令和4年12月8日第63回の子ども・子育て会議が行われました。
そのなかで、毎年恒例の「令和4年人事院勧告に伴う国家公務員給与改定に伴う対応について」という項目が公表されていますので、本記事で詳しく解説していきます。
(参考URL:内閣府 子ども・子育て会議(第63回)

令和5年人事院勧告に伴う公的価格の影響については、以下の記事をご確認ください。
参考記事:【速報!】令和5年人事院勧告における保育園・こども園・幼稚園への影響をいちたすが独自解説

【令和5年3月17日追記】
令和5年3月1日に内閣府より都道府県に向けて、対応方法についての事務連絡の通知がありました。
その事務連絡の内容について、ポイント解説を記事後半部分へ追記いたしました。

中小企業診断士・大窪

毎年、4月から遡っての精算が入り大変だと思いますが、令和4年度は処遇改善臨時特例事業が令和4年4月から9月にかけて行われていたこともあり、より分かりにくくなっています…。
処遇改善臨時特例事業の国家公務員給与改定部分は、今後の園の運営(人件費)に直結する部分ですので、しっかりと把握しておきたいですね。

「人事院勧告に伴う国家公務員給与改定」とは?

「人事院勧告に伴う国家公務員給与改定」説明画像

こども園・保育園・施設型給付を受ける幼稚園を運営されている理事長先生、園長先生にとっては、大きな負担がのしかかる「人事院勧告に伴う国家公務員給与改定に伴う対応」について、あらためて確認します。

まずは人事院勧告について。
一言でまとめると、「国家公務員には、民間の労働者には認められている労働基本権が制約されているので、人事院民間の給与と比較して較差を埋めるために国家公務員の給与を改訂するよう国会・内閣に勧告する」ことです。

中小企業診断士・大窪

公務員の給与は法律で決められているので、ひとりひとりが労使交渉を行うことは出来ません。
とはいえ、低賃金で公務員を国家のために働かせる、という方向になってしまうと、そもそもの成り手がいなくなってしまうため、人事院が民間の給与水準に合わせて、毎年改定を勧告しています。

ちなみに、令和4年の人事院勧告令和4年8月に発表されています。
参考URL:人事院 令和4年人事院勧告

令和4年人事院勧告は、増額改定です。俸給の改定とボーナスの改定が行われました。

民間給与との格差
民間給与との格差

ここまでが「人事院勧告に伴う国家公務員給与改定」です。

それでは、国家公務員の給与改定が、公定価格(施設型給付費)にどのような影響があるのか
園としては、どのような対応をしないといけないのか
詳しく見ていきます。

「人事院勧告に伴う国家公務員給与改定に伴う対応」とは?

人事院勧告に伴う国家公務員給与改定に伴う対応説明画像

国家公務員の給与改定に伴い、園ではどのような対応をしないといけないのか。
まずは制度から見ていきます。

公定価格(施設型給付)では、予算を決めるうえで常勤の保育士・幼稚園教諭の年額人件費が設定されています。
たとえば、令和4年当初の年額人件費は391万円でした。

この年額人件費は、国家公務員の給与をひとつの指標として作成されていますので、国家公務員の給与が改定されれば、予算上の年額人件費も改定されることになります。

予算上の年額人件費が改定されるということは、公定価格が改定されることになります。
人事院勧告に伴う対応は、年度単位で行いますので、基本的には年度当初の4月から遡及適応されることになります。

令和4年度の公定価格への影響は?

令和4年度の公定価格への影響説明画像

それでは、令和4年の「人事院勧告に伴う国家公務員給与改定に伴う対応」はどのようになっているのでしょうか。
令和4年人事院勧告は、以下の通りの増額改定でした。

令和4年人事院勧告
  • 月例給:初任給及び若年層の俸給月額を引き上げ
  • ボーナス:0.1月分引上げ(4.3月分→4.4月分)

国家公務員の給与が増額改定されたので、それに合わせて公定価格上の年額人件費も増額改定されます。

令和4年人事院勧告に伴う国家公務員給与改定に伴う対応について
  • 令和4年人事院勧告に伴う国家公務員給与の改定内容を反映し、公定価格を令和4年4月分に遡って改定
  • 予算上の常勤の保育士、幼稚園教諭等に係る年額人件費を391万円から399万円に改定
    +8万円(+2.1%)

公定価格上は、年額8万円のアップになります。

中小企業診断士・大窪

公定価格上の年額人件費は、あくまで予算上の話で、年額人件費がそのまま保育士・幼稚園教諭の平均賃金ということではありません
また、例えば保育士が8人いるから、8人×8万円で64万円施設型給付費が増加する、ということでもありません。
公定価格上の単価が改定されることになります。

園では、どのように対応すればよい?

