事なのか(子ども、保護者、地域)
- 内容:どのような活動を行うのか
- 方法:どのように進めるのか
- 評価:どのように振り返るのか
このように、フレームワークを使うことで、思いつきではなく、筋道を立てて計画を立てることができます。保育の現場では、さまざまなフレームワークを場面に応じて使い分けることで、業務の質を高めることができます。
問題解決のための思考法
保育の現場では、日々さまざまな問題が発生します。その問題を適切に解決するためには、情報を正確に把握し、根本原因を特定し、効果的な対策を立てるという一連のプロセスが必要です。ここでは、問題解決に役立つ具体的な思考法を紹介します。
5W1H分析
5W1H分析とは、「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように」の6つの視点で情報を整理するフレームワークです。保護者との面談や、トラブル発生時の状況整理に活用できます。

例えば、保護者に子どもの様子を伝える際、「最近、気になることがあります」といった曖昧な表現ではなく、5W1Hで具体的に伝えることで、保護者の理解を得やすくなります。
- いつ:先週から
- どこで:集団活動の場面で
- 誰が:〇〇ちゃんが
- 何を:指示の理解が難しい様子
- なぜ:発達の特性による可能性
- どのように:専門機関への相談をおすすめ
このように整理することで、事実ベースで分かりやすく伝えることができます。
原因分析
原因分析とは、「なぜ?」を繰り返すことで、問題の根本原因を特定する手法です。トラブルや課題の再発防止に非常に有効です。

先ほど紹介した「初雪の日の衝突事故」では、なぜなぜ分析によって、表面的な原因(子どもが走った、新人保育士の見守り不足)ではなく根本原因(職員間の連携不足、ベテラン不在時のサポート体制の欠如)にたどり着くことができました。
また、午睡時間に起きやすい子どもへの対応も、なぜなぜ分析を用いることで改善できます。
- なぜ午睡時間に起きてしまうのか? → 眠くないから
- なぜ眠くないのか? → 午前中の活動量が少ないから
- なぜ活動量が少ないのか? → 室内遊びが中心だから
- なぜ室内遊びが中心なのか? → 天候や職員配置の都合
- ではどうすべきか? → 午睡時間の柔軟な設定、別室での静かな活動の導入
このように、「なぜ?」を繰り返すことで、本質的な解決策を導き出すことができます。
対処策の検討
問題の根本原因が特定できたら、次は適切な対処策を検討します。ここでも、ロジカルシンキングが重要です。
初雪事故の事例では、以下のような対処策を実施しました。
- 園庭使用スケジュールの共有
- 声かけルールの明文化
- ベテラン不在時のサポート体制の構築
対処策を検討する際は、実現可能性、効果、コストを考慮し、優先順位をつけることが重要です。すべての対策を一度に実施するのは難しいため、まずは効果が大きく、実現しやすいものから取り組むことが成功のポイントです。

ロジカルシンキングの考え方が園内で共有できれば、トラブル対応やその改善策といったことまで、理事長先生や園長先生しか行うことが出来ない、という状況から解放されます。
現場の先生が自分たちで対応方法を考え、それを園長先生に提案し了承を受けてから改善していく、という流れが出来ると、園長先生お一人では手が回らなかった部分までしっかりと対応することが出来るようになります。
コミュニケーションのための思考法

