園を経営される中で直面する課題に、下記のお悩みはないでしょうか。
- 職員がなかなか定着せず、すぐに辞めてしまう
- 職員の育成が現場任せになっており、園で掲げる教育・保育方針の位置づけが曖昧になっている
- 言語化されていない職務・職責があり、職員を評価しにくい
こうした課題の解決の鍵の一つとなるのが「キャリアパス制度」です。
本記事を読むことで、幼稚園・保育園・こども園の経営者の方が得られるメリットは下記の3つです。
園で実際に取り入れた事例も交えていますので、ぜひ最後までお読みくださいますと幸いです。
- 職員の定着とモチベーション向上に向けたヒントが得られる
キャリアパス制度が、どのように職員の成長意欲やエンゲージメントを促し、離職率の改善につなげられるか、その基本的な考え方を紹介します。 - 園の運営力と競争力強化につながる視点が見つかる
仲間意識や競争意識をどのように育み、評価制度や研修制度を活用して組織全体の質を高めていくか、その方向性を考えるきっかけを提供します。 - 職員のニーズと園の理念を調和させたキャリアパス設計の考え方に触れられる
個別支援やコミュニケーションの重要性を踏まえつつ、園の成長戦略に合ったキャリアパスをどのように構築し、円滑に導入していくか、そのプロセスや留意点について解説します。
この記事を監修した人

関西の税理士法人にて公益法人に対して決算・申告書作成、財務コンサルティングを担当。 2017年、同税理士法人の仙台支店に転勤。 2019年7月に税理士法人を退職後、株式会社いちたすに参画。
得意分野:幼稚園・保育園・認定こども園の経営・財務コンサルティング。 少子化がますます進む東北で、今後数十年、安定して運営していける園づくりの支援を行う。 新規園の設立や代表者の代替わりなどの際は、法人に入り込んで、伴走型の支援を行うこともある。
宮城県中小企業診断士協会 会員
キャリアパス制度とは?

キャリアパス制度と聞くと、どのような取り組みを想像されるでしょうか。ここではキャリアパスの定義と目的を確認しながら、キャリアパス制度の導入の効果を解説します。
キャリアパス制度の定義と目的
キャリアパス制度とは、職員が自身の職業的成長やキャリア形成を計画的に進められるように、組織が明確な昇進やスキルアップの道筋を示す制度です。保育業界においては、職員の専門性や経験を体系的に評価し、成長機会を提供することで、職員のやる気や定着率を高めることが目的とされています。
キャリアパスの定義への理解を深めるため、キャリアパスと似た言葉を、登山に例えながら下の表にまとめました。
| キャリアパスに関する用語 | 用語の定義 | 登山に例えた定義のイメージ |
|---|---|---|
| キャリアパス(道筋) | 職業上の道筋、昇進経路のこと | どのルート(登山道)で登るか |
| キャリアアップ(地位向上) | より高い地位や役職、より良い待遇(給与など)を得ること | より高い場所(山頂)に到達すること |
| スキルアップ(能力向上) | 業務を遂行するための具体的な技術、知識、能力(スキル)を向上させること | 体力づくり・今ある装備を強化すること |
| リスキリング(新しい能力の習得) | 時代や環境の変化に対応するため、新しいスキルを学び直すこと ※近年(特にDX:デジタルトランスフォーメーションの文脈で)よく使われる言葉 | 登る山(環境)が激変したため、新しい技術を学び直すこと |
特に少子高齢化に伴う保育士不足が深刻化する中で、キャリアパス制度は職員の長期的な働きがいを支える重要な仕組みです。保育園経営者は、この制度を通じて職員の能力開発を促進し、組織全体の質の向上を図る役割を担います。
また、キャリアパス制度は職員のモチベーション向上や離職率の低減にも寄与します。明確な成長目標や評価基準があることで、職員は自身の努力が認められ、将来の展望を持ちながら働くことができます。これにより、職員の定着率が向上し、保育園の安定運営につながります。
では、キャリアパス制度が具体的にどのようにモチベーション向上や離職率減少に効果があるのか、見ていきましょう。