園では、どのように対応すればよいか説明画像

現場の保育士の先生方の給与が増加するのは、良いことです。
ここに異論を挟まれる理事長先生、園長先生はいらっしゃらないかと思います。

と言いつつも、「人事院勧告への対応が憂鬱だ…」というお話をよくお聞きします。
なぜなのでしょうか。

2月、3月に一気に対応する必要がある

冒頭で「理事長先生・園長先生にとっては、大きな負担」と記載しましたが、スケジュール的な負担が大きいと考えています。

  1. 8月に人事院勧告
  2. 12月の子ども・子育て会議で公定価格上の対応を公表
  3. 4月まで遡って施設型給付費の精算を行う時期が2月、3月までずれ込む
  4. 増額分の金額が明確になった時点で、年度内3月末まで)に先生方に支給する

保育士・幼稚園教諭の先生方の給与が増えることは、業界全体にとっても良いことなのですが…。

「人事院勧告に伴う国家公務員給与改定に伴う対応」は年明けすぐには行えません。
来年度のことを見据えて考え、卒園式等の行事も多い、2月、3月に一気に対応することが求められます

具体的には、どのように対応することになるのか

「人事院勧告に伴う国家公務員給与の改定」に伴い、増加した施設型給付費については、増額分を先生方に支給する必要があります。

これは処遇改善Ⅰの様式5別添1(令和3年度以前は様式4別添1)を作成されている理事長先生は、ピンとくる部分かと思います。(下記画像の赤枠の部分です)

人件費の改定状況
人件費の改定状況

原則論として、公定価格改定に伴い、増加した施設型給付費は、そのまま先生方の人件費に充てることが求められます。
人件費の増額に充てなければ「処遇改善等加算Ⅰの起点賃金水準と比較した際に、賃金改善が十分に行えていない」ということになってしまいます。

詳しくは、以下の記事をご覧ください。
お勧め記事:【プロが解説】処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱとは?全体像と手当の実態

中小企業診断士・大窪

ただ、ここ数年は減額改定で、増額改定は久しぶりということもありますし、令和4年度は処遇改善臨時特例事業の影響もあり、どのように対応するべきか読めない部分も大きいです。
市町村の案内に従いながら、進めていくことになるかと思います。

人事院勧告の対応にお困りの方へ
経営戦略立案支援
人事院勧告の対応にお困りの方へ
処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱの取得支援

令和4年度限定の人事院勧告に伴う対応における注意点について

令和4年度限定の人事院勧告に伴う対応における注意点について説明画像

令和4年度は令和4年4月から9月まで処遇改善臨時特例事業がありました。
令和4年10月から処遇改善等加算Ⅲとして、公定価格に組み込まれた補助金です。

詳しくは、以下の記事をご覧ください。
お勧め記事:【速報】月額9000円の賃上げは処遇改善等加算Ⅲとして位置付けへ
お勧め記事:【確定版】保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業の全体像・注意点について【2/4付FAQ追記】

処遇改善臨時特例事業自体は、令和4年2月から開始されました。
令和4年2月から3月は、いわゆる月額9,000円と言われた3%程度の改定のみでしたが、令和4年4月から9月は令和3年人事院勧告で減額改定になった0.9%部分も同時に支給(国家公務員給与改定対応部分)されていました。

処遇改善臨時特例事業
  • 令和4年2月から3月:賃金改善部分
  • 令和4年4月から9月:(賃金改善部分+国家公務員給与改定対応部分)
中小企業診断士・大窪

令和3年の人事院勧告は、減額改定でした。
しかし、岸田政権の目玉政策のひとつとして、保育士への月額9,000円の賃上げを謳っていた手前、国家公務員の給与が下がったからと言って、保育士の給与を下げることは難しかったのだと思います…。

令和4年4月から始まった「国家公務員給与改定対応部分」における対応が、少し複雑になっています。

処遇改善臨時特例事業

令和4年4月から9月の間、令和3年人事院勧告に伴う公定価格の減額分人件費▲0.9%)を「国家公務員給与改定対応部分」により補助していることを考慮し、「国家公務員給与改定対応部分」の補助を受けた施設については、当該補助を受けた額を公定価格において調整する。

令和4年度 改定イメージ
令和4年度 改定イメージ

上記のイメージ図だけですと、まだわかりにくい部分があるので補足していきます。

  1. 令和3年の人事院勧告では、マイナス0.9%の減額改定のため、令和4年度から公定価格の単価は0.9%分減少している(実施済み)。
  2. 本来であれば、令和4年度から公定価格が減額改定となるため、減額改定分、保育士の人件費が下がることになるが、処遇改善臨時特例事業の国家公務員給与改定対応部分で補填。

    実質、保育士の人件費は、減額改定の影響を受けずプラスマイナスゼロ(前年通り)

  3. 処遇改善臨時特例事業は、令和4年9月までの特例事業だったが、令和4年10月以降は、処遇改善等加算Ⅲとして公定価格に組み込まれる。

    改定イメージ図の「3%程度」部分。

  4. 令和4年の人事院勧告では、プラス2.1%の増額改定
    令和4年4月から遡って改定をされることになるが、令和4年4月から9月については、国家公務員給与改定対応部分として0.9%分をすでに補填している。
  5. 令和3年の人事院勧告で令和4年の公定価格がマイナス0.9%
    令和4年の人事院勧告で令和4年の公定価格がプラス2.1%
    本来であれば、令和4年4月当初からプラス1.2%になるところを、令和4年4月から9月までは、処遇改善臨時特例事業で0.9%上乗せしているため、2.1%上がることになる。
    令和4年 公定価格の改定