保育の現場では、子ども、保護者、同僚など、さまざまな人とのコミュニケーションが欠かせません。相手の話をしっかりと聴き、自分の考えを分かりやすく伝えることで、信頼関係を築き、円滑な保育運営が可能になります。ここでは、コミュニケーションの質を高めるための具体的な思考法を紹介します。
アクティブリスニング
アクティブリスニング(積極的傾聴)とは、相手の話を注意深く聴き、理解しようとする姿勢のことです。保育の現場では、保護者の悩みや職員の意見を聴く場面で活用できます。
特に、新人保育士の育成においては、アクティブリスニングが重要です。新人が抱える不安や疑問を丁寧に聴き、「なぜそう思ったのか」「どう判断したのか」を言語化することで、ベテラン保育士の経験知を伝えることができます。
また、保護者との面談でも、一方的に話すのではなく、保護者の話をしっかりと聴くことで、信頼関係を築くことができます。
非言語コミュニケーション
非言語コミュニケーションとは、言葉以外の手段で情報を伝えることです。表情、視線、身振り、声のトーンなどが該当します。保育の現場では、子どもとのコミュニケーションはもちろん、保護者との面談でも重要です。
例えば、発達の気になる点を保護者に伝える際、言葉だけでなく、穏やかな表情、優しい声のトーン、相手の目を見て話すといった非言語のメッセージが、保護者の不安を和らげます。逆に、緊張した表情や早口で話すと、保護者は不安を感じやすくなります。
非言語コミュニケーションは、微妙なニュアンスを伝える上で欠かせないスキルです。

保育士は感情労働という側面が大きい業務が多くあります。自分や相手の感情に振り回されないためにも、ロジカルシンキングの考え方を土台として持ちつつ、非言語コミュニケーションをうまく使えると、保護者とも同僚の先生とも、良い関係を築くことが出来るようになります。
プレゼンテーション
プレゼンテーションとは、情報やアイデアを分かりやすく提示し、他者の理解を促す手段です。保育の現場では、職員会議での提案、保護者会での説明、園の方針説明などで活用されます。
例えば、職員会議で新しい取り組みを提案する際、「やってみたい」という思いだけでは説得力がありません。背景、目的、方法、期待される効果を論理的に説明することで、職員の理解と協力を得やすくなります。
また、保護者会で園の保育方針を説明する際も、具体例を交えながら、分かりやすく伝えることが重要です。ロジカルシンキングを活用することで、聞き手に伝わるプレゼンテーションが可能になります。
ロジカルシンキング研修の導入事例

実際にロジカルシンキング研修を導入した保育園では、どのような効果が得られたのでしょうか。ここでは、導入事例を紹介します。
導入効果
ロジカルシンキング研修を導入することで、以下のような効果が期待できます。
- 分析能力の向上:日々の保育を振り返り、改善点を見つける力がつく
- 問題解決能力の習得:トラブルが起きた際、冷静に原因を分析し、対策を立てられるようになる
- コミュニケーション能力の向上:保護者への説明が分かりやすくなり、信頼関係が深まる
研修内容
研修では、座学だけでなく、フレームワークを用いたワークに取り組むことが重要です。実際の保育現場の事例を題材に、MECE、ロジックツリー、なぜなぜ分析などを実践することで、研修後すぐに現場で活用できるスキルが身につきます。
研修後の職員の声
研修を受けた職員からは、以下のような声が寄せられています。

情報共有の際、以前は伝達ミスや誤解が生じやすかったのですが、研修後は情報を整理して分かりやすく伝えることができるようになり、連携がスムーズになりました。

職員会議で意見を言う際、以前は自分の考えをうまく伝えられず、もどかしい思いをすることがありましたが、研修後は論理的に説明できるようになり、自信を持って発言できるようになりました。

緊急時や予期せぬ事態に直面した際、以前は慌ててしまいがちでしたが、研修後は冷静に状況を判断し、優先順位をつけて対応できるようになりました。
このように、ロジカルシンキング研修は、職員一人ひとりの成長だけでなく、園全体の質の向上にもつながります。
よくある質問(FAQ)