キャリアパスという言葉が、様々な文脈で使われていますね。
私自身は、キャリアパスを「職員の成長の道筋をつくること」という意味合いで扱われることが多いかと思っていましたが、キャリアを積みやすい環境づくりも、キャリアパス構築の取り組みに含まれることを知りました。
保育士のモチベーション向上と離職率減少への効果
保育士の仕事は、子どもたちの成長を支える重要な役割を担っています。しかし、長時間労働や精神的な負担など、さまざまな課題も抱えています。こうした環境下で、職員のモチベーションを維持し向上させることは、保育園の安定運営に欠かせません。
キャリアパス制度は、職員の成長過程を組織が支援する仕組みであり、研修や資格取得支援など具体的なサポートも含まれます。
キャリアパス制度により、職員は日々の業務にやりがいを感じ、専門性の向上に努める意欲が高まります。その結果、離職率の減少につながります。離職率の少ない園は、求職者にとっても魅力的に映ります。
キャリアパス制度の導入が離職率の低下に効果があるかについては、組織での取組みにより左右され、統計上では読み取りにくい側面があります。
そこで、社会福祉法人山ゆり会(茨城県)での離職率の大幅な改善事例をご紹介します。
【改善成果】
- 導入前(2017年):離職率 17%
- 導入後(2024年):離職率 3-4%
- 改善率:75%以上の減少
【具体的な制度内容】
- 6階層のキャリアステージ構築
- 職員の能力を6つの階層に分類
- 各階層で期待される「専門性・組織性・指導性」の3指標を明文化
- 年3回の1on1面談制度(わんおんわん:上司と部下が定期的に行う1対1の対話)
- スマートフォン/PCで記入したキャリアパスシートを基に実施
- 自己評価、上長評価、園長面談の3段階評価
- 専門性手当の導入
- 専門性を活かした仕事に対して手当を支給
- 管理職以外のキャリアパスも明確化
【その他の改革施策】
- 人員増員:配置基準の1.5-1.8倍に増員
- 柔軟な勤務制度:1時間単位の有給休暇、15分単位の早退
- ICT導入:連絡帳デジタル化、キャッシュレス決済
- 多様な働き方:副業承認、自由な髪色、終身雇用推進
上記の「離職率 3-4%」という改善数値は、どのような意味を持つでしょうか。
厚生労働省の「保育士の現状と主な取組」によると、2017年の保育士の離職率は9.3%です。それに対し、社会福祉法人山ゆり会の2024年の離職率は3-4%です。同じ年での比較ができませんでしたが、社会福祉法人山ゆり会の離職率はかなり低いことがわかります。
また、キャリアパス制度を考える上では、処遇改善等加算制度(しょぐうかいぜんとうかさんせいど)の要件を踏まえた構築が必要です。
処遇改善等加算制度におけるキャリアパスとは、どのような位置付けなのでしょうか。
処遇改善等加算制度におけるキャリアパス
処遇改善等加算制度は、職員の処遇改善を目的とした重要な制度です。この制度は、保育園が一定の基準を満たすことで加算を受けられる仕組みとなっています。
処遇改善等加算制度を詳しく解説した処遇改善等加算の一本化対応ガイドは下の関連記事より、ぜひご覧くださいませ。
処遇改善等加算制度において、キャリアパス制度は、重要な役割を果たしています。具体的には、キャリアパス制度の構築が処遇改善等加算の要件の一つとなっており、職員の成長を支援する体制の整備が求められます。
施設でのキャリアパス制度と処遇改善等加算制度をうまく連動させることは必要です。ただし、処遇改善等加算を取得したからといって、職員の離職率が直接下がるわけではありません。園でどのようなキャリアパスを描くのかが重要です。
保育園経営者は、処遇改善等加算制度の要件を満たしつつ、キャリアパス制度を効果的に活用して人材確保や定着に取り組むことが求められます。
では、保育園におけるキャリアパス制度の具体例について詳しく解説します。
保育園におけるキャリアパス制度の具体例

具体例を交えながら、保育園におけるキャリアパス制度を解説します。
キャリアパス制度を考える上で、まずはどのような職務内容があるのか、整理します。
保育士の職務内容
保育士と幼稚園教諭の一般的な職務内容は、どのようなものでしょうか。
まず保育士の職務内容です。
- 保育士の主な職務内容
- 0歳から5歳までの乳幼児の保育
- 基本的な生活習慣のサポート(食事、排泄、着替え等)
- 保育計画の作成と実施
- 保護者との連携・相談対応
- 保育環境の整備と安全管理
次に、幼稚園教諭の職務内容です。
- 幼稚園教諭の主な職務内容
- 3歳から5歳までの幼児への教育・指導
- 年齢に応じた教育課程の実施
- 遊びを通じた教育的活動の企画・実行
- 保護者との教育面での連携
- 小学校入学準備の支援
なお、幼保連携型認定こども園(ようほれんけいがたにんていこどもえん)では「保育教諭(ほいくきょうゆ)」と呼ばれる先生が必要ですが、保育教諭の職務内容は保育士と幼稚園教諭の両方の職務が求められます。
これらの職務内容は、日常的な業務に位置づけられます。では、役職ごとの職務の違いも見ていきましょう。下の表にまとめました。
| キャリアパスに紐づく役職 | 職務内容 |
|---|---|
| 園長 | 施設全体の経営・運営 |
| 副園長・教頭 | 園長の代行・補佐、園務の管理・調整 |
| 主任保育士・主幹保育教諭・主幹教諭 | 園長や副園長・教頭を補佐し、保育士等全体を統括 教育・保育内容の質の向上を推進 |
| 副主任保育士・中核リーダー | 主任保育士等のサポート、園運営の補助 (マネジメント職) |
| 専門リーダー | 専門性の高い教育・保育の実践 (スペシャリスト職) |
| 職務分野別リーダー・若手リーダー | 特定分野(幼児教育・保育、障害児保育、食育等)の専門性を発揮 |
| 保育士・幼稚園教諭・保育教諭等 | 日常的な教育・保育業務 |
これらの職務内容を踏まえ、キャリアパスの全体像を見ていきましょう。
保育士のキャリアパス
まずは一般的なキャリアパスの全体像を把握します。
下の図は、幼稚園教諭等に関するキャリアパスの全体像です。

下の図は、保育士等に関するキャリアパスの全体像です。

国が示す幼稚園教諭・保育士等のキャリアパスの全体像から、2つのことがわかります。
- ミドルリーダーの役職が設けられている
- 副主任保育士・中核リーダー
- 指揮命令系統を担うマネジメント職の位置付け
- 専門リーダー
- 専門性を突き詰めるスペシャリスト職の位置づけ
- 職務分野別リーダー・若手リーダー
- マネジメント職もしくはスペシャリスト職に進む前段階の役職の位置づけ
- 副主任保育士・中核リーダー
- ミドルリーダーを勤続年数と技能の両面から定義
- ミドルリーダーに相当するおおむねの経験年数を定義
- ミドルリーダーに求められる研修を通じて有する技能で定義
これらの前提を踏まえ、キャリアパスの構築事例を見ていきましょう。