    2.1%(令和4年人事院勧告)- 0.9%(令和3年人事院勧告)=1.2%

  6. 令和4年4月から9月に国家公務員給与改定対応部分(0.9%)を受けている園については、令和5年3月分の公定価格において減額を行う。
    国家公務員給与改定対応部分の減額を行うことで、年間を通してプラス1.2%になる。

以上のようになります。

実質的に、令和3年・令和4年の人事院勧告が適切に反映されただけではあるのですが、令和5年3月分の公定価格で減額される部分があるので、上記の流れを掴んでいないと、園が損をしているのではと思ってしまうかもしれません。

当社のお客様の園では、処遇改善臨時特例事業はみなさま取得されていますが、園によっては取得(利用)していない園もありますので、より分かりにくい表現になっています。

これから2月、3月に向けて、市町村からも、どのように対応していくかという通知や案内が届くかと思います。
より詳しい情報がわかり次第、こちらの記事に追記していきます。

【令和5年3月17日追記】
令和5年3月1日に内閣府より都道府県に向けて、対応方法についての事務連絡の通知がありました。
その事務連絡について、以下にポイントの解説を追記しております。

【令和5年3月17日追記】人事院勧告への対応方法について

令和5年3月1日付で内閣府から各都道府県宛てに留意事項等が事務連絡として通達されました。
今回通知された事務連絡の大きなポイントはこちらです。

内閣府→各都道府県 事務連絡のポイント

(一部抜粋)
各市町村においては、既に把握している各施設等に関する情報(各月ごとの 利用子ども数や加算の取得状況等)に基づき、今般の改定の影響額(追加支給 見込額、年度末までの給付見込総額、処遇改善等加算Ⅰの賃金改善要件分等の 内訳等)を算定し、各施設・事業者にすみやかに周知すること

(引用:【令和5年3月1日 事務連絡】令和4年人事院勧告に伴う国家公務員給与改定を踏まえた令和4年度補正予算における公定価格の取扱いについて)

上述の通り、内閣府からの事務連絡では「市町村が計算をして各施設に周知すること」となっています。
ただ、市町村のご担当の方も、年度末は処遇改善の確認や、取得加算(年間分、3月分)の精査、補助金の実績報告等が一気に動く時期ですので、どこまで動けるのかは、市町村によって大きく対応が分かれるかと考えられます。

中小企業診断士・大窪

令和4年度の人事院勧告分の精算について、既に市町村から連絡がきでいる園もありますが、令和5年3月17日時点では「各園で計算をするよう市町村から連絡がきている」ところがほとんどです…。
年間の精算額を市町村で計算してくださっている市町村もありますが、それでも、どの金額を人件費として追加支給しないといけないといった話は出てきていません。

上記事務連絡には
実際の支払いが翌年度となる場合においても、今年度の追加的支払分であることを賃金の項目上明確に管理すること。」
とありますので、実際の支払いは令和5年度に、と考えている市町村が多いのかもしれません。

【令和5年11月9日追記】人事院勧告における市町村ごとの対応について

令和4年度の人事院勧告分の精算対応は「市町村が計算をして各施設に周知すること」と内閣府からの事務連絡として通達がありましたが、その後の各市町村の対応がわかってきましたので、追記していきます。

各市町村での対応は大きく3つに分かれ、その対応方法は市町村によって大きく異なっていました。

  1. 市町村が金額を算定し、園に通知
  2. 市町村が処遇改善等加算Ⅰから人件費の改定部分の金額を算出するエクセルを園に提供し、園で金額を算出
  3. 市町村からは情報提供がなく、園で独自に計算し金額を算出

まだ差し戻しが返ってきている市町村は少ないですが、市町村側としてもどのように確認していくのか、今後の動向を当ブログで共有していきます。

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株式会社 いちたすでは、保育園・こども園・幼稚園の経営者の皆様に対して、経営・運営・財務に関するコンサルティングを専業で行っています。

会計事務所として、日常の会計の確認、記帳代行を行ってもいますので、保育園のバックオフィス業務、書類関係全般のご支援もしています。税務については保育所・こども園・幼稚園の税務・労務に精通した税理士法人・社会保険労務士事務所と提携しています。

会計事務所は法人設立からお世話になっているから変えたくない、というお声を頂きます。
そのような場合は、会計・税務ではなく、委託費(施設型給付費)の加算の取りこぼしがないか、処遇改善をどのように取り入れていけばよいかなどを確認する相談契約もございます。こちらは、セカンドオピニオンのようにお使いいただくことも出来ます。

料金プラン

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  • 当社事務所(仙台市一番町)にお越しいただく
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上記の様に、具体的にどのようなご支援が出来るのかを打ち合わせいたします。

園によって状況は様々ですが、
以下、実際にご利用になられた法人様の例を記載致します。

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