保育現場でのロジカルシンキングについてよく頂くご質問にお答えいたします。
- Qなぜ保育士にロジカルシンキングが必要なのでしょうか?
- A
保育士の仕事は、子どもの保育だけでなく、保護者対応、書類作成、職員間の連携など、多岐にわたります。ロジカルシンキングを身につけることで、課題を整理し、効果的に解決する力が養われます。また、保護者への説明や職員間のコミュニケーションも円滑になります。
- Qロジカルシンキング研修には、誰が参加すべきですか?
- A
園長、主任、リーダー、保育士はもちろん、全職員が参加することが理想です。ロジカルシンキングは、役職に関わらず、すべての保育者にとって有益なスキルです。特に、新人保育士にとっては、早い段階で学ぶことで、成長が加速します。
- Q研修でロジカルシンキングが実際に身に付くのでしょうか?
- A
研修では、実際の保育現場の事例を用いたワークを行うため、研修後すぐに現場で活用できます。ただし、スキルを定着させるためには、日々の業務の中で継続的に実践することが重要です。研修後のフォローアップも効果的です。
まとめ

ロジカルシンキングは、保育の現場で求められる分析力、問題解決能力、コミュニケーション能力を高める強力なツールです。日々の保育実践、保護者対応、職員育成など、あらゆる場面で活用できます。
特に、トラブル対応や業務改善においては、表面的な対症療法ではなく、根本原因を特定し、実効性のある対策を立てることが可能になります。また、職員全体がロジカルシンキングを共通言語として持つことで、園全体の質の向上にもつながります。
保育の質を高め、職員が働きやすい環境を作るために、ロジカルシンキング研修の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
いちたすでは、保育園・幼稚園向けのロジカルシンキング研修を提供しています。実際の保育現場の事例を用いた実践的な内容で、研修後すぐに活用できるスキルが身につきます。
研修の詳細やお問い合わせは、以下のフォームからお気軽にご連絡ください。
保育園・幼稚園・こども園経営のご相談なら幼児教育・保育専門コンサルティング会社いちたすへ

保育園・こども園・幼稚園を経営するうえで、お困りのことがありましたら株式会社 いちたすへお気軽にお問合せください。
人事院勧告分への対応はもちろん、処遇改善等加算の配分方法や、今後どのように運営していけばよいか、給付費(委託費)や補助金はしっかりと取れているのかといった経営・財務に関するご相談から、保育士・職員に外部研修を行ってほしい等の人材育成に関するご相談まで、幅広くご支援しています。
いちたすについて

株式会社 いちたすでは、保育園・こども園・幼稚園の経営者の皆様に対して、経営・運営・財務に関するコンサルティングを専業で行っています。
会計事務所として、日常の会計の確認、記帳代行を行ってもいますので、保育所のバックオフィス業務、書類関係全般のご支援もしています。幼稚園・保育所・こども園の税務・労務に精通した税理士法人・社会保険労務士事務所とも提携しています。
「会計事務所は法人設立からお世話になっているから変えたくない」というお声を頂きます。
そのような場合は、会計・税務ではなく、
- 委託費の加算の取りこぼしがないか、第三者に確認してもらいたい。
- 認定こども園への移行を考えているが、何から手を付ければよいかわからない。
- 処遇改善をどのように取り入れていけばよいか、他園がどのように行っているかを知りたい。
などのお悩みに対してご支援・コンサルティングを行う顧問(相談)契約もあります。こちらは、セカンドオピニオンのようにお使いいただくことも可能です。
料金プラン

株式会社 いちたすでは、定期的な顧問契約から、スポット(単発)での委託費の確認、申請書類の確認なども行っております。
たとえば相談契約、コンサルティング契約ですと
で引き受けております。
「複数施設を運営しているが本部で契約したい」「打ち合わせは2か月に1回でよい」など、オーダーメイドでご契約内容を作成いたしますので、お気軽にご連絡ください。
依頼の流れ

お問合せフォームかinfo@ichitasu.co.jp宛にメールをお送りください。
詳しい内容をお伺いいたします。
その後は、
- 当社の担当者が園にお伺いする
- 当社事務所(仙台市一番町)にお越しいただく
- Zoomなどを利用してオンラインで打ち合わせをする
といった形で、具体的にどのようなご支援が出来るのかを打ち合わせいたします。
園によって状況は様々ですが、
など、ご要望に合わせてご提案いたします。
お気軽にお問い合わせください。