国が公開しているキャリアパスの全体像をみると、いわゆる「ピラミッド構造」の組織を想定しているように見えます。
ピラミッド構造と対照的な組織構造に「文鎮型組織・鍋ぶた型組織(以下、文鎮型組織に統一)」などが挙げられます。
ピラミッド構造も文鎮型組織も、それぞれ良さと対策すべき課題があるかと存じます。
キャリアパスにおいて重要なのは「職員にスキル・技能を習得させ、園に貢献させること」と「職員が成長を実感できる・上司が評価できる仕組みにすること」の2点です。
この2つができていれば、組織の形は、園の決めた形が正解なのだと思います。
キャリアパスの構築事例
今回は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の「保育人材確保に関する取組事例集」から、キャリアパスの構築事例を深掘りしてお届けします。
あいみーキッズ株式会社の運営する認可保育所(にんかほいくしょ)「あいみー平間保育園(神奈川県川崎市)」では「公正な評価・見通しあるキャリア提示」と「人員余裕による働きやすさ整備」を両輪に、若手の定着と保育の質向上を目指す実践を進められています。
取り組みの概要
あいみーキッズ株式会社のキャリアパスの構築に関わる取り組みについて、取り組みの背景から今後の展望を下にまとめました。
- 取組の背景
- 開園後の離職対策と中長期的な人材育成の必要性から、評価制度・キャリア設計・配置の余裕づくりに注力
- 給与だけでなく昇進や育成の見通しを示すことで定着を図る狙い
- 主な取組内容
- キャリアモデルの提示
- 経験年数別のモデルケース(フィールド→チーフ→副主任→主任→園長)を明確化し、期待役割を提示
- 評価制度の運用
- 系列園共通の評価項目を設定。職員の自己評価→園長評価→系列園評価会議で最終調整を行い、昇給・昇格や賞与に反映
- 公正性の担保
- 一次評価面談や系列園評価会議を通じて納得感を高めるフィードバック体制を整備
- 社内研修と外部研修
- 新卒・中途を問わず社内研修や自治体等の外部研修へ積極派遣
- キャリアモデルの提示
- 取組成果、成果につながったポイント
- 離職率が低下し、定着が進むことで採用負担が軽減。採用コストを現場還元できる余裕が生まれた
- 公正な評価とキャリアパス提示が若手の定着・モチベーション向上に寄与した
- ノンコンタクトタイムの導入により、転職者から「落ち着いて事務ができる」と評価され、採用面でも効果があった
- 職場の余裕が増えたことで保育の質向上につながっているという現場の実感があった
- 今後の課題と展望
- ノンコンタクトタイム等をより自律的に運用できる職員の育成(業務マネジメント力向上)が必要
- ICT化や業務見直しを継続しつつ、個々の保育の専門性(乳児教育など)を深めることで「やりがい」と「働きやすさ」の両立をさらに推進する予定
キャリアパスの深掘り:全体構造・特徴・利点
あいみーキッズ株式会社のキャリアパス事例から、キャリアパスの全体構造、利点などを深掘りしてご紹介します。下の画像は、あいみーキッズ株式会社のキャリアパス設計と、キャリアアップのモデルケースです。

このキャリアパスは「誰がどの時期に何を目指すべきか」を分かりやすく示された骨組みですね。
キャリアパスの全体構造は、下記のように読み取れます。
キャリアパス全体構造の3つの特徴
- 段階化された年次区分
- 1–2年、3–6年、7–10年、10–15年、15年以上の5段階で構成されています。
- 役職の連続性
- 現場メンバーからアシスタント系、セクション管理、チーフ的役割、最終的にマネージャーへと自然に上がる直線的な流れが示されています。
- 昇進所要年数の明示
- 各ステップ間に想定される昇進年数(例:チーフアシスタントマネージャー→セクションマネージャー:3–4年、セクションマネージャー→チーフセクションマネージャー:4–5年)が具体的に書かれています。
キャリアパスの全体構造を掴んだところで、次に役割ごとの特徴を見ていきましょう。
| キャリアパスに紐づく役職 | 職務内容 | 経験年数の目安 |
|---|---|---|
| マネージャー(園長) | 園全体を統括的に見渡し、職員育成・業務改善を主導 | 概ね15年〜 |
| アシスタントマネージャー(主任) | セクションマネージャーの補佐役として職員支援と運営業務を担う | 10~15年程度 |
| セクションマネージャー(副主任) | 園運営に関与し、職員育成や業務改善を推進 | 7~10年程度 |
| チーフ(各リーダー) | 各クラス・若手のリーダーとして保育の質向上とチーム運営に関与 | 5~6年程度 |
| チーフアシスタント(各リーダー) | クラス担当として各業務を担い、コンピテンシーを習得 | 3~4年程度 |
| フィールドメンバー | 日常の保育業務 | 1~2年程度 |
役割ごとの特徴から、このキャリアパスは下記のような利点が挙げられます。
キャリアパス設計上の3つの利点
- 透明性の高さ
- 昇進基準や目安年数が明示されており、個人目標が立てやすい。
- 定着・育成の促進
- 成長イメージが分かるため、職員のモチベーション維持と長期定着につながる。
- 段階的なスキル育成
- 現場スキル→指導力→管理力→経営力へと段階的に求められる能力が変化する設計で段階的な成長が望める。
ここでご紹介した取り組み以外にも、様々な保育人材確保に関する取組事例が紹介されています。気になる方は「保育人材確保に関する取組事例集」をご覧ください。

ご紹介したキャリアパスは、経験年数を1つの軸に、1本道でキャリアアップしていく設計と読み取りました。
そのため、「園長と主任しか役職がない」「専門職の導入がこれから」という園でも、参考にしていただきやすい事例に感じました!
キャリアアップ研修や資格取得支援
園で整備可能な「研修制度」と「資格取得支援」について、具体的な施策をご紹介します。
体系的な研修制度の構築
研修は、単発のイベントではなく、職員の成長段階に合わせて計画的に提供できると、成長機会の公平性が保たれます。OJT(On-the-Job Training:オージェーティー:日常業務を通じた指導)を基本としつつ、園内研修と園外研修を効果的に組み合わせることが求められます。
1. OJT(On-the-Job Training)の仕組み化
最も基本的かつ重要な研修は、日々の業務の中で行われるOJTです。しかし、これを個々の先輩職員の経験則に任せるだけでは、指導の質にばらつきが生じ、新人職員の成長速度に影響を及ぼすリスクがあります。そのため、OJTを「仕組み」として機能させることが不可欠です。
- 育成計画の策定
新人職員に対し、「いつまでに、どのレベルの業務ができるようになるか」という具体的な育成計画(ロードマップ)を作成します。
- 指導内容の標準化
指導者によって教える内容が異ならないよう、業務ごとのマニュアルやチェックリストを整備します。
- 指導担当者(OJTリーダー)の任命と育成
新人指導を担当する職員を明確に定め、その職員に対して指導方法の研修を行います。指導担当者の業務負担を軽減するためのサポート体制も重要です。
- 段階的な指導の実践
「やってみせる(Show)→説明する(Tell)→やらせてみる(Do)→評価・フィードバックする(Check)」というサイクルを意識し、一方的な指示ではなく、対話を通じて指導します。
2. 目的別の園内研修(集合研修)の企画・実施
OJTを補完し、園全体の課題解決や知識共有を図るため、定期的な園内研修を実施します。
園が抱える課題や職員のニーズに応じてテーマを設定します。テーマの一例を下の表にまとめました。
| 園内研修の対象者 | 園内研修のテーマ例 |
|---|---|
| 新人職員向け | 園の保育理念、基本的な業務の流れ、保護者対応の基礎など |
| 中堅職員向け | 困難なケースへの対応、チームワーク向上、保育計画の立案・評価方法など |
| 全体向け | 時事問題、虐待防止・不適切保育の予防、アレルギー対応、災害時の安全対策、メンタルヘルスケアなど |
園内研修のテーマを決めたら、効果的な実施方法を考えます。例えば下のような3つの観点から、実施方法を検討します。
- 効果的な実施方法
- 参加型研修
一方的な講義形式だけでなく、グループディスカッションや事例検討を取り入れ、職員が主体的に考える機会を作ります。 - 外部講師の活用
専門性が高いテーマ(例:発達障害、心理学)については、外部の専門家を講師として招くことで、新たな視点や知識を得られます。 - 年間計画の策定
年間の研修計画を事前に立て、職員に周知することで、計画的な人材育成が可能になります。
- 参加型研修
3. 園外研修への参加支援
職員が外部の研修に参加し、新しい知識や刺激を得る機会を積極的に支援します。
- 保育士等キャリアアップ研修(ほいくしとうきゃりああっぷけんしゅう)の積極活用
これは国が主導する、職員の処遇改善とキャリアパス構築に直結する最も重要な研修制度です。- 園の義務とメリット
この研修の受講は、処遇改善等加算の区分1[基礎分]の要件となっており、園の安定経営に不可欠です。 - 支援体制
職員が研修に参加しやすいよう、研修費用の助成や勤務シフトの調整、代替職員の配置といった具体的な支援策を講じることが求められます。近年はオンライン(eラーニング)での受講も可能になっており、多忙な職員でも参加しやすくなっています。
- 園の義務とメリット
戦略的な資格取得支援制度
職員の自主的なスキルアップを後押しするため、資格取得を支援する制度を整備します。これは、職員の専門性を高めるだけでなく、成長意欲の高い人材にとって魅力的な職場であることをアピールする上でも有効です。
ここでは、園で実現可能な資格取得支援を2つご紹介します。
1. 経済的支援
資格取得にかかる費用負担を軽減するための支援です。支援内容を決めながら、必要に応じて国の制度も活用していくことで、持続可能な支援につながります。
- 支援内容の例
- 養成講座や研修の受講料補助
- 資格試験の受験料補助
- 教材費や交通費の補助
- 国の制度の活用
- 国や自治体が実施している「保育士修学資金貸付制度」や「専門実践教育訓練給付金」などの公的支援制度の情報を職員に提供し、活用を促すことも重要です。
2. 就労環境の支援
費用面だけでなく、働きながら学びやすい環境を整えることも不可欠です。
- 勤務シフトの調整
資格取得のための通学や研修参加に合わせて、柔軟に勤務シフトを調整します。 - 休暇制度の整備
試験日や集中講座のための「資格取得休暇」などを設けることも有効です。

キャリアアップ研修の受講を業務時間中の受講を認める園もあれば、個人のキャリアに紐づくものとして業務時間外での受講を求める園と、様々あります。
また研修受講の費用についても、園が負担するか、職員が負担するか、あるいは半額を園が負担など、園によりけりです。
当然、職員の負担を少なくすることができれば一番ですが、その影響で本来の教育・保育にかかる業務への影響が出ることは避けたいですね。
評価制度と昇給制度
キャリアパスと関連の深い言葉に「人事評価制度(じんじひょうかせいど)」「昇給制度」があります。
人事評価制度は、職員の成長を評価する「具体的な項目を定めた制度」です。
人事評価制度については、下の人事評価制度の構築と運用ガイドでで詳しく解説しておりますので、ぜひお読みください。
昇給制度は、給与体系に応じて職員の賃金を上げる制度を指します。そして給与体系は、人事評価や職員の勤続年数などに応じた「賃金の構造を体系化したもの」です。
給与体系については、下の給与体系の改善策と成功事例をご覧いただくと、理解が深まります。

キャリアパスを辿っていけば、果たす責任が大きくなります。
責任を果たした結果、貢献度の高い職員として評価され昇給につながるとどうなるでしょうか。
次なる目標に向かってさらに成長する、という好循環が生まれます。
最終的には、「キャリアパス」「人事評価制度」「給与体系」の三位一体で、職員の成長を園への貢献につなげる仕組みの実現を目指すと、強固な園運営につながりそうですね。
キャリアパス制度導入のメリット5選

キャリアパス制度導入のメリットを5つ取り上げ解説します。
処遇改善等加算 区分1[基礎分]の取得につながる
キャリアパス制度を構築すると、処遇改善等加算制度における区分1[基礎分](くぶんいち きそぶん)の適用を受けることができます。
区分1[基礎分]の適用を受けると、経験に応じた昇給の仕組みの整備や職場環境の改善のための費用を、受け取ることができます。キャリアパスを構築していないと、区分1[基礎分]の金額を受け取ることができません。
キャリアパスを構築しないまま、区分1[基礎分]の適用を受けないと、どのような影響があるでしょうか。
区分1[基礎分]の適用を受けないと、処遇改善等加算として受け取れる金額が大幅に減少します。その結果、職員の昇給などに充てられる金額が減り、園の経営を圧迫しかねません。
区分1[基礎分]の適用を受けるための具体的な要件は、こども家庭庁が公開する通知文書の他、「処遇改善等加算に関するFAQ(よくある質問)」でも示されています。
下記に、「処遇改善等加算に関するFAQ(よくある質問)」からキャリアパス要件にかかわる内容を抜粋しましたので、ご参照くださいますと幸いです。
![区分1[基礎分] キャリアパス要件の詳細についての説明画像](https://ichitasu.co.jp/wp-content/uploads/image-490-1024x463.png)
- Qキャリアパス要件で必要となる「研修」は、どの程度のものであれば認められるのでしょうか。また、施設・事業所職員のフィードバックとはどのようなもので、どのような内容が必要でしょうか。
- A
施設・事業所職員の職位、職務内容等に応じた研修(所長研修、主任保育士研修など職位に応じた研修、或いは職務内容に応じた研修など)を実施、又は研修の機会を確保していればよく、研修内容は、社会通念上、明らかに職員の研鑽目的でないものを除き、施設の実情に応じて取り組んでいれば認められるものになります。
また、フィードバックについては、個別面談や、自己評価に対し施設長や管理職の職員等が評価を行うなどが考えられます。施設・事業所の職員が業務や能力に対する自己評価をし、その認識が事業者全体の方向性でどのように認められているのかを確認し合うことが重要であり、この趣旨を踏まえて適切に運用されているのであれば、要件を満たしていると考えられます。
- Qキャリアパス要件で必要となる「フィードバック」について、「個別面談や、自己評価に対し施設長や管理職の職員等が評価を行う」とは、例えば、職員ごとに、A~Eなどの5段階評価を付けるなどの必要があるのでしょうか。
- A
フィードバックとは、研修や技術指導の効果が、職員の資質の向上に繋がっているかどうかについて、個別面談をするなどにより確認することでも足り、5段階評価等を行うことまでは求めません。
- Qキャリアパス要件で必要となる「資格取得のための支援」は、例示されている「研修受講のための勤務シフトの調整や休暇の付与、交通費、受講料等の費用負担の援助」の全てを満たす必要があるのでしょうか。
- A
資格取得のための支援とは、幼稚園教諭免許状・保育士資格等の取得を促すためのものですが、必ずしも例示されている全ての取組を満たすこと想定しているものではありません。
処遇改善等加算 区分3[質の向上分]の取得につながる
処遇改善等加算制度における区分3[質の向上分](くぶんさん しつのこうじょうぶん)とは、キャリアアップの仕組みによる教育・保育の質の向上を目的とした加算です。
組織でキャリアパス制度を構築し、該当する役職者が所定の研修を修了した場合に、区分3[質の向上分]の適用を受けることができます。
区分3[質の向上分]で目指していることを下の画像にまとめました。
![区分3[質の向上分]で目指していることについての説明画像](https://ichitasu.co.jp/wp-content/uploads/image-491-1024x544.png)
区分3で目指していることは、保育士としての技能・経験を積み、安心して長く働いてもらえるキャリアアップの道筋をつくることです。
上の画像は三角形のピラミッド構造の組織ですが、必ずしもピラミッド構造の組織にすることが求められているわけではありません。
大切なのは、その組織で辿れるキャリアの通過点として「職務・職責に応じた役職」を設け、職員が組織でキャリアを上げる手段を認識しやすくすることです。
区分3[質の向上分]の具体的な要件は、下記の処遇改善等加算の一本化対応ガイドにて詳しく解説しておりますので、併せてご覧くださいませ。
人材確保・定着の促進
キャリアパス制度によって保育士が目指せる役職や専門性が可視化されると、「この園なら成長できる」という期待感が生まれ、求職者が増加し、人材確保に直結します。
また、既存の職員にとっては、自身の目標や評価基準が明確になることで日々の業務への意欲が向上し、結果として離職率の低下につながり、人材定着が促進されます。
このように、キャリアへの不安を解消し将来への見通しを提供することは、採用と定着の両面で大きなメリットとなります。

保育士資格を持つ求職者の状況を想像すると、求職者は必ずしも保育業界に就職する訳ではなく、保育業界以外の業種へ転職する選択肢も持っています。
その結果、保育園の求人票は、様々な業界・職種の求人と同じ棚で比べられることになります。
営業職の方が見込みのお客様のところへ何度も足を運ぶように、求職者の目や耳に何度でも「この園で働く魅力や成長機会」を届ける、ある種の「しつこさ」をもって印象に残す必要があります。
職員のモチベーション向上とエンゲージメントの強化
職員のモチベーションとは、仕事に対する意欲ややる気のことを指します。キャリアパスを導入することで、職員は自分の成長や将来の目標を明確にできるため、モチベーションが向上します。
一方、エンゲージメントとは、職員が職場や仕事に対して感じる親しみや信頼のことです。キャリアパス制度は、職員が組織に対してより強い帰属意識を持つことを促し、エンゲージメントの向上につながります。
職員のモチベーションやエンゲージメントが強化されると、経営者にとっては人材の定着率向上や生産性の向上、職場の雰囲気の改善など多くのメリットがあります。これにより、保育園の安定運営や競争力の向上が期待できます。
園の運営力向上と競争力強化
キャリアパスの導入により、職員一人ひとりのモチベーションやエンゲージメントが高まると、職員は仲間意識と競争意識を持って働くようになります。これらの意識は、園の運営力の向上と競争力の強化につながります。
園の運営力が向上すると、具体的には以下のような結果が期待できます。
- 業務効率の改善による生産性向上
- 職員間のコミュニケーション活性化によるチームワーク強化
- 問題解決能力の向上による迅速な対応力の獲得
また、園の競争力が強化されると、具体的には以下のような結果が期待できます。
- 保護者からの信頼獲得による入園希望者の増加
- 他園との差別化を図る独自のサービス提供
- 職員の専門性向上による保育の質の向上
さらに、仲間意識と競争意識を持った職員がいる園では、優秀な人材の育成と組織力の向上が進むというメリットもあります。これにより、園全体の持続的な成長が期待できます。

本記事を執筆する中で、あらためてキャリアパスについて、深く検討しましたが、キャリアパスは「職員の成長の道筋を示す」以外に「園が果たす責任を職員で分かち合う」側面があるのでは、と考え至りました。
責任を分散することは、責任を引き受ける職員に成長機会を与えることになるとも考えられます。
例えば、主任保育士が担う業務の一部を、下位役職を設けて責任を分散します。そして、主任保育士が園長が担う業務の一部を担います。そうすると、園長が経営に集中できる、という構図を叶えることが可能です。
少子化の中で園が生き残るためにも、理事長や園長が園の経営に集中できる環境が欲しいと考えられる経営者様は、キャリアパスの見直し・構築を進めてみることをおすすめいたします。
優秀な人材の育成と組織力の向上
キャリアパスの導入により、将来的に優秀な人材の育成と組織力の向上が期待できます。これは、職員一人ひとりが明確な成長目標を持ち、段階的にスキルや経験を積むことができるためです。
優秀な人材を育成するまでのステップは以下の通りです。
- 明確なキャリアステップが職員の成長意欲を高める
- 研修や資格取得支援により専門性が向上する
- 評価制度が適切なフィードバックと昇進機会を提供する
- 職員同士の競争意識と協力意識が相互に刺激し合う
優秀な人材の育成が進むことで、組織力も向上します。具体的には、チームワークの強化や問題解決能力の向上、業務効率の改善などが期待されます。
さらに、優秀な人材の育成と組織力の向上の結果、地域から求められ続ける園として長く愛される存在となります。
また、園長や主任保育士だけでなく、職員を育てられる人材が育つことで、園全体の人材育成体制が強化されます。
これにより、園長をはじめとする上位の役職者が園の経営に専念できる仕組みが整い、園の価値を持続的に高めることが可能となります。
キャリアパス制度導入のポイント

キャリアパス制度導入を成功させるポイントを4つご紹介します。
園の理念とビジョンに基づいたキャリアパスの設計
キャリアパスを設計する際には、まず「どんな園にしたいのか」という園の理念を明確にすることから始めることが重要です。
本記事の冒頭で例えた登山に置き換えると、キャリアパスは「登山のルート」で、園の理念は「山そのもの」です。登山ルートを考える前に「どんな山を登らせるのか」を決めることが重要です。
園の理念が本来目指したい姿と一致しているかに立ち返るすることが、キャリアパス設計の出発点となります。
弊社では、園の理念を見える化し、職員の行動指針を策定するご支援をしています。ご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
下記ページでは、弊社では職員の行動指針を定める一例の行為を「インナーブランディング」として、具体的に解説しています。インナーブランディングは、園の長期的な発展を支える重要な経営戦略ですので、併せてお読みになるのがおすすめです。
職員のニーズやキャリアプランを把握した個別支援
キャリアパスにおける職員のニーズやキャリアプランとは、職員が自身の働き方や成長に対して抱く希望や目標のことです。これらのニーズやキャリアプランに対して、園でできる支援には以下のようなことが考えられます。
| 職員のニーズやキャリアプランの例 | 園でできる支援例 |
|---|---|
| スキルアップや専門性の向上への希望 | 研修や資格取得支援の充実、専門分野の研修機会の提供 |
| 将来の役職や役割への志向 | リーダーシップ研修やキャリア相談の実施、昇進の明確な基準設定 |
| 仕事と生活の調和や柔軟な働き方の要望 | フレックスタイム制度や時短勤務の導入、育児休暇後の復帰支援プログラム |
園のキャリアパスは、あくまで「園が求める職員の成長軌道」であり、組織として期待する役割や能力の向上を示しています。したがって、職員の個別のニーズやキャリアプランと園のキャリアパスをどのように交差させるかが重要です。
この交差点を考えるための一助として、次の「効果的な評価制度と研修制度の導入」では、職員の個別のニーズやキャリアプランを支える具体的な制度について解説します。
効果的な評価制度と研修制度の導入
効果的な評価制度や研修制度とは何かは、園の方針や職員の意向によって異なることが前提です。この前提を踏まえた上で、評価制度では定量的評価と定性的評価のバランスを考慮し、職員自身が目標達成のプロセスを主体的に考えることが重要です。
人事評価制度については、下記の人事評価制度の構築と運用ガイドで詳しく解説しておりますので、ぜひお読みくださいませ。
研修制度においては、ソフトスキル(数値化しにくい個人の資質や対人関係能力)とハードスキル(研修や学習、資格取得によって身につく専門的な知識や技術)の両面を伸ばすことも考えます。
また、人材育成を担う職員を育てるために、外部研修だけでなく園の理念や方針を深く理解できる研修の設計も必要です。
職員がキャリアの道筋に沿って成長し前例を作ることで「道筋」が「道」となり、「実現可能なキャリア」になります。せっかく導入したキャリアパスが形骸化しないよう、職員への情報共有の面での注意が必要です。
職員とのコミュニケーションと情報共有の徹底
キャリアパス導入時に経営者が抱く懸念の一つに「職員の理解が得られないのではないか」という点があります。
職員の理解が得られないと感じる主な理由は以下の通りです。
- 制度について説明された覚えがない
- いきなり言われてもすぐに受け入れられない
こうした声に対して園ができる対応策は以下の3点です。
- 園としての意思表示
- 制度導入準備前に「キャリアパス導入を進める」と明確に伝え、職員の心構えを促す。
- 事前の説明
- キャリアパスがある程度構築できた段階で、職員に説明の場を設ける。
- 導入時期の明示
- いつ導入されるのかを職員にしっかり伝える。
これらのコミュニケーションを徹底することで、職員の理解と納得を得やすくなり、キャリアパス制度の円滑な導入につながります。

従業員目線で、弊社(株式会社いちたす)のキャリアパスと連動した人事評価制度の導入時の情報共有の方法を共有します。
情報共有の特徴は「導入前から導入後まで、一貫して職員の不安を取り除く配慮」があった点です。具体的には下記の2点です。
1. 導入決定前から職員に「心の準備」をさせる
制度は数年かけて構築されましたが、その間、社長から「今はこのような考えで構築を進めています」「○年○月から運用を開始します」といった具体的な進捗が継続的に共有されました。
「導入したい」という展望レベルではなく、「導入する予定」として進行している感覚を持てたため、従業員としても心の準備をすることができました。
今思うと、もし「来月から導入します」と急に言われていたら、内容理解の前にまず「自分の評価はどうなるのだろう」という不安感・抵抗感が生まれていたかもしれません。
2. 運用開始時の説明と説明会以外の質疑応答手段を設ける
運用が開始されるタイミング(2025年10月)で、30分×3回もの職員向け説明会が設けられました。
さらに、説明会の場以外でも、不明点があれば質問ができるコミュニケーション手段が確保されており、運用開始後の疑問も解消しやすい環境でした。
職員にとってキャリアパスや人事評価に関する制度は「給与に直結する」感覚が強く、制度導入や変更に不安や抵抗を感じる職員がいることが予想されます。
ですが、上記の2つのような事前の情報共有で、職員の理解を得ながら制度の検討を進めることもできます。
これからキャリアパスの導入を検討される経営者様のご参考になれば幸いです。
キャリアパスについてよく頂くご質問

- Qキャリアパスとは何ですか?
- A
キャリアパスとは、職員の成長軌道のことです。キャリアパス制度は、職員が仕事で成長し、次のステップに進むための道筋を示す制度です。教育・保育業界では、職員の専門性やスキルアップを支援し、働きがいを高めるために重要とされています。
- Qキャリアパスに対応するにはどうすれば良いですか?
- A
キャリアパスに対応するために、まずは「この園で働く職員に、どのような成長を望み、どのような貢献を求めたいか」について考えてみるのはいかがでしょうか。それが、園の理念に通じているか、振り返ってみることをおすすめします。
それができたら、今の組織体制がベストなのか、他の役職を設ける必要があるのか、検討します。職員の成長段階に合わせた役割を設定し、明確な昇進やスキルアップの道筋を設計することが重要です。園としては、キャリアパスの設計に加えて人事評価制度や研修制度を整備し、職員の成長を支援する環境を作ることが求められます。これにより、職員のやる気を引き出し、定着率の向上につながります。
- Qキャリアパスが無いとどうなりますか?
- A
キャリアパスがないと、いわゆる「ポストの空き待ち」状態になります。そのため、特に若手・中堅職員は「求められる役割が頭打ち」と感じ、成長意欲が低下することが考えられます。それが結果として、離職につながることもあります。成長の道筋といえるキャリアパスを用意することが、離職の防止と強固な園運営につながります。
- Qキャリアパス制度を導入して、ミドルリーダー(中間管理職)を設けるのはなぜですか?
- A
教育・保育業界でキャリアパスの構築が求められる背景がわかると、必要性を感じやすくなるかもしれません。
園長と主任保育士という少数の管理職の下に、多くの一般保育士が横並びに存在する組織構造には、下記のような課題がありました。
- 若手・中堅職員が抱えるキャリアの停滞感
役職が園長と主任に限られているため、一般保育士は役職の空き待ち状態です。経験を積んでも役職に就く機会が極めて少なく、「この先どうキャリアを積んでいけば良いのか」という将来への展望が描きにくい側面があります。そのため、特に若手・中堅職員の長期的なモチベーション維持が困難でした。 - 専門性が評価されにくい仕組み
専門性を高めることは、質の高い教育・保育に不可欠です。ですが、一般保育士が横並びに存在する組織構造では、キャリアアップが経験年数に左右されがちでした。例えば、障害児保育や食育といった特定の分野で熱心に学び、高い専門性を身につけても、その努力が役職や給与といった形で評価されにくい側面がありました。 - 人材育成を行う管理職の負担
少数の管理職で、園の運営や職員の指導を両立しようとすると、かなりの負担です。職員の指導も「園の方針」ではなく「個々の先輩保育士の経験則」に頼らざるを得ない状態がありました。そのため、次世代のリーダーを計画的に育成する余裕が生まれにくい側面がありました。
また、保護者対応の複雑化など、保育の現場が抱える課題が多様化する中で、一部の管理職だけで対応するには限界があり、組織的な対応力が弱まるという課題も抱えていました。
- 若手・中堅職員が抱えるキャリアの停滞感
- Q導入する時期に制限はありますか?
- A
キャリアパスの導入時期に制限はありませんが、キャリアパスの設計から導入には、時間がかかります。できるだけ早急に取り掛かることをおすすめします。
また令和8年度からは処遇改善等加算の適用をうける施設において、キャリアパスの取り組みを実施しない場合、区分1[基礎分]が非適用になり、加算を受けられる金額が大幅に減少します。弊社では、処遇改善等加算制度でキャリアパス要件の適用を受けるためのご支援も行っています。ぜひご相談ください。
まとめ

本記事では、保育園経営におけるキャリアパス制度の重要性について、人材確保・定着から組織力強化、理念の浸透といった多角的な視点から解説しました。
キャリアパスは、単に昇進の道筋や処遇改善等加算の要件を満たすためのものではありません。キャリアパスは、園の理念と職員一人ひとりの成長を結びつけ、「この園で働き続けたい」という動機付けを促すための重要な経営戦略です。
職員の定着に悩む園も、体系的な人材育成を目指す園も、まずは本記事でご紹介した「理念の見える化」や「円滑なコミュニケーション」のポイントから取り入れてみてはいかがでしょうか。
本記事が、貴園の持続的な成長と、職員の働きがい向上を両立させるきっかけとなることを願っています。
保育園・幼稚園・こども園経営のご相談なら幼児教育・保育専門コンサルティング会社いちたすへ

保育園・こども園・幼稚園を経営するうえで、お困りのことがありましたら株式会社 いちたすへお気軽にお問合せください。
人事院勧告分への対応はもちろん、処遇改善等加算の配分方法や、今後どのように運営していけばよいか、給付費(委託費)や補助金はしっかりと取れているのかといった経営・財務に関するご相談から、保育士・職員に外部研修を行ってほしい等の人材育成に関するご相談まで、幅広くご支援しています。
いちたすについて

株式会社 いちたすでは、保育園・こども園・幼稚園の経営者の皆様に対して、経営・運営・財務に関するコンサルティングを専業で行っています。
会計事務所として、日常の会計の確認、記帳代行を行ってもいますので、保育所のバックオフィス業務、書類関係全般のご支援もしています。幼稚園・保育所・こども園の税務・労務に精通した税理士法人・社会保険労務士事務所とも提携しています。
「会計事務所は法人設立からお世話になっているから変えたくない」というお声を頂きます。
そのような場合は、会計・税務ではなく、
- 委託費の加算の取りこぼしがないか、第三者に確認してもらいたい。
- 認定こども園への移行を考えているが、何から手を付ければよいかわからない。
- 処遇改善をどのように取り入れていけばよいか、他園がどのように行っているかを知りたい。
などのお悩みに対してご支援・コンサルティングを行う顧問(相談)契約もあります。こちらは、セカンドオピニオンのようにお使いいただくことも可能です。
料金プラン

株式会社 いちたすでは、定期的な顧問契約から、スポット(単発)での委託費の確認、申請書類の確認なども行っております。
たとえば相談契約、コンサルティング契約ですと
で引き受けております。
「複数施設を運営しているが本部で契約したい」「打ち合わせは2か月に1回でよい」など、オーダーメイドでご契約内容を作成いたしますので、お気軽にご連絡ください。
依頼の流れ

お問合せフォームかinfo@ichitasu.co.jp宛にメールをお送りください。
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- 当社事務所(仙台市一番町)にお越しいただく
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といった形で、具体的にどのようなご支援が出来るのかを打ち合わせいたします。
園によって状況は様々ですが、
など、ご要望に合わせてご提案いたします。
